大学入試問題から学びなおす日本史 の商品レビュー
中教出版の『東大のディープな~』シリーズとコンセプトは同じで、大学入試問題の解説をしながら一般向けに科目そのものを説明するというものの、日本史版。ただし、東大だけではなく一橋や筑波、京都、大阪等を含めた大学入試問題を素材に、古代から現代まで47問、取り上げて解説している。 中...
中教出版の『東大のディープな~』シリーズとコンセプトは同じで、大学入試問題の解説をしながら一般向けに科目そのものを説明するというものの、日本史版。ただし、東大だけではなく一橋や筑波、京都、大阪等を含めた大学入試問題を素材に、古代から現代まで47問、取り上げて解説している。 中教出版のシリーズが好きなので、この本も割と楽しく読めた。こういう本を読むと、今からでも学校の歴史とか勉強してもいけるのではないかという気にさせられる。(が、結局毎回読んでもすぐ忘れてしまうので、やっぱりやるなら本気じゃないとダメだと思わされる。幕末の歴史とか、一度は集中的に本も読んだはずなのに、今回読むとやっぱり難しくて、よく分からんと思ってしまう。) 特に面白かった部分のメモ。「当時の日本が手本とした中国では、漢詩文が盛んにつくらっれることがそのまま国家や社会の平安を招くという『文章経国』の思想があり、平安時代初期(9世紀)にわが国でもこの考え方が浸透する。」(pp.32-3)とあり、「文章経国」なんていう思想があるというのに驚いた。あとは『日本書紀』で内容が潤色されたという話で、「不比等は、馬子の業績を同時代の厩戸王にすり替えることで、蘇我氏の名を歴史から消そうとした」(p.37)という意図があったというのが、興味深い。そもそもいつから聖徳太子を厩戸王とか言うようになったのか、というところから誰か説明して欲しいのだけれど。次に、平安時代の国風文化について、「ちょっと昔の教科書だと、遣唐使を廃止したことで、唐(中国)の文化的な影響が薄れ、日本独自の文化が発達したと書かれていた。だがそれは正しくない。」(p.65)らしく、「唐の文化を吸収・消化したうえで、日本人の人情や風土、嗜好にかなった優雅で洗練された文化が花開いたのであり、それが国風文化だと考えてられる。」(同)そうだ。まあでもそれは解釈の違いで出てきた文化までが変わったものではないからすごい意識の変化という感じでは捉えられないのだけれど。あとは鎌倉仏教、いわゆる新仏教のあたりは、教科書でも表になっていてよく覚えるのだけれども、「教科書を読む限りでは新仏教の勢いが強いように感じられるが、鎌倉時代は、まだ圧倒的に旧仏教のほうが大きな力を持っていた」(p.87)というのは、確かに今まで気づいていなかった。というか、おれは高校のときものすごい倫理を勉強したけど、それでも鎌倉仏教以前の「南都六宗」と「平安二宗」というのも聞いたことなければ、南都六宗が「三論宗、成実宗、法相宗、俱舎宗、律宗、華厳宗」(p.86)なんて覚えたこともない。そう考えると、教科書の提示のされ方や重点の置き方で本当に覚える内容も異なってしまうという例かもしれない。あとはフランシスコ・ザビエルの生い立ちの話で、「スペインとフランスに国境を接するナバラ王国のザビエル城で生まれた。父親は王国の大蔵大臣をつとめた重臣だったが、ザビエルが6歳のときにナバラ王国はスペインの滅ぼされ、父親は王に従ってフランスに亡命する途中で死んだ」(p.124)らしい。ナバラ王国なんていう国があったことと、ザビエル城で生まれたからザビエルなの?とか、思った。あと、この本は一般向けではあるけど、受験で得点を得るための解答方法というのが割と全面に出ていて、その辺ギャップを説明してくれている部分も面白い。例えば、お城の話で、「教科書にあるとおり、『安土桃山時代以前は険しい山頂付近に構築された山城が基本』であると押さえておこう。つまり、へたに知識がある城マニアは、この時点で誤答してしまう可能性が高い」(p.134)のだそうだ。つまり、戦国時代の城だけど山の上にない城というのもあるけど、という話もしてくれていて、例えば埼玉の行田市にある「忍城(おしじょう)」はそうらしい。こういう感じでポイントや例外をまとめてくれるので、分かりやすい。 ということで、歴史に詳しくなくても、ちゃんと読めるし勉強になる一冊。中教出版のように、これの世界史バージョンとか出してくれたら、読みたい。(20/03/08)
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