崋山と長英 他一編 の商品レビュー
「長英と崋山」「天保の鬼」の二作品を収録しています。 「長英と崋山」は、蛮社の獄により入牢の憂き目にあった高野長英と渡辺崋山をえがいた歴史小説です。イギリスをはじめとする西洋列強がアジアへの侵略を進めていくなかで、海外の知識をもたず鎖国をつづける日本でまどろんでいる幕府に対し、...
「長英と崋山」「天保の鬼」の二作品を収録しています。 「長英と崋山」は、蛮社の獄により入牢の憂き目にあった高野長英と渡辺崋山をえがいた歴史小説です。イギリスをはじめとする西洋列強がアジアへの侵略を進めていくなかで、海外の知識をもたず鎖国をつづける日本でまどろんでいる幕府に対し、高野長英は『夢物語』を執筆して危機を訴えます。しかし鳥居耀造を中心とする幕府の要人は、かえって蘭学者への敵対感を高め、長英を拘束します。無理解な役人たちの取り調べを受けながらも、国を憂えて剛毅な態度をけっして崩そうとしない彼のすがたが印象的です。 一方の崋山は、牢から出ることは叶うものの、幕府の目を恐れる藩士たちの冷たい視線にさらされつづけます。憤りに我をわすれることなくおだやかな態度を保ちつつも、やがて彼は自刃することをえらびます。 また「天保の鬼」は、高野長英の前半生をあつかった作品です。 著者の作品のなかでは、エンターテインメント色の強い時代小説がめだちますが、本巻に収められているのはそれらとはすこしちがうテイストのもので、すこし意外さを感じました。
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