小津安二郎の喜び の商品レビュー
手堅い小津安二郎論だ。この著者は身体感覚に目を配り、かつ哲学的とも言える思弁を駆使して(ドゥルーズを引きつつ)小津の世界に肉薄する。小津が「植物的」な資質を備えていたこと、つまりガツガツした物理的/俗物的欲求に走らず退屈と言える日々の繰り返しに喜びを見出していたことが指摘され、そ...
手堅い小津安二郎論だ。この著者は身体感覚に目を配り、かつ哲学的とも言える思弁を駆使して(ドゥルーズを引きつつ)小津の世界に肉薄する。小津が「植物的」な資質を備えていたこと、つまりガツガツした物理的/俗物的欲求に走らず退屈と言える日々の繰り返しに喜びを見出していたことが指摘され、それはすなわち小津を愛する人々の価値観/人生観ともリンクして余韻を残すのではないか。私たちもまた「植物的」に生きることができ、小津のように生きることができるというように……悪く言えばそうした真っ当さが癖のなさと表裏一体を為すところか
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