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食の人類史 の商品レビュー

3.5

9件のお客様レビュー

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2024/02/24

ざっくりした感想は、ホモサピエンス全史を食に絞って書いたような本だな、というもの。社会の授業中に資料集を眺めまくり、民博に喜び勇んで行くタイプなので個人的には好き。 ユーラシア大陸の食事情がどのように発展していったのか、風土や周りとの関係がどのように影響を与えていったのかを紹介し...

ざっくりした感想は、ホモサピエンス全史を食に絞って書いたような本だな、というもの。社会の授業中に資料集を眺めまくり、民博に喜び勇んで行くタイプなので個人的には好き。 ユーラシア大陸の食事情がどのように発展していったのか、風土や周りとの関係がどのように影響を与えていったのかを紹介しつつ述べられていた。 個人的に印象強かったのは ・インド人がベジタリアンなのは人口密度が昔から高めだったため、環境負荷のかかる肉食を避けようとしたためでは。宗教の戒律は後付けでうまれたのでは ・モンスーン気候の東アジアでは稲を育てつつ周辺の野生動物(主に魚)を食べていたため、自然崇拝や多神教、天然物をありがたがる心が育まれた 一方、欧州など西アジアでは家畜化した動物からタンパク質を摂取しているため、神が人間に必要なもの全てを作ったという一神教が生まれた 同じ内容が繰り返し出て来たため、少々冗長に感じてしまったのがちょっと残念。

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2021/12/18

1929年、ヴァヴィロフは「栽培植物発祥の地の研究」で、8つの発祥中心があると主張したが、大きな誤りはない。 キビとアワは、BC3000~2000年の黄河中流域の人口を支え、黄河文明の源泉となった。

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2021/12/06

森川海の連環、狩猟・農耕・牧畜3つの生業の関わり。食を巡って自然がどう手懐けられ、その自然と人の関わりが人の歴史をどう動かしてきたか、大きな視点で整理されている。

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2019/02/15

「教養」とはこういうものかを実感できる書である。 サル学や現代政治における民族問題もそれぞれ興味深いが、本書を読むとそれら一見別個の研究の繋がりが見えてくる様な考えを持つ。 ヒトは何処から来て何処へ行くのかは、誰しもが一度は考えたことのあるテーマだが、本書を読むとその想いが一段と...

「教養」とはこういうものかを実感できる書である。 サル学や現代政治における民族問題もそれぞれ興味深いが、本書を読むとそれら一見別個の研究の繋がりが見えてくる様な考えを持つ。 ヒトは何処から来て何処へ行くのかは、誰しもが一度は考えたことのあるテーマだが、本書を読むとその想いが一段と高揚するように思えた。

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2018/05/28

アジアやヨーロッパで展開してきた狩猟採集や農耕の歴史を、自然環境や植生などとからめて描く。地理学、考古学、人類学、etc.多岐にわたる内容で、ものすごく濃厚。農耕、狩猟、採集とはなんぞ、ということを勉強できる一冊。 完全に農耕だけに頼る文化はいまだかつてこの世に存在していない、...

アジアやヨーロッパで展開してきた狩猟採集や農耕の歴史を、自然環境や植生などとからめて描く。地理学、考古学、人類学、etc.多岐にわたる内容で、ものすごく濃厚。農耕、狩猟、採集とはなんぞ、ということを勉強できる一冊。 完全に農耕だけに頼る文化はいまだかつてこの世に存在していない、というのは普段あまり考えたことなかったから、目から鱗だった。 あと、終章で和食がユネスコの無形文化遺産になったことに触れつつ「和食の再認識は、じつは日本の風土の再認識でなければならない」と指摘している。まさにその通りだと思う。

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2017/05/14

農耕、狩猟採集、遊牧の三大生業を軸に人類の食と食糧生産獲得の変遷を、糖質とタンパク質の確保という軸から解説。 人類学に興味があるならどうぞ。

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2016/09/09

食の確保が人類史を考える上での大きな視点であることは間違いない。「たかが食、されど食」なんと私たちは食の問題を卑小な問題と考えてしまっている事か!しかし人類の文化史そのものでもある。そして食べる行為を通して人間は社会性を高めていったということは否定できない!東西の交流において遊牧...

