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オラクル・ナイト の商品レビュー

3.7

19件のお客様レビュー

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2017/11/17

高校生のとき「ムーンパレス」を読んで感動して以来、20年ぶりのオースター長編。漂う空気、人物の輪郭、優しさの漂うストーリーはやはり良い。ラストはやや急速に悲劇的に収束していくが、オースターが人間に向ける眼差しが常に優しいためなのか、最後まで慈愛に満ちた物語のように感じる。おそらく...

高校生のとき「ムーンパレス」を読んで感動して以来、20年ぶりのオースター長編。漂う空気、人物の輪郭、優しさの漂うストーリーはやはり良い。ラストはやや急速に悲劇的に収束していくが、オースターが人間に向ける眼差しが常に優しいためなのか、最後まで慈愛に満ちた物語のように感じる。おそらくそこがこの作家ならではの魅力なのだろう。映画「スモーク」が好きなら本作もやはりおすすめだ。

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2017/04/24

不幸や不運はいろんな顔でふいに現れるけど、ひとつの愛があれば、それらを凌駕できる。というたいへんシンプルでゆるぎない構図。こう書くと安直でメルヘンチックに聞こえるけど、世界の秘密に触れそうで触れられない、見えない影を追うような、なにか力強い何者かに突き動かされるような寓話。

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2016/12/12

物書きを生業にする男とその男の知人であるやはり物書きを 生業とする男の物語(現実)、 その男が奇妙なノートブックに綴る物語、 その物語の主人公のもとに送られてくる物語の中の物語、 知人の男が過去に描いていた物語、 男が映画原作のために描いている物語、 男の妻や近所の文具店店主に対...

物書きを生業にする男とその男の知人であるやはり物書きを 生業とする男の物語(現実)、 その男が奇妙なノートブックに綴る物語、 その物語の主人公のもとに送られてくる物語の中の物語、 知人の男が過去に描いていた物語、 男が映画原作のために描いている物語、 男の妻や近所の文具店店主に対する虚実入り乱れた想像、 それらが緻密に組み上げられ描かれた、 言葉と愛情をめぐる一篇の物語。 最近のオースター作品の主人公、 触れようとしたら触れられそうなくらいには現実感が伴っている (実在してそうな感じ)。 初期作品群を覆っていた、絶対的な孤独感、 透徹とした喪失感が ちょっと恋しくなったりもする。

Posted byブクログ

2016/12/01

ポールオースターは随分前に読んだ「偶然の音楽」以来の2作目。1作目もかなり好印象だった。日常的とも言える出来事の積み重ねの中に 少しずつある種の物語が浮かび上がってくる。特別な事件は何も起こらないのに 引き込まれていく。う〜ん、なかなか読後感も良かったです。 他の著作も読みたくな...

ポールオースターは随分前に読んだ「偶然の音楽」以来の2作目。1作目もかなり好印象だった。日常的とも言える出来事の積み重ねの中に 少しずつある種の物語が浮かび上がってくる。特別な事件は何も起こらないのに 引き込まれていく。う〜ん、なかなか読後感も良かったです。 他の著作も読みたくなります。

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2016/11/15

ポール・オースター氏初作品。 ありきたりで陳腐な言い方だけど、ジェットコースターの様な作品。序盤は中々引き込まれなかったが、退屈だからというわけではなく、場面を仔細に描写し、世界に引き込もうとしている段階だから、退屈と、早合点してしまったのだと思う。 で、まんまと世界...

ポール・オースター氏初作品。 ありきたりで陳腐な言い方だけど、ジェットコースターの様な作品。序盤は中々引き込まれなかったが、退屈だからというわけではなく、場面を仔細に描写し、世界に引き込もうとしている段階だから、退屈と、早合点してしまったのだと思う。 で、まんまと世界観に引きずり込まれたら、読む手を抑えられない。ストーリーが急速に動き、登場人物達がうねる様に暴れる。先にも出したけど、ジェットコースターと言う他ない。 キャッチャーな話にも見えたけど、読み終わってみると、とんでもない大作を読み切ったようなズッシリとした読後感。本書は左程ページ数が多い訳でもないし、物語も数週間という短い期間で展開されている。けれど、とてつもない密度。情報が多すぎるわけじゃなくて、物語に物語が絡みに絡み合い、複雑な層を成して物語が作られている。 雨の日にしっとりと読みたい本でした。

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2016/08/13

ポール・オースターが2003年に発表した中編作品。ブルックリンの街を舞台に、一人の男性作家を主人公として、偶然の連鎖による重層的なストーリーテリングを満喫できる傑作。主人公、その妻、作家の友人というトリオを基本構成としながらも、衛星的に周辺人物が物語を引き立て、柴田元幸が評するよ...

ポール・オースターが2003年に発表した中編作品。ブルックリンの街を舞台に、一人の男性作家を主人公として、偶然の連鎖による重層的なストーリーテリングを満喫できる傑作。主人公、その妻、作家の友人というトリオを基本構成としながらも、衛星的に周辺人物が物語を引き立て、柴田元幸が評するように「室内楽的」な美しさを醸し出す。室内楽的とは極めて的確な表現であり、特に弦楽四重奏のように、4人の奏者のフレーズに一切のムダがなく、音楽が持つ基本構造を全て網羅するかのような世界観に近しい。 そして物語を一層複雑にするのは、主人公が作中で執筆する小説であり、古典的な”小説内小説”(しかも小説内小説の中で「オラクル・ナイト」と題された別の小説が語られることとなり、マトリョーシカのような様相を見せる)の技法でありながらも、現実世界と奇妙なリンクを見せる小説内小説の描き方が見事。 オースターの作品は一通り読んでいて、一番の傑作は「ムーン・パレス」だと思っているが、それに次ぐ出来のような気がする。様々な偶然の連なりが半ば必然のように描かれながら、物語をドライブさせていく手腕は安定のオースター節という他ない。

Posted byブクログ

2016/05/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大病から生還した作家は、ふらりと入った文具店で青い布装のノートを買うと、そこに小説を書き始めた。『波』2016.1にて。

Posted byブクログ

2016/03/03

物語に次ぐ物語に引き込まれ、気づけば残り数ページ――そのような心地いい読書を久しぶりにできました。同作者の『ムーン・パレス』が好きなら、本作も楽しめるはずです。 余談ですが・・・ 退学を余儀なくされ、堕落した毎日を送り、両親を悩ます救いようのない息子が登場しますが、これは作者の...

物語に次ぐ物語に引き込まれ、気づけば残り数ページ――そのような心地いい読書を久しぶりにできました。同作者の『ムーン・パレス』が好きなら、本作も楽しめるはずです。 余談ですが・・・ 退学を余儀なくされ、堕落した毎日を送り、両親を悩ます救いようのない息子が登場しますが、これは作者の配偶者であり小説家であるSiri Hustvedtの長編What I Lovedに登場する息子を想起させます。

Posted byブクログ

2015/12/25

久しぶりのポール・オースター。 凝った構成と作中作が絡み合い、オースター独特の、『現実なんだけど現実っぽさのない世界』を作り上げている。と、同時に、主人公とその人間関係にも複雑さや暖かみがあって、これまでの無機質な作品とは一線を画しているように思う。面白かった。

Posted byブクログ