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西欧精神医学背景史 新装版 の商品レビュー

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2024/04/25

広範な領域にわたる多数の論文と資料収集によって生み出された執念の一冊。 紙幅はそこまでないが、知的濃度と専門性に溢れているおかげで大変勉強になる。 西洋精神医学の発達を歴史的、社会的、文化的な多層性を踏襲し緩やかに闊歩していく本著は、何度でも立ち寄って気合いを入れたい。

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2022/07/09

「人類史の中でヨーロッパとは何か」この問題意識は、先に読んだ山本義隆と呼応するものがある。 もともと刊行されたのは1979年「現代精神医学大系」の一部として。「若書き」であるとは著者の弁。一行の裏に一行の論文、一冊の本をこめるように書かれたとのことだが、わたくしには少し重たすぎ...

「人類史の中でヨーロッパとは何か」この問題意識は、先に読んだ山本義隆と呼応するものがある。 もともと刊行されたのは1979年「現代精神医学大系」の一部として。「若書き」であるとは著者の弁。一行の裏に一行の論文、一冊の本をこめるように書かれたとのことだが、わたくしには少し重たすぎた。

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2021/01/23

我が国の精神医学について明るくないから、一概にかうとは言へるものではないと思ふが、やはり西欧からもたらされたものは、我が国においても非常に影響のあつたものなのだと思ふ。それがよいか悪いかは別として、そのやうなものが入つてきてしまつた以上、その土壌を知らずに都合よくものを口にするの...

我が国の精神医学について明るくないから、一概にかうとは言へるものではないと思ふが、やはり西欧からもたらされたものは、我が国においても非常に影響のあつたものなのだと思ふ。それがよいか悪いかは別として、そのやうなものが入つてきてしまつた以上、その土壌を知らずに都合よくものを口にするのは、言葉に対して礼の欠いた行為だと思はれる。 古代のギリシア、ローマを経て、魔女狩り、近代、精神分析を経て現在へと続く流れの中には、いつも宗教があつた。 魔女狩りについてや宗教との関連で精神医学を語りなおすといふことを避けがちであつたり、あるひは知らうともしないでその結果だけを甘受するのでは大違ひである。果たしてさうした土壌をみて、それをそのまま受け取つてもいいのだらうか。 なだいなだが指摘するやうに、常識とはおそらく漢語由来のものであり、常識と良識が小林秀雄の中では混同されてゐたやうであるといふことを考へるに、様々な心理学の用語をみても、英語ではなく、自分のことばで考へんかうなつてしまつた。教会のなかつた国で、教会でしやうとしてゐたことと同じことをするといふことが果たしてどれほどひとの心を救へるだらうか。 しかし、さうしたものが入つてくるからこそ、交雑は必ず進む。食の文化がその国でどんどんアレンジが加へられていくやうに。 この背景史は20世紀までとなつてゐるが、これからどのやうな流れとなつていくのか、身を任せるより他ない。

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2020/09/25

西欧精神医学背景史 (和書)2009年01月29日 22:04 みすず書房 中井 久夫 西欧の精神病が病気として成立する過程を描いてあり、その根拠とは何かを考えさせられます。膨大な資料から紡ぎ出されているその背景史は、その「どうしようもない現実」との激しい軋轢によって描きださ...

西欧精神医学背景史 (和書)2009年01月29日 22:04 みすず書房 中井 久夫 西欧の精神病が病気として成立する過程を描いてあり、その根拠とは何かを考えさせられます。膨大な資料から紡ぎ出されているその背景史は、その「どうしようもない現実」との激しい軋轢によって描きだされているのではないかと考えさせられる。そういったものによって紡ぎ出されたものだからこそ病気とは何かを考えさせることはあっても病気の根拠を強制するものではない。 分裂病の発見の過程が参考になり、精神の病が発見されるという感覚が面白く感じます。数学の大系は発明だと柄谷行人が書いているが、精神病の発見とは発明なのかと思うと面白い。分裂病を医者が手段によって、ある認識可能なものに移行することによって治療を可能にするというところがあり、これは現在の抗精神病薬が患者を薬物投与によってある方向性に共通に持っていくことによってそこから人間を矯正しようとするものを言っているのではないかと感じる。 カント「他者を手段としてのみならず同時に目的として扱え」というところが患者と医者の間の諸関係をマルクス「・・諸関係をくつがえせという無条件的命令を持って終わるのである。」という姿勢に非常に良く当て嵌るように感じます。それによってしか救いはないと思う。 西欧精神医学の至上主義というか現在の抗精神病薬(精神薬理学)の成立する理論的根拠を批判(吟味)を可能にしているところがその自由性と倫理性の存在を感じます。 この人の本は何冊か読んだけど自分が分裂病(又は親和性者)であるかも知れないという認識を持つことで批判しているところがあって、病者としての患者をあくまで、貶め・隷属し・見捨て・蔑視することが無いような思考(姿勢)をもっているところは天性の資質もあるのではないかと感じます。(マルクス「宗教の批判」)これは柄谷行人は指摘するフロイトのユーモアというものではないかと思う。

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