1,800円以上の注文で送料無料

人妻・奈津子 他人の指で… の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

一期一会の熱い出会い

「他人の指で…」のサブタイトルで痴漢モノ?と思ってしまうが、であればミスリードとなろう。また、あらすじを目にした時には無実の罪とはいえ突然の侵入者に無理矢理……といったベタな展開も想像したが、「イマドキそんな薄っぺらな小説なんぞ書きませんよ」と作者に諭されてしまった思いである。偶...

「他人の指で…」のサブタイトルで痴漢モノ?と思ってしまうが、であればミスリードとなろう。また、あらすじを目にした時には無実の罪とはいえ突然の侵入者に無理矢理……といったベタな展開も想像したが、「イマドキそんな薄っぺらな小説なんぞ書きませんよ」と作者に諭されてしまった思いである。偶然なのか必然だったのか、運命的にも思える一期一会の出会いが男と女を強く強く結びつける刹那の愛情物語だったと評したい。見事なストーリーと見事な官能描写が内包された、実に素晴らしい作品である。 愛人の影もちらついて不在がちな夫へのやりきれない思いから自慰に耽ってしまう冒頭は、結婚して8年、33歳の熟れた躰を持て余す人妻【奈津子】の現状にして官能面への下準備である。そんな時に現れる主人公を、家宅侵入といった犯罪的なゴリ押しではなく、思わぬ形で奈津子と出会わせる演出が主人公の人柄と本作の色合いを示している。愛する妻とも会えずに逃亡を続ける主人公と、経済的には恵まれながらも心と体にぽっかり穴が開いている奈津子。どちらも孤独と言える。 そんな隙間を埋めるように惹かれ合っていく2人の様子がじんわりしっとり描かれていく。なかなかドラマチックであり、情交へと至るのがドラマチックとも言える。奈津子の秘められた本意に気づき、それらしいことを口にしても否定する姿にいじらしさと恥じらいを見て安らぎ含みの愛情を覚える主人公。夫では得られない心の安寧と肉欲を満たしてくれる主人公。ストックホルム症状群も微かに含むような、やるせない同情と憐憫がいつしか本当に無実なのか?という疑念から失いたくない人へと昇華していく、そんな奇妙な2日間の物語とも言える。最後だからと朝から睦み、行かないでと囁く奈津子の愛らしさは相当な魅力で迫ってくる。しかし、元より行く末の定かでない2人の関係は突然に終わりを告げる。 ラスト4頁で描かれるのは1ヶ月後の主人公。無実の罪を着せられた、その真相と真犯人の登場は本作に最後の哀しみを一滴落としながらもどこか晴々とした心地の良さを感じさせるものだった。 霧原作品ではお馴染みの寝取られ風味(実際は夫婦の夜の営みだが)を途中では醸しつつ、凌辱でも誘惑でもなく心と体が触れ合う魅惑の情交がこってり描かれる。その興奮度の高さも含めて2015年のベストに数えたい大人の官能ドラマを堪能した気分である。

DSK