王太子の情火 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
購入時にアマゾンの読者レビューを参考にしたところ、かなり賛否両論に評価が分かれている作品だと判り、躊躇いました。どちらかというと、「理解できない」という声が多いように思えました。 しかし、何となく惹かれるものを感じ、購入したところ、何故、ああいうレビューが多かったのかが納得できました。 ソーニャ文庫は「執着愛」のレーベルだと聞いたことがあります。その意味では、まさにこの作品はぴったりの内容です。ヒーローのヒロインに対する扱いはまさに、束縛の域をはるかに越えて、行き過ぎ、異常の域に達しているでしょう。 ここまで描く必要があったのかどうかは疑問に思います。 ただ、それを上回る不思議な力が作品全体にみなぎっていて、私はその力に引っ張られるようにして最後まで読み終えました。 とても読み応えのある作品です。 レビューがあまり良くなかったにも拘わらず、何か「これを読んでみたい」という強く感じたのは間違いではなかったと思いました。 作品が読者に与えるインパクト、影響力があまりに強いために、かえって嫌悪感を持たせてしまう部分があるのかもしれないけど、それはこの小説がそれだけ強烈な印象を読者に与えるからでしょう。 ですが、 ―憎まれることによって、愛よりもなお深く相手の心に残りたい。 ヒーローのどこか歪んだ激しい愛情は、私は納得はできないけれども、理解はできるような気がします。時に憎悪は愛情よりも強く激しく相手の心を捉えて離さないからです。 そして、最後が良かったですね。 殆ど終わりまでは、まさに「執着愛」の骨頂を行くようなドロドロで暗いストーリー展開だったのが、一転して明るいやわらかな雰囲気になり、結末を迎えます。 命を絶とうとしたヒロインを育ての母の男爵夫人が抱きしめるところでしょうか。 「あとがき」を読むと、作者さんはバッドエンディングも考えられたとのことですが、これは幸せな結末で良かったのではないでしょうか。 あそこまで暗い雰囲気を引きずってきて、最後までそれが続いて終わったとしたら、もう救いようがなくなってしまいす。 最後の最後でガラリと方向転換してこその物語りだったと思います。 あらゆる意味で、圧倒される作品でした。
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