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五行歌集 ほんとうのことは の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2016/03/25

私は、永田さんの五行歌から香るものがとても好きだ。 優しくうつむいた少女の横顔のよう。 自分の心に静かに向き合う真摯さ。 おいしいお水をいただいたような気持ちになる。 装丁メイキングストーリーはこちらから↓ http://shiduku.cocolog-nifty.com/he...

私は、永田さんの五行歌から香るものがとても好きだ。 優しくうつむいた少女の横顔のよう。 自分の心に静かに向き合う真摯さ。 おいしいお水をいただいたような気持ちになる。 装丁メイキングストーリーはこちらから↓ http://shiduku.cocolog-nifty.com/heart/2016/03/post-aa23.html

Posted byブクログ

2016/03/01

 ほんとうのこと  は  自分に  だけ  言う  読んで、しばらく身動きできないほどだった。  五行歌で、とうとうこんなものが出来たのか、と。  私は五行歌という形式のいいところは、一人一人がなにかしら物事を定義できるところにあると思っている。これは日本の奥深い短詩型の歴史の...

 ほんとうのこと  は  自分に  だけ  言う  読んで、しばらく身動きできないほどだった。  五行歌で、とうとうこんなものが出来たのか、と。  私は五行歌という形式のいいところは、一人一人がなにかしら物事を定義できるところにあると思っている。これは日本の奥深い短詩型の歴史のなかでも、なかなかなかったものだった。  しかし、生命について、人間について、社会について、美について、とでもいうべき秀歌が数多く生まれた。それは思いの行き着いたところで生まれる。  この歌は、いままでのそれらのなかでも、最も簡潔で優れた歌ではないか。  これに似た内容は多くの人が言ったり書いたりしたであろう。「ほんとうのこと/は/ほかの人/には/言えない」  これは幾億回いわれたかしれない。しかし、「ほんとうのこと/は/自分に/だけ/言う」としたのは、これが初めてではないか。私はまだ見たことがない。  そして、私が身動きできないほど驚いたのは、このことを認めざるを得なかったからだった。自分にだけ言って納得していることのいかに多いことか。  その意味で人はみな孤独である。これはその孤独の覚悟を書いているとも言える。  それが衝撃的なのだが、たった十六字の劇場なのである。彼女の世界の深みは、そういうところにあったが、この歌はそれを決定づけたものという気がした。  さらに、この歌は、私たちを真実と思うものから逃がすまいともする。人は、真実を自分に言いかけて、途中で止めてあいまいにすることがある。自分の真実を見まいともするのである。それは、認めることが恐いからであろう。  彼女は、自分はそうしないという覚悟をも示している。  私が身動きできなかったのは、この二つの覚悟を感じたからではないだろうか。ここに感ずる呼吸はかすかにため息も含んでいるように思う。  と、言ってはきたが、この歌は本来こういう解釈の必要ないもので、そこにそっと静かにあってよいものである。私はこの歌の奥行きをなんとか言葉で説明しようとしているのだが、そっとあるほうが奥行きの味わいを感じやすいであろう。そのこともまた深い驚きを与える。  ここが永田和美さんの歌のすごいところである。  静かであってこそよく、これらの言葉は彼女の呼吸を持って、彼女の憧れる海や空や野の花に近いものとなっている。  人のすることが、その人の憧れるものに近くなれば、芸術は完成に近づく。 -五行歌の会主宰 草壁焔太跋文より   市井社紹介頁はこちらから↓ http://5gyohka.com/shiseisya/nagomi.html  

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