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レモン畑の吸血鬼 の商品レビュー

4.1

15件のお客様レビュー

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2017/05/18

初カレン・ラッセルでした。最初は詩を読んでいるかのような文体に中々入り込めず、若干苦戦気味でしたが、読み進めるにつれ、一つ一つのお話がじわじわと余韻を引きずり、「帰還兵」ではまんまとすっかりはまってしまっておりました。なんともトワイライトゾーンな気分に浸れる新しい幻想文学だと思い...

初カレン・ラッセルでした。最初は詩を読んでいるかのような文体に中々入り込めず、若干苦戦気味でしたが、読み進めるにつれ、一つ一つのお話がじわじわと余韻を引きずり、「帰還兵」ではまんまとすっかりはまってしまっておりました。なんともトワイライトゾーンな気分に浸れる新しい幻想文学だと思います。全く関係ないですが、「帰還兵」の刺青話つながりで、レイ・ブラッドベリの「刺青の男」を再読したくなりました。

Posted byブクログ

2016/05/01

読み終わってぱっと思い付いたのが通過儀礼という言葉。他サイト短編集レビューを見ると同じことを思った方がいたようで、全作品に共通らしい。その(通過儀礼における)不安定さが癖になってくる。ちょっと他の奇妙譚から浮いている「一九七九年、カモメ軍団、ストロングビーチを襲う」の家庭環境によ...

読み終わってぱっと思い付いたのが通過儀礼という言葉。他サイト短編集レビューを見ると同じことを思った方がいたようで、全作品に共通らしい。その(通過儀礼における)不安定さが癖になってくる。ちょっと他の奇妙譚から浮いている「一九七九年、カモメ軍団、ストロングビーチを襲う」の家庭環境によって左右される青春がとても痛ましい。他では亡くなった大統領が馬に転生!?という「任期終わりの厩」、弱小スポーツチームへの愛情が微笑ましい「ダグバート・シャックルトンの南極観戦注意事項」の馬鹿馬鹿しさ擦れ擦れな所も面白い。マッサージでPTSDを抱えた帰還兵を治療する「帰還兵」は語り手の不安定さとラストの曖昧さがじわじわと心に沁み込んで来るし、癲癇を抱えた少年について苦く回想する「エリック・ミューティスの墓なし人形」はいとも簡単に人のことを忘れてしまうやるせなさが残る。このように、馬鹿馬鹿しさから物悲しさまで幅広く網羅された短編集。

Posted byブクログ

2016/04/11

ものごとを善悪で捉えようとするのは人の性だろう。それが善悪というよりも彼我の差であることを往々にして意識しないままに。それ故、こんな風にして自分とは異なるものだと思い込んでいたものが自分と似ていることを思い知らされると、まずは拒絶する気持ちが湧く。そして徐々に受け入れざるを得なく...

ものごとを善悪で捉えようとするのは人の性だろう。それが善悪というよりも彼我の差であることを往々にして意識しないままに。それ故、こんな風にして自分とは異なるものだと思い込んでいたものが自分と似ていることを思い知らされると、まずは拒絶する気持ちが湧く。そして徐々に受け入れざるを得なくなる。 吸血鬼が血を啜ることの代わりに新鮮な檸檬に齧じりつく。それも妻である若い、と言っても幾世紀も生きる吸血鬼にとっての比較の問題だが、吸血鬼に古臭いと言われたから。なるほど、この作家のしなやかな発想は彼我の差を易々と超越する力だ。世の中が矢鱈ときな臭い今、本当に必要なのはこのしなやかさだろう、などと小説とは全く関係の無いことを漠然と考えたりする。 とは言え、爽やかな異質の香りのする作品は檸檬の心象を巧みに使ったこの作品くらいで、後は少々無機質の感触がする作品が多い。無機質の感触というものの本質はステンレスの鈍い光沢にあり、それが呼び起こす人の肌の内側にあるものが無防備に晒されるという連想による恐怖に繋がるもの。そしてイオン化傾向の差から味わうことになる何とも嫌な金属の味。それらが纏まって襲いかかってくるという意味だ。そうかと思えばSF的な味わいが、無機質なものと有機質の生身の体の差を自然と曖昧にする作品もある。肉体が未知のものに支配され本来の機能から逸脱し始める。それを無機質と呼ぶのは言葉の定義の問題に踏み込むことになるが、そこで動き回るものがたとえ有機物から構成されていたとしても、無機質な物体の動きを連想させるものを容易にはこちら岸のものとしては受け入れられない。しかし認めざるを得ないもどかしさ。 カレン・ラッセルの作品に対して幻想と現実の境を飛躍するとする評はそんなところにに由来するものなのかも知れないが、幻想と思い込んでいるものの正体は案外直ぐ近くの現実にあったりすることに注意した方がよい。そうしないと何時の間にか案山子の反撃を喰らうことになる。

Posted byブクログ

2016/03/08

アメリカの作家カレン・ラッセル、2013年発表の短編集。奇想幻想の作家。特異な着想を得る優れた想像力と、それを確かな物語りに結実させる卓越した筆力を感じますが、私はあまり面白みを感じませんでした。堅実すぎて飛翔する力に欠ける、ような。残念。

Posted byブクログ

2016/02/02

カレン・ラッセルの第2短編集。 前作『狼少女たちの聖ルーシー寮』同様、奇想天外というか、ぶっ飛んでいるというか、とにかく、ラッセルの短編は基本的に『変』(※褒め言葉)だ。その『変』なところに無性に惹かれる。一見すると収録されている短編の作風はまるで異なっているようにも読めるが、そ...

カレン・ラッセルの第2短編集。 前作『狼少女たちの聖ルーシー寮』同様、奇想天外というか、ぶっ飛んでいるというか、とにかく、ラッセルの短編は基本的に『変』(※褒め言葉)だ。その『変』なところに無性に惹かれる。一見すると収録されている短編の作風はまるで異なっているようにも読めるが、その中にも、一本筋が通っていて、『カレン・ラッセル』としか言えない味があるところが好きなのかもしれない。 表題作『レモン畑の吸血鬼』の、一般的な『吸血鬼』のイメージとレモン畑の対比に、梶井基次郎の『檸檬』で、洋書の上に置かれた檸檬の鮮やかさを思い出した。

Posted byブクログ