ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病 の商品レビュー
本書は三千綱さんの自伝小説である。基本的には岩波書店から出た『作家がガンになって試みたこと』と内容はかぶっている。つまり、十二指腸潰瘍で胃の3分の2を切られ、糖尿病になり(これがあったか記憶が定かでないが)、食道ガンから胃ガンになり、余命半年と言われながら、ガンが消え、今も生き...
本書は三千綱さんの自伝小説である。基本的には岩波書店から出た『作家がガンになって試みたこと』と内容はかぶっている。つまり、十二指腸潰瘍で胃の3分の2を切られ、糖尿病になり(これがあったか記憶が定かでないが)、食道ガンから胃ガンになり、余命半年と言われながら、ガンが消え、今も生きていることである。病気の原因は酒。禁欲的なことをして人生を永らえてなにが面白いという人生観がそこにはある。いろいろ治療法を調べながらも、一方で医者に対する不信を持ち、最後は自分で決定すべきだという信念を持つ。本書は自伝小説としただけにフィクションめいたところもある。医者への悪口は前著でも見られたが、本書では思う存分書ける。看護師(三千綱さんは気にいった相手には看護婦と呼ぶ)に対しても、ブスだのなんなのといった、セクハラめいたことばがどんどん出てくる。これは小説としないと書けなかっただろう。一番のフィクション?は少し思いを寄せる人妻とのことである。(彼女は会って一年後には死んでしまうのが)献身的な妻のことがあまり出てこないのはそのためか? 本書が前著と違うのは、三千綱さんが馬に寄せる愛情が、幼少期における馬との出会いから始まり、馬とのかかわりが全編を通じて大きな比重を占めていることである。馬に対する思いは、捨てられそうになった馬を買い取り、競馬馬として育ててもらうことである。娘は本書ではすでに結婚している。
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