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沖縄戦場の記憶と「慰安所」 の商品レビュー

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2016/05/15

本書は韓国人社会学者による著作で、そういうと「慰安婦」問題の告白書かと思ってしまうがそうではない。むしろ、ここには慰安婦の生の声は出てこない。出てくるのは、沖縄が本格的な戦場となって、そこに連れてこられた慰安婦、つくられた慰安所に対する沖縄人の記憶である。 沖縄戦というと、本土の...

本書は韓国人社会学者による著作で、そういうと「慰安婦」問題の告白書かと思ってしまうがそうではない。むしろ、ここには慰安婦の生の声は出てこない。出てくるのは、沖縄が本格的な戦場となって、そこに連れてこられた慰安婦、つくられた慰安所に対する沖縄人の記憶である。 沖縄戦というと、本土の捨て石にさせられた悲惨な戦場というイメージがあるが、そんなところにも慰安所が各所に作られていたというのは衝撃であった。そこには、沖縄の遊郭で働く女たちもいたが、大部分は当時の朝鮮半島から連れてこられた「朝鮮ピー」と呼ばれた女たちである。彼女たちがどうやって連れてこられたか(そしてどうなったのか)について、ここには詳細な記録はない。あるのは、アメリカの到来を前に、あるいはアメリカの侵攻の中で、兵士に「奉仕」した多くの慰安婦の存在である。わたしたちは、そんな危機的な状況でまだセックスができるのかと思わずにはいられないのだが、そんなときだからこそ?慰安所が必要になると軍は言いたいのだろう。それは、大陸中国で日本軍が中国人の婦女子に働いた強姦の数々の記憶が軍上部にあり、兵士たちを慰撫するには慰安所が欠かせない存在となっていたのである。そして、多くの沖縄人はその慰安所を提供するために、自分たちの住んでいた家屋を供出させられた。本書の中には著者も調査に加わった、沖縄全土の慰安所マップがある。もっとも、沖縄の中で、戦場にならなかった宮古では慰安婦はよりおおっぴらにスター的に扱われたという。また、ラサ島のように、まっさきに玉砕を覚悟したのに、アメリカの攻撃がなく、そのほとんどの兵士が生還したという島もあるそうだ。(ここにももちろん慰安所はあった)そして、沖縄の慰安所は戦後駐留したアメリカ軍の慰安所としても使われた。本書は韓国人ネイティブスピーカーの筆になるが、その日本語はまったく外国人臭を感じさせない完璧なものである。

Posted byブクログ