バイオエシックスとは何か の商品レビュー

加藤尚武(著者)

2011/10/25

　bioethicsとは、bio（生命）と倫理学のethicsを組み合わせた造語で、１９７０年代頃に登場した概念である。医療技術、遺伝子工学をはじめ数々のバイオテクノロジーの飛躍的な向上。これらが伝統的な倫理、すなわち旧来型の社会的な広がりを持った正しい人間関係の原理を揺るがしている。トーマスクーンの『科学革命の構造』で提唱されたパラダイム転換にみられるようにある日突然、これまでの概念を覆すような画期的な発明がなされることがある。そして急速に応用技術が開発され、それが利用されるようになる。他方、倫理のほうは過去の蓄積があるとはいえ、日進月歩というわけにもいかず、急速に発展する技術に対応できていない。殊日本においては、新しい倫理が求められているにもかかわらず議論が極端に少ないように思われるがどうだろうか。