魔法昔話の起源 の商品レビュー
魔法昔話に対する文化人類学的アプローチ。昔話のモチーフが、加入礼、いわゆる通過儀礼の名残りであることを論証している。(ぜひ詳しい内容に触れたいが、それには本文と同じだけのボリュームが必要。)論理は明快で、ここで論じられていないさまざまなこととも辻褄が合う。すごい。これに比べると、...
魔法昔話に対する文化人類学的アプローチ。昔話のモチーフが、加入礼、いわゆる通過儀礼の名残りであることを論証している。(ぜひ詳しい内容に触れたいが、それには本文と同じだけのボリュームが必要。)論理は明快で、ここで論じられていないさまざまなこととも辻褄が合う。すごい。これに比べると、従来の研究・解釈は思いつきの域を出ないように見える。世界中の神話・昔話研究は、これで一気に塗り変わったはずだ!(が、意外とそれほどでもないようだ。) 驚嘆する一方で、愛する昔話の意外な出自にいささか(かなり)ショックを受けている。語り手として致命的な傷を被ったような気さえする。が、本書で論じられているのはあくまでモチーフの由来で、昔話そのものではないのだ。昔話がこれほどの魅力を放つ理由は本書では解明されない。まだまだ秘密は隠されている。乞うご期待!ってトコである。 柳田國男は百年も前に、妖怪は神の零落したもの、と言った。本書を読むと、その言葉が正鵠を射ていたことがわかる。龍や蛇や狼に対する信仰が残る国ならではの洞察であろうと思う。「神は善きもので人の姿をしている」という先入観に囚われていないということだ。その意味で本書は、キリスト教に席巻された西洋社会よりも日本において理解されやすい、かも。一般的に、人の姿をした神、人格神の登場によって動物神は落ちぶれていく。人格神の眷属になったり、魔物になったり。本書によると、世界共通の物語である「大蛇退治」は、それまで水の支配者であった大蛇から人格神が制水権を奪ったことをあらわしているのだ(他にもいろいろあらわしている。この話はとてもおもしろい)。出雲神話のヤマタノオロチとスサノオはまさにこれである。が、その後千年以上も立つというのに、いまだに日本では動物神の信仰が残っている。これも謎といえば謎。おもしろい!おもしろいな!
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魔法昔話の構造とルーツについて。 学術的に書かれているのでかなり硬い。 ストーリー構築にかなり役に立ちそう。 一度読んで満足するのでなく 何度も何度も読み返して味わうべき良書★
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