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流砂のなかで の商品レビュー

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2016/01/24

決してブレない書き手として長年信頼している辺見庸さんと哲学者の高橋哲哉さんの対談集。 昨年12月末に刊行されたばかりです。 周辺事態法から有事法制、集団的自衛権の行使容認、そして安全保障法制と「戦後民主主義」の日本の形が根底から変わりつつあります。 その時々で辺見さんは警鐘を鳴ら...

決してブレない書き手として長年信頼している辺見庸さんと哲学者の高橋哲哉さんの対談集。 昨年12月末に刊行されたばかりです。 周辺事態法から有事法制、集団的自衛権の行使容認、そして安全保障法制と「戦後民主主義」の日本の形が根底から変わりつつあります。 その時々で辺見さんは警鐘を鳴らしてきましたが、すでに引き返せない地点まで来てしまったのかもしれません。 右にしろ、左にしろ、同じ価値観を共有する者らが群れて相手を恫喝するのは既に見慣れた光景となりつつありますが、辺見さんが特異なのは一貫して「単独者」としてあったからにほかなりません。 まったく孤独な一個の責任主体として思索を巡らし、発言してきました。 思索の跡には、時に血がにじんでいることさえありました。 本書でも、辺見さんが指名した対談者である高橋さんの「沖縄観」に対して疑義を呈しています。 およそ「慣れ合う」ということがないのです。 「ロートのように、低い姿勢のなかから、力のない者として歴史を眺めたい。無能者の目。力のない者の目ほど凄いものはない。手遅れかもしれませんが、僕はその目を鍛えたいのです。世界史的イメージの中心には、力のない者の目がすえられるべきなんです」(本書100ページ、発言者・辺見庸さん) 私もそのような目で歴史を眺めたいと思いました。

Posted byブクログ