けだものと超けだもの の商品レビュー
軽妙な会話が流れるように繰り出されて、気がつけば「え?」といきなり違う光景が目の前に突然現れる、そんな奇術のような短編が詰まった一冊です。 重すぎず軽すぎず、主に貴族階級の人々の、ちょっとくすりとさせられる知的な企みに満ちていて面白く読めました。意地悪ではあるけれど邪悪ではない...
軽妙な会話が流れるように繰り出されて、気がつけば「え?」といきなり違う光景が目の前に突然現れる、そんな奇術のような短編が詰まった一冊です。 重すぎず軽すぎず、主に貴族階級の人々の、ちょっとくすりとさせられる知的な企みに満ちていて面白く読めました。意地悪ではあるけれど邪悪ではない、善人ではないけれど悪人ではない。そんな人々のちょっとした日常の隙間の一幕を覗くような楽しさがありました。 読んだきっかけは津村記久子さんの「サキの忘れ物」でした。サキって作家名なのか、と初めて知って調べて見て興味を持ったのです。「開いた窓」の一篇を読むだけでも、その「語り」と「騙り」の軽やかさと巧みさを十分味わえるのではないかと思います。
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弱肉強食が生物の世界の原則だが、言語によってそれを言い包められるのがヒトの偉大(ズルさ)。超けだものとは、ヒトのことか?それとも人に馴れて逆に人をあやつるペットか?『女人狼』で、雌狼に変身させられたハンプトン嬢は「砂糖はお医者様に止められているのに」と嘆いた。『休養にどうぞ』では...
弱肉強食が生物の世界の原則だが、言語によってそれを言い包められるのがヒトの偉大(ズルさ)。超けだものとは、ヒトのことか?それとも人に馴れて逆に人をあやつるペットか?『女人狼』で、雌狼に変身させられたハンプトン嬢は「砂糖はお医者様に止められているのに」と嘆いた。『休養にどうぞ』では国会議員候補が寝室に黒豚、軍鶏と一晩同居させられる。『迫真の演出』ではまたもや善良なユダヤ人が迫害される(前巻でも大司教秘書を装ったクローヴィスが“ユダヤ人皆殺し”が発令され銃を使わず実行されつつある、とだます話があった)…
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ウィットで毒の効いたサキの短編。 あっという間に数年過ぎる作品もあるので おとぎ話風味もあり。 クローヴィスは相変わらず「ああ言えばこう言う」を地で行く人で痛快。 一度だけでいいのでこんな風に人を煙に巻いてみたい。。 新潮文庫でいくつかは既読でした。
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皮肉の効いた短篇集。 何かとクセのある人が、図太いうそつきにだまされてギャフンとなる話が多いです。いい人はあまり出てきません(笑) けだもの(だまされる側)と超けだもの(だます側) 騙し騙されというだけでなく、他にも様々なブラックユーモアな話が沢山。短編なので、さらっと読め...
皮肉の効いた短篇集。 何かとクセのある人が、図太いうそつきにだまされてギャフンとなる話が多いです。いい人はあまり出てきません(笑) けだもの(だまされる側)と超けだもの(だます側) 騙し騙されというだけでなく、他にも様々なブラックユーモアな話が沢山。短編なので、さらっと読めて楽しめました。
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英国紳士の意地悪というものは案外底が浅いものなのか、と読みながら考える。日本人の意地悪がそうではないとは言わないが、底意地が悪いという言葉通りの人だっているだろう。本を読んで解ったような気になってはいけないとは思うけれど。 タイトルには「けだもの」とはあるが、この本の中で展開さ...
