女神様のいうとおり(1) の商品レビュー
一期一会の男女が体を通じて心の深淵を交錯させる
確認できる限りでは『みさき★センセーション』なる短編集が1994年に発売されて以来の、実に11年振りとなる「廣瀬良多」名義の作品である。画風で分かる人ならスグ分かる「艶々」作品の一環ではあるのだが、今回ナゼに筆名を変えたのであろう? 勝手に推測するならば、週刊連載されたとい...
確認できる限りでは『みさき★センセーション』なる短編集が1994年に発売されて以来の、実に11年振りとなる「廣瀬良多」名義の作品である。画風で分かる人ならスグ分かる「艶々」作品の一環ではあるのだが、今回ナゼに筆名を変えたのであろう? 勝手に推測するならば、週刊連載されたという本作は官能描写がメインではないから、となる。描写はある。毎回ある。毎回違う男とある。ヒロイン【アケミ】と生活を共にする(部屋は違う)年下の男【ウラナリ】は程良い存在感ながら添え物であり、結末までにはもしかしたら……という気はするが、今のところ肉体関係はない模様。それより各話にはそれぞれテーマがあって、それを知らしめる偉人の格言が象徴的に用いられている。これが官能要素よりも前面に出る作風と言える。 そして、そのテーマとはすなわち人の内面に潜む「業」である。分かってはいるけど思わず生じてしまう悪魔の囁きや我儘、抱いてはいけない感情、見下す心、責任転嫁……そういった諸々を抱えた男達がアケミの元に現れては刹那の一夜を過ごすのだが、その最中に「そうじゃないでしょ」という真理をガツンと喰らう流れである。 その意味では哲学的な含蓄が込められた作風とも言えるのだが、だからこそ一撃を喰らいながらも真理に気づかされた結果として、心の不安という穴を埋めてもらったような晴々しさを得て後にする男も少なくない。 官能ありきの物語ではなく、こうした真理を伝えるための官能であるからこそ「艶々」とは違うんですよ、としているように感じるところである。実際のところ、そうした手段としての官能要素なので従前の艶々作品に比べても描写は淡泊である。 心の安寧を得た男と同様にヒロインもまた束の間の安寧を覚えるのか、普段は「眠れない」アケミのその後には安らかな睡眠が訪れる。性欲が満たされたから、としているが、確かに欲を満たすための情交でもあるので、読んでいてもあまり興奮を誘われないのは少々残念でもある。 いやらしさというのは女が感じることで生ずるものなのだなぁ、といった感想も沸くところだが、感じることで性欲が満たされるのであるならば、性欲を満たすために情交を重ねるアケミの感じている素振りが希薄なのは何を意味しているのだろうか?との疑問も沸く。本当に満たされているのだろうか?それはもしかしたら結末までに何らかの形で描かれるのだろうか?そして、その時にはウラナリ君がその大役を引き受けるのだろうか?などと、その後の期待感と共に次巻を待ちたい。
DSK
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