民主主義を立て直す の商品レビュー
本書は、岩波書店「世界」に2012年9月号以降連載されたものがまとめられている。はじめににおいて記載されているとおり、本書のねらいは「今日の傷つき形骸化した民主主義を、その基底から立て直すにはどうすればいいか。本書を通じて、できるだけ多くの読者にそのヒントを汲み取っていただく」こ...
本書は、岩波書店「世界」に2012年9月号以降連載されたものがまとめられている。はじめににおいて記載されているとおり、本書のねらいは「今日の傷つき形骸化した民主主義を、その基底から立て直すにはどうすればいいか。本書を通じて、できるだけ多くの読者にそのヒントを汲み取っていただく」ことである。2012年9月以降といえば、民主党政権末期であり、その後、安倍政権が官邸一強体制のもと、安保法案や特定秘密保護法案など重要法案が国民の理解が十分でない状況で成立した時期であり、民主主義を考えるには格好の時期である。 第一章「政治の迷走はなぜ続くのか」で、著者は民主党政権末期の野田政権及び安倍政権に対して、非常に批判的な態度をとっている。野田氏については、東日本大震災という異常な災害に対する復旧・復興にあたって、当然国債発行で対応すべきものを増税を主張しその初動を相当程度遅らせた点、対応すべき民主党マニフェストを完全に反故にし、財務省の言いなりになって、自ら反対していた「消費増税」を何ら釈明なきまま、「大義」として突き進んだ点は、本当に嘆かわしいことであると感じた。安倍政権についても、消費増税延期やアベノミクスへの評価という論点が不明な衆議院解散、不誠実な安保法案審議等の批判は、納得できるものである。 第二章「民主主義をどう立て直すか-地方自治からの問い」では、旧自治官僚・元鳥取県知事としての知見もあり、非常に説得力のある論調が展開されている。特に、「自治を蝕むふるさと納税」、「『地方創生』ではしゃぐ前に」は、政府関係者には耳が痛い話ではないか。ふるさと納税に対しては、自治体の課税自主権で対応すべきだし、見返りがある自治体への寄付により、見返りがない社会福祉法人等に対する寄付が少なくなる可能性も言及している。地方創生については、「新しいレッテルに張り替えただけの従来型施策に堕するのではないか」と、正に今の地方創生の現状を予言している(本稿は2014.11連載)。地方創生については、農山村は消滅しないの小田切徳美氏との対談(2015.5)も収録されており、両者の主張は、政府の進める地方創生に対する批判で一致している。地方創生に対して懐疑的な見方をする人にとっては、自らの違和感がはっきりと言葉にされているので、思考の整理に役立つものである。 上記に挙げたほか、あぁそういう話題があったなぁと懐かしくもなる話題について、著者独自の視点からの解説・指摘を一つの話題につき4~8ページで読むことができる点で本書はよくできており、授業や仲間内で議論する際のたたき台にもなるのではないか。
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鳥取県知事や総務大臣を務め、国政、地方自治のあり方にいつも鋭い指摘をする片山善博さんが語る日本の民主主義の現状、そして立て直すヒントが満載の本である。 圧倒的多数の議席を背景に憲法や民意をないがしろにする安倍政権、また、地方議会においても、地方自治法方で規定されいる制度をきちん...
鳥取県知事や総務大臣を務め、国政、地方自治のあり方にいつも鋭い指摘をする片山善博さんが語る日本の民主主義の現状、そして立て直すヒントが満載の本である。 圧倒的多数の議席を背景に憲法や民意をないがしろにする安倍政権、また、地方議会においても、地方自治法方で規定されいる制度をきちんと活用すれば、民主主義的プロセスを確保できるのに旧態依然とした方法でしか地方自治現場を動かしていない。 国政においても、地方自治の現場においても、政治家はコロコロ変わってしまう。 頭の良い官僚は、自分たちの聖域を崩したくない。 国民が、きちんと民主主義の本質を見極め、地方自治、国政を監視しなければならないのですが(涙)。
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