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ジェンダーの政治経済学 の商品レビュー

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2016/07/26

前半ではジェンダー主流化の理論としての新家庭経済学やフェミニスト経済学の検討がなされ,後半ではドイツの家族政策やイギリスのNew Deal,WLB政策の実態やそれらに関わる理論を検討しつつ,現代の福祉国家において主流化した家族政策の到達点を明らかにしている。 本書で特に印象に残...

前半ではジェンダー主流化の理論としての新家庭経済学やフェミニスト経済学の検討がなされ,後半ではドイツの家族政策やイギリスのNew Deal,WLB政策の実態やそれらに関わる理論を検討しつつ,現代の福祉国家において主流化した家族政策の到達点を明らかにしている。 本書で特に印象に残った点は,自律的な個人の選択に対する考察である。自律的に選択できることは良いことなのかもしれないが,現実としては,その「選択」が社会・経済の構造に影響をうけており,女性の選択に係る自律性が失われジェンダー不平等が再生産される。 ジェンダー平等のためには仕事と家庭生活の調和に歴史的視点を取り入れ,労働と余暇の二分法ではなく,労働とケアと余暇の三分法へと転換する必要性を述べている。 ところで,時間を労働とケアと余暇の3つの分ける三分法へと転換し,クォータ制を導入したとしても,人々の性別役割分業の意識がなくならなければ,選択の問題というのは残るのではないだろうか。そして,目指すべきジェンダー平等は男女ともフルタイムで就業するということだろうか。ケアに専念する自由(専業主夫や専業主婦になる自由)はないということだろうか(ケアを社会化していくなかでは,こうした選択肢はないということなのかなと思った)。そのあたりを知りたいと思った。あと,家政学やフェミニスト経済学の理論に基づいて,より詳細にケア労働の価値の評価に関する検討をもっとしてほしかった。やはりケア労働の特殊性からすればむりなのだろうか。 また,主流派経済学を乗り越えるための様々な試みを学ぶことができて参考になった。

Posted byブクログ