デイヴィッド・ヒューム 哲学から歴史へ の商品レビュー
イングランドの歴史を知らず、スコットランド啓蒙を知らず、歴史学者の方法も知らない私には、大変難しい本でした。 けれども、逆に、ヒュームその人、その哲学、スコットランド啓蒙、イングランド史、歴史学に興味が湧きました。
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デイヴィッド・ヒュームに対する評価は、かつてないほどに高まっている。数多の哲学者たちの目から見れば、彼は人間の認識に対する、また哲学の本質そのものに対するわれわれの理解の成立を支えた、ウィトゲンシュタインの言語論的転回を予見していた者である。世界についてわれわれが抱いているさまざ...
デイヴィッド・ヒュームに対する評価は、かつてないほどに高まっている。数多の哲学者たちの目から見れば、彼は人間の認識に対する、また哲学の本質そのものに対するわれわれの理解の成立を支えた、ウィトゲンシュタインの言語論的転回を予見していた者である。世界についてわれわれが抱いているさまざまの信念や、それらが表出するときの言葉のありように注目することが哲学者の努めであるという主張を貫いたため、ヒュームは現代におけるみずからの後継者と同じく、社会のもつ整合性を浮き彫りにし、人間の行動習性を分かりやすく示すものとして、信念の体系を人類学に基づいて理解するという道を切り拓いた思想家のひとりと思われている。数多の歴史家たちの目から見ても、ヒュームは近代というものを先読みしていた人物だった。
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デイヴィッド・ヒュームは因果関係ですら単なる習慣の産物でしかないとするほどの懐疑論の哲学者として知られているが、本書は彼を歴史家として見直すことを主眼に置いている。だが、だからと言って、彼の哲学を放っておくわけではない。むしろ、彼の歴史家としての仕事の意義は、若いころのそうした哲...
デイヴィッド・ヒュームは因果関係ですら単なる習慣の産物でしかないとするほどの懐疑論の哲学者として知られているが、本書は彼を歴史家として見直すことを主眼に置いている。だが、だからと言って、彼の哲学を放っておくわけではない。むしろ、彼の歴史家としての仕事の意義は、若いころのそうした哲学の醸成があったからこそであるとしている。 ヒュームが歴史叙述で重要視したのは、軽やかな読みやすさでも、絶対的な基準のもとで規定される歴史の読み方・流れでもなく、その時代ごとの人々の意見opinionが歴史を作るという哲学的原理なのだと筆者は主張する。そして彼の歴史を否定することは、彼の徹底した哲学を否定することなしには可能ではなく、その意味で彼の歴史叙述は深く根を張るものである考えているようだ。
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