スポットライト 世紀のスクープ の商品レビュー
「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019」に出ていたので。 まったくもって勝手に、 ボストン最大の日刊紙、ボストン・グローブ紙が カトリック教会の闇、いや悪事、いや犯罪を暴く話かと思ってたら、 その周辺の話だった。 肝心なところは、同名の映画を見ろ、と...
「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019」に出ていたので。 まったくもって勝手に、 ボストン最大の日刊紙、ボストン・グローブ紙が カトリック教会の闇、いや悪事、いや犯罪を暴く話かと思ってたら、 その周辺の話だった。 肝心なところは、同名の映画を見ろ、ということらしい。 アメリカのローマ・カトリック教会で神父の性的犯罪がもみ消されていた、 という事件については、うっすらと何かで読んだ記憶がある。 ヴァチカンをもゆるがす大スキャンダルになったところまでは把握していたが、 アメリカ社会に与えた衝撃までは理解できていなかった。 というのも基本的にアメリカはプロテスタントが主流であり、 (実際には40~42%だった) カトリックがどれぐらいの影響力をもっているのかがわかっていなかったからだ。 2002年当時、 ボストンでは都市部380万人のうち200万人以上がカトリック教徒であり、 アメリカのどの大都市よりも警察、法曹界、会社の重役にカトリック教徒が占めていたこと、 ボストン大司教の邸宅で行うガーデンパーティでは、 140万ドル以上の寄付金を集めていたことを、知って驚いた。 新聞記者たちのことは書かれていないが、 アメリカ各州の検事局のメンバーの人となりとこの事件との格闘が書かれていて面白かった。 長年児童虐待を扱ってきたのにどこからも情報が入ってこなかったことに衝撃を受けた検事や、 同年代の男性に自分も被害者だったが誰にも言えなかったと声をかけられた検事総長、 加害者の上司にあたる上位の指導者たちを裁く法律が無いと嘆く検事、 家族を持たない独身男が教区から教区へと渡り歩く、災厄の方程式だ、と断じる検事総長。 ボストンの北の郡の地方検事は、 教会のねずみより貧しかった修道女たちと比べて、 司教が豪華な生活が許されていること、司教自身が自分に許していることに呆然としていた。 さらに、その後司祭の一人を起訴するにいたり、 教会側が被害者たちのことに心を配っていないことに慄然とした。 とにかく、 聖職者としての立場を利用して、 教区の貧しい家庭の子供、とくに父親がいない愛情に飢えた子供を狙う加害者本人の非道さも腹立たしいが、 事態が発覚しても他の教区に送り込むだけ、 医師が子供の近くにいるには不適当と診断しても復職させたり、 裁判にはせず和解に持ち込んだりと、教会の隠蔽工作がひどい。 宗教組織というものはそういうものだと言えば、それまでだが。 内容は興味深いものだったが、 翻訳がいまひとつに感じた。 一文一文は正しいのだろうが、 句読点の多さのせいか、文を構成する部分の順序が適当でないせいか、 英語の主語(人の名前)を省いていないせいか、 文脈が流れていない。 自分には読みにくかった。
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米国ボストンをはじめとするカトリック聖職者による児童虐待の長年の隠蔽を暴いたスクープのドキュメント。映画も作られている。 先のソドムが内情や発生はより詳しいが、こちらは米国内の事件の推移を追ったもの。 少なくとも60年代から頻発していた事件がいかに起こり、隠蔽されてきたのか。散発...
米国ボストンをはじめとするカトリック聖職者による児童虐待の長年の隠蔽を暴いたスクープのドキュメント。映画も作られている。 先のソドムが内情や発生はより詳しいが、こちらは米国内の事件の推移を追ったもの。 少なくとも60年代から頻発していた事件がいかに起こり、隠蔽されてきたのか。散発的にニュースにはなっていたものの、それを暴いた良作。 書き筋自体は劇的ではないが、知る価値のある作品。
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アメリカの刑務所の囚人同士の間でも、収容された犯罪によって ヒエラルキーがあるらしい。なかでも最も軽蔑される犯罪はレイプ や子供への性的虐待だそうだ。 多くの犯罪者のなかでも最低だと思われている行為を犯したのが、 聖職者であったらどうだろう。衝撃は計り知れないではないか...
