ウエスタン忍風帳 の商品レビュー
その男の名はバントライン。ここで「おおっ?」となったら、多分日本人の場合はガンマニアかなあ、と思う。 なぜなら、バントラインはOK牧場の決闘で有名なワイアット・アープが所有していたとまことしやかに伝えられる、バントライン・スペシャルにその名を残しているからだ。 文学史上は、初期の...
その男の名はバントライン。ここで「おおっ?」となったら、多分日本人の場合はガンマニアかなあ、と思う。 なぜなら、バントラインはOK牧場の決闘で有名なワイアット・アープが所有していたとまことしやかに伝えられる、バントライン・スペシャルにその名を残しているからだ。 文学史上は、初期のウェスタン小説の祖ともいうべき、ダイム・ノベルの有名作家で、実は本作、このバントラインが語り手なのだ。 そしてどうも語っている相手は未来にいる誰か(おそらく読者)であるらしく、時々未来のことだろ、と突っ込みたくなる情報が漏れる……。 だれだ、おまえ? 主役たるシノビも、ストイックな忍者でありながらどこかとぼけたようなところがあるし、なんといっても、日本人とか忍者には全く詳しくないバントラインの目を通して(しかも尾ひれをつけてものがたりするのが本職の男だぞ)語られるので、いやあ、面白くないわけがない。 登場人物も、ドク・ホリデイが最初から顔を出すうえ、ジェシー・ジェイムズが登場するし、西部劇で有名な人物はあちこちに顔や名前が出てくる。そうそう、ビリー・ザ・キッドとか。 実に美味しい。 もともと、菊地秀行はウェスタンを愛する人だ。それは、大昔、『吸血鬼ハンターD』が世に出た時からわかっていた。だってあの世界観はまさにウェスタンなのだから。(その後、同じソノラマ文庫では『ウェスタン武芸帳』という、新撰組の沖田総司を西部に登場させたパラレルワールドの作品もある) 今回は純粋にウェスタン、ということで、まさに書きたいものを書きました、ということだったのではないかと推察する。面白くないわけがない!
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