英国紳士の意地悪というものは案外底が浅いものなのか、と読みながら考える。日本人の意地悪がそうではないとは言わないが、底意地が悪いという言葉通りの人だっているだろう。本を読んで解ったような気になってはいけないとは思うけれど。 タイトルには「けだもの」とはあるが、この本の中で展開される話の主人公たちは「けだもの」と呼ぶには余りに小さな存在だ。どこまで行ってもお金にまつわるエトセトラ。誰かが誰かを出し抜いたとか騙されたとか。訳もなくとことん意地悪な話は一つもない。意地悪をし続けるのだって偏屈を決め込む覚悟が要る。ひょっとすると英国紳士淑女の方々には堪え性というものが欠けているのじゃあなかろうかなどと愚問が浮かぶが、これまた考えてみれば余裕のある人に堪え性など必要もないことは明らか。心底貧乏性に悩まされる自分自身を棚に上げて考えを廻らせているだけなのだなあ、と思い知る。 人が人の思い通りになるという、あるいは人はこちらが想像したように考えるに違いないという前提に立てば、この本の中の主人公たちは「けだもの」のように理屈の通用しない人々かも知れない。しかしどの話の主人公も岡目八目で眺めれば、どこまでも利己的な考えで理屈通りに動く人々。極めて解りやすい。そうなっているのは、サキという百年ほど前に亡くなった作家が本を読むようなインテリゲンチャが集うサロンで話されるような小話を敢えて書いたからなのか。そうだとすれば当時の有識者たちの間では自分の座っている椅子の居心地の良さを当然としながら、他人のしでかす失敗話が面白可笑しく交わされていたのだろうな、と再び生来の貧乏根性が頭をもたげる。そのサークルの外にサキという作家はいたのか、あるいは中にいたのか。 サキの生涯を見てみると、ビルマの生まれで幼少の頃には母親が亡くなり英国田舎で叔母夫婦に育てられたとある。その育ちがどこかシニカルな雰囲気の基にあるのか、とも思うけれど、ビルマに赴任後早々に病気で帰任、父と共に欧州旅行に明け暮れる生活を過ごせる程には生活の糧に困らなかったということでもあるだろう。なるほど。 それにしても、英国特権階級の人々は日々何をなさっていたものなのやら。
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軽い笑いとアイロニー溢れる短編集。 “Beasts and Super-Beasts”(1914)全訳。 小学生のときに読んだ 児童向け海外怪談アンソロジーに“The Open Window”が 確か「ひらいた窓」という邦題で収録されていた記憶が。 この本でのタイトルは「開けっぱ...
軽い笑いとアイロニー溢れる短編集。 “Beasts and Super-Beasts”(1914)全訳。 小学生のときに読んだ 児童向け海外怪談アンソロジーに“The Open Window”が 確か「ひらいた窓」という邦題で収録されていた記憶が。 この本でのタイトルは「開けっぱなしの窓」。 ごく短い、クスッと笑える小咄だが、 長い年月を経て懐かしく再読。 でも、先に『クローヴィス物語』を 読んだ方がよかったのかな、 クローヴィス・サングレールが登場するお話も複数あり。 エドワード・ゴーリーの挿絵が収録されているので 少し得した気分だが、一番の儲けもの(?)は、 巻末=訳者あとがきページに掲載された SakiことHector Hugh Munro(1870-1916)が 「ひよっこちゃん」と呼ばれていたという10歳の折の かわゆ過ぎるポートレートかも。(笑)。
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久しぶりに読むサキ。翻訳のせいかどうかよくわからないが、非常に読みにくい。意味のわからない文が所々にあって、??となってしまった。今となっては、ブラックさよりはどこかとぼけた味わいを楽しむという感じ。
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ユーモアあふれるサキの「けだもの」にまつわる短編集。 聞き慣れない名前の鳥や、狼、馬、豚など何匹もの「けだもの」いわゆる動物が登場するが、もう一方の「超けだもの」がとにかくすごい。同じ白水uブックスから出版された『クローヴィス物語』もクローヴィスの鮮やかでえげつない手管が光ってい...
ユーモアあふれるサキの「けだもの」にまつわる短編集。 聞き慣れない名前の鳥や、狼、馬、豚など何匹もの「けだもの」いわゆる動物が登場するが、もう一方の「超けだもの」がとにかくすごい。同じ白水uブックスから出版された『クローヴィス物語』もクローヴィスの鮮やかでえげつない手管が光っていたけど、クローヴィスもかくやという紳士や淑女が続々と登場する。それも選りすぐりの「超けだもの」たちなので、巻き込まれた人たちの不運には同情するものの、笑わずには読めない話ばかり。 特に「開けっぱなしの窓」や「お話上手」など、子供が絡む話。切れ味が鋭くてたまらない。
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『クローヴィス物語』に続くサキの第二短篇集。 アンソロジーやサンリオSF文庫の『ザ・ベスト・オブ・サキ』に収録されていて、既読のものもあるが、何度読んでもにやりとしてしまう。代表的なものは『開けっぱなしの窓』だろうか。 サキの短篇集はいつも手の届くところに置いて、気が向いた時に読...
『クローヴィス物語』に続くサキの第二短篇集。 アンソロジーやサンリオSF文庫の『ザ・ベスト・オブ・サキ』に収録されていて、既読のものもあるが、何度読んでもにやりとしてしまう。代表的なものは『開けっぱなしの窓』だろうか。 サキの短篇集はいつも手の届くところに置いて、気が向いた時に読み返したくなる。
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