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父 浜田廣介の生涯 の商品レビュー

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2023/09/04

 「泣いた赤鬼」の作者である浜田広介氏の生涯について、その娘さんが書いてまとめたもの。  まず驚くのが、実に詳細に書かれているということ。私も娘がいるのですが、私の娘は私の生涯について何か書けるのだろうか、いや、何も書けないだろうと何度も思いました。浜田広介氏は日記をそれほどつ...

 「泣いた赤鬼」の作者である浜田広介氏の生涯について、その娘さんが書いてまとめたもの。  まず驚くのが、実に詳細に書かれているということ。私も娘がいるのですが、私の娘は私の生涯について何か書けるのだろうか、いや、何も書けないだろうと何度も思いました。浜田広介氏は日記をそれほどつけていなかったそうなので、折に触れて読まれた短歌や知人に送った手紙など、そういうことは手掛かりになったと思いますし、出版された作品などは時期がはっきりしているとは思いますが、それにしても、情報は詳細です。 p.156 昭和三十六年五月の小川未明の死をきっかけに、いわゆる近代児童文学の伝統、三種の神器などといわれた未明、譲治、廣介らの築いてきた童話に対する批判が行われるようになった。  このことは、私の生まれる前なのでよく分かりませんが、面白いですね。芸術は、時代とともに変わっていくものですので、こうした批判が出るのも仕方のないことかも知れません。そうした時代の流れを乗り切って後世に残る作品は、それだけ価値があるとも言えます。  晩年、浜田広介氏は「童話は滅びた」と語ったそうです。自分が創り上げてきたものをそう言わざるを得ない心境は、想像するに余りあります。何しろ、p.87「おとぎ話と混同されている童話を芸術として文学の一形式にまで高めなければならないという熱意に燃え」ていたくらいなのです。しかし、浜田広介氏の童話は、令和の時代になっても滅びていないことは、歴史が証明しています。叶うのであれば、ぜひお伝えしたいものです。  浜田広介氏には、軍国主義につながるような作品はありません。それは、娘さん曰く、p.157「自然から感ずるものを描くひろすけ童話であれば、新しいイデオロギーによって一変することなどはありえないはず」ということです。これからも、浜田広介氏の作品が読み継がれていくことを願います。

Posted byブクログ