アメリカの刑務所の囚人同士の間でも、収容された犯罪によって ヒエラルキーがあるらしい。なかでも最も軽蔑される犯罪はレイプ や子供への性的虐待だそうだ。 多くの犯罪者のなかでも最低だと思われている行為を犯したのが、 聖職者であったらどうだろう。衝撃は計り知れないではないか。 2001年1月にアメリカの「ボストングローヴ」が一面に掲載した記事 は、カトリック教徒が多く住まうボストンのみならず、アメリカ全土に 驚愕と憤怒の嵐を巻き起こした。 本書と同名の映画はこのスクープを追った記者たちの取材の過程を 描いて、アカデミー賞の作品賞・脚本賞を受賞した。本書は映画の ノベライズではない。アメリカのカトリック教会で行われていた少年 への性的虐待の全体像を掘り出した調査報道の作品である。 汚い言葉で申し訳ないは、胸糞悪いのだ。反吐が出るのだ。例え 聖職者であろうと性欲はあるだろうし、性的嗜好もあるだろう。それ はいいんだ。 だが、彼らが狙ったのは未成年の少年たちだ。被害者には4歳の 子供まで含まれる。聖職者という立場が被害者たちやその家族に 安心感を与えた面もあるだろう。教区の司祭であればプライベート な空間である家庭内にも容易に入り込めたのだろう。 そんな環境を彼らは逆手に取った。被害者からの訴えがなかったの ではない。「ボストングローブ」紙が報道する以前から、子供が司祭 に性的ないたずらをされたと教会に訴え出た家族はいた。同僚が 少年と不適切な接触を持っていた場面を目撃した司祭が上層部に 報告した事例もあった。 しかし、大きな問題にならなかった。教会は被害者に和解金を支払い、 このことは口外しないとの秘密保持契約書を提出させていた。要は 口止め料だ。そして、問題の司祭は教区を移動し、新たな被害者が 生まれる土壌を作った。 カトリック教会は権威である。その権威は信徒ではなく、司祭という 自分たちの身内を守ることに必死だ。司祭の不品行を知っていながら 枢機卿は他教区への推薦状を書き、司祭たちの毒牙にかかった少年 たちへの謝罪はしない。 神に仕える組織も、世俗の組織となんら変わらない。自分たちの保身 が第一なのだ。迷える子羊は一体、どちらなんだろう。 問題の根っこは深いのではないかと思う。カトリックの総本山である バチカンがこの問題に対し、正式に謝罪をするのは現在の法王で あるフランシスコの登場までなかったのだから。 少なくない司祭たちが少年たちに対して犯した罪は、カトリックの独身 主義にあるだけはないのだろう。独身だろうが、既婚者だろうが、一定 の割合で小児性愛者は存在するのだから。本書でも事件が起きた 背景については消化不良で終わっている。 それでいいのかもしれない。今後も教会と小児性愛を追う報道は 続くのだろうと思うから。人の心が犯す罪は、例えそれが聖職者 であったとしても根源を追及するのは難しいのだろうし。 本書でも映画でも「スポットライト」のタイトルになっているが、これは 分かり難いと思う。現代は「BETRAYAL」。日本語にすれば「裏切り」。 こっちの方がいいと思うんだよね。「スポットライト」って「ボストング ローブ」紙の特集記事のコーナー名だもの。 本書の内容は「さすが調査報道」なのだけれど、翻訳があまり良くな い。訳者の経歴を見ると洋画のノベライズしか訳したことがない人 のようだ。申し訳ないが、こういう訳者に本格的調査報道の翻訳は 無理があったと思う。 「訳者あとがき」の、ふざけたような軽さにもがっかり。違う発行元で、 違う訳者であればもっと読みやすかったかも。そこが残念。
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いやー、すごかったです。 カトリック教会の神父による思春期の男の子への性的虐待が信じられないぐらい多発していたにもかかわらず、そしてその事実を枢機卿に至るまで組織的に知っていたにもかかわらず、隠ぺい工作をしていたのですね。 背景にあるのは、「教会、および聖職者に限ってそんなことが...
いやー、すごかったです。 カトリック教会の神父による思春期の男の子への性的虐待が信じられないぐらい多発していたにもかかわらず、そしてその事実を枢機卿に至るまで組織的に知っていたにもかかわらず、隠ぺい工作をしていたのですね。 背景にあるのは、「教会、および聖職者に限ってそんなことが起きているわけがない」という信者の気持ちと、だからこそ、「罪を告発することがためらわれる」信者の気持ち。 それから教会側のこれが明るみにでたら立つ瀬がないという思い。 そういう背景があり、性犯罪を犯してることを知りながらも、神父を罰することなく単にほかの教区に移動させておしまい、という態度をとり続け、結果、被害が拡大してしまったのですね。 これ、スクープにするのもずいぶん大変だったと思います。 ちなみに同名の映画があります。映画はもっとドラマ仕立てのようですが、そちらも見てみたいと思いました。
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もうちょっと整理されてもいいかなぁと思うところもあったけど,最初から最後まで読み応え有りだった。特に,映画では触れられていなかった検察官の関わり方が面白かった。問題の生じ方,放置され方,採り上げられ方,解決に向かう道筋,共通するところがあるだなぁと。
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映画を観た後もやっとしたので、事実整理と情報を補完しようと思って本を読んだけれど、これがなかなかヘビーで、誰が誰やら腹立たしいやら眠くなるやらで、読み進めるのに苦労した。 子供への性的虐待をした司祭や神父が悪いのはもちろんのこと、彼らの処遇や対処を誤り、被害の拡大を防ぐこと...
映画を観た後もやっとしたので、事実整理と情報を補完しようと思って本を読んだけれど、これがなかなかヘビーで、誰が誰やら腹立たしいやら眠くなるやらで、読み進めるのに苦労した。 子供への性的虐待をした司祭や神父が悪いのはもちろんのこと、彼らの処遇や対処を誤り、被害の拡大を防ぐことが出来なかった司教や枢機卿が相当罪深いと思ったし、絶対的な権力を持つカトリック教会組織の、旧態依然とした規律や体質にも根深い問題がありそう。 まず、欧米のようなキリスト教の信仰が生活の基盤にない者から見ると、本に書いてある神父たちの破廉恥な愚行の事よりも、ミサなど馴染みのない生活習慣やお布施、規律などに驚いた。それだけ社会の仕組みの中に大きく組み込まれているカトリック教会という巨大な組織や、人格者であり、平民に崇敬される立場でありつつも身近な存在の神父や司祭たちの在り方等も、ちょっと諸々がうまく想像できない。 神に仕える身だとしても人間なのに、禁欲を強いるとか独身主義とか、男性しか司祭になれない等の女性差別とか、いろいろと理解と納得ができないことが多すぎて、カトリックに対して不信感を持ったし、映画以上にもやっとしてしまった。
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ボストン・グローブ紙が身体を張って取材したまさに世紀のスクープ。こういう実力派の本を読むと、報道、マスメディア、表現の自由へと思考が飛んでいきます。
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