トーマス・マンの政治思想 の商品レビュー
20世紀ドイツで最も著名な作家の一人トーマス・マンの諸作品から彼の政治思想を再構成する研究。『非政治的人間の考察』で政治に関与しない人間の内面性を称揚したマンが、ワイマール期やナチス期にむしろ個人の精神性と政治体制との間をどのように架橋するべきかに苦心していたことが明らかにされる...
20世紀ドイツで最も著名な作家の一人トーマス・マンの諸作品から彼の政治思想を再構成する研究。『非政治的人間の考察』で政治に関与しない人間の内面性を称揚したマンが、ワイマール期やナチス期にむしろ個人の精神性と政治体制との間をどのように架橋するべきかに苦心していたことが明らかにされる。マンの主たる仕事は小説であり、したがって彼の考えは小説にはさまれたエピソードなどから読み取られている。その際に重要になっているのが、19世紀以来のドイツの人文主義の伝統、ワイマール期の思想潮流、そしてナチス期の政治的状況というコンテクストである。方法論としてコンテクスチュアリズムが強調されているわけでは必ずしもないが、小説のような政治的主張を直接的には読み取りにくいテクストをとりまく状況が丁寧に解説されることによって、マンのテクストの政治的意味がよく分かるような仕掛けになっている。
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