食の確保が人類史を考える上での大きな視点であることは間違いない。「たかが食、されど食」なんと私たちは食の問題を卑小な問題と考えてしまっている事か!しかし人類の文化史そのものでもある。そして食べる行為を通して人間は社会性を高めていったということは否定できない!東西の交流において遊牧民の果たした役割について著者が極めて評価していることは、そういう意味で説得力がある。旧約聖書に出てくるいろいろな食べ物の名称もこのような観点では新鮮だ。ネアンデルタール人とクロマニオン人の接触の可能性などにまで及び、実に雄大な着想。和食文化がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともこの延長線上で理解しやすい。しかし、今の日本では、食材の生産はおろか、加工や調理さえもしない、「食の外部化」の極致!との指摘は全くそのとおりだと思う。

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2016/06/05

テーマは「狩猟・採集、農耕、遊牧」 着眼点は「糖質とタンパク質」 東洋では「米と魚」、西洋では「麦とミルク」の組み合わせが一般的だが、動物資源に関して、前者は天然資源に寄るところが大きいのに対して、後者は天然ものへの忌避がある。 キリスト教には「神が作った家畜を食べるべし」とい...

テーマは「狩猟・採集、農耕、遊牧」 着眼点は「糖質とタンパク質」 東洋では「米と魚」、西洋では「麦とミルク」の組み合わせが一般的だが、動物資源に関して、前者は天然資源に寄るところが大きいのに対して、後者は天然ものへの忌避がある。 キリスト教には「神が作った家畜を食べるべし」という考えが根底にある。 これは初めて知った。 農耕民族である日本人に対して西洋は狩猟民族で、という漠然としたイメージがあった気がしたけど、これはキリスト教以前のゲルマン民族のイメージってことかなあ。

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2017/03/25

著者の佐藤洋一郎氏は、元総合地球環境学研究所教授・副所長の農学者。 本書は、ユーラシアの人類が進化し、文明化を遂げる中で、“食”に関してどのような歴史をたどり、現在に至ったのかを概観したものである。 その際、著者は2つの観点から、全体を整理している。一つは、生物としての人間の生存...

著者の佐藤洋一郎氏は、元総合地球環境学研究所教授・副所長の農学者。 本書は、ユーラシアの人類が進化し、文明化を遂げる中で、“食”に関してどのような歴史をたどり、現在に至ったのかを概観したものである。 その際、著者は2つの観点から、全体を整理している。一つは、生物としての人間の生存に欠かせない栄養素である「糖質」と「タンパク質」を何から摂取したのか、もう一つは、「狩猟・採集」、「農耕」、「遊牧」という大きく3つに分かれる生業のいずれから食料を得たのかという観点である。 そして、ユーラシアを、東の夏穀類ゾーンと西の麦農耕ゾーンに分けて以下のように分析している。 ◆中央アジアの乾燥地帯の東側の地域は、大半が夏雨地帯で降水量も相対的に多く、豊かな水に支えられた森が、温度条件の差異により、北から針葉樹林、落葉樹林、常緑広葉樹林、熱帯雨林と、緯度帯に沿って広がっている。そして、食料については、それぞれの森の性格に応じた地域分けができるが、概ね、夏穀類(糖質)と魚(タンパク質)の組み合わせ、即ち、「米と魚」または「雑穀と魚」というパッケージであった。また、これを生業という観点から見ると、「農耕」と「狩猟・採集」によるものである。 ◆一方、西側の地域は冬雨地帯で降水量も概して少ないが、地域のバリエーションは温度条件よりも水分条件に依存し、南北よりも東西方向に大きい。そして、食料については、冬穀類(糖質)と家畜(タンパク質)の組み合わせ、典型的なものとしては「麦とミルク」というパッケージであった。また、生業の観点から見ると、「農耕」と「遊牧」によるものである。この地域で、タンパク質を得るための動物質の食材が、天然資源ではなく家畜(人が作った動物)であるというのは、「家畜は神が人に与えたもの」というキリスト教の思想を反映したものとも言える。 更に著者は、3つの生業のかかわりについて、相互補完的でありながら相互対立的でもあったといい、「農耕文化」と「狩猟・採集文化」、或いは時代が下ってからは「農耕文化」と「遊牧文化」が、土地の利用形態を巡って対立を続けてきたこと、西ユーラシアが原産と考えられるコムギの東への伝播は交易の担い手であった遊牧民によってであった可能性が高いこと、などを挙げている。 『食の人類史』という壮大なテーマには答え得ていないが、現在のユーラシア各地の食文化の歴史・背景を知る上では有用な書であろう。 (2016年4月了)

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