高慢令嬢姉妹、堕ちる の商品レビュー
勧善懲悪痛快娯楽官能小説の趣
部下でもない1人の社員(主人公)を見下す社長令嬢の姉妹、そんな育て方しかできない不遜な父親、だからこそ半ば強引に奪った形の後妻には意趣返しの気持ちが潜み、妹を侮辱された主人公の反撃が単なる復讐劇に留まらない色合いを見せていく……時代小説では鉄板ネタの勧善懲悪な痛快さを現代に置き換...
部下でもない1人の社員(主人公)を見下す社長令嬢の姉妹、そんな育て方しかできない不遜な父親、だからこそ半ば強引に奪った形の後妻には意趣返しの気持ちが潜み、妹を侮辱された主人公の反撃が単なる復讐劇に留まらない色合いを見せていく……時代小説では鉄板ネタの勧善懲悪な痛快さを現代に置き換えた官能小説で再現したかのようである。だから読んでいて面白い。凌辱行為を正当化する訳では決してないし、その前にたとえ愛する妹が辱めを受けたからといって何もそこまで、という気もするが、己の欲望のみで女性を貶める一連の凌辱作品とは明らかに一線を画した1冊として今後も記憶に残りそうである。実に味わいのあるデビュー作と言える。 何より令嬢姉妹をタイプの異なる一卵性双生児にしているのが良い。まさにステレオタイプな高慢さを見せる姉と、インドア派で思慮深いからこそ粘着質な執拗さもある妹。前半のメインヒロインと言える姉を正攻法な凌辱で堕としながら、狙いを妹に定めた後半では異なる展開を見せている。そして、双子が最後に意味あるものとなっている。 気位の高い姉だからこそ堕ちた後はツンデレと化して可愛げを出しつつ妹の強情を諭し、最後は主人公を愛情の対象と見て援護するようにもなる。この変わり身に価値観の変化という少女の成長を盛り込み、姉を単なる悪者にしていない作者の優しさを感じる。 対して妹には高い依存性を付加したことで絶望から生じる新たな依存先、つまり新たな「ご主人様」を主人公に求める驚きの変身が盛り込まれていた。その変わりっぷりには唐突さも感じられたが、アイデアとしてはとても面白かった。 また、これには中盤で陥落した後妻が欠かせない存在として活きており、当初は脅迫に従う形だったものの、次第に娘達を守る母として、何より1人の女として後半は主人公のサポート役も果たすという実に面白い役回りを楽しそうに演じている。 普段は下僕のごとく振る舞うも妹が関わると別人になり、押しには弱い一面を見せる姉妹だと知ると加虐的な興奮も得るという多面性を局面に応じて出す主人公には性根の優しさと衝動的な力強さを同時に感じさせる良さがあったと思う。妹のために鬼と化す姿に「単なるシスコンだろ」といった趣もないではないが、それでも義士の風情があった。 ある意味では厚顔無恥の根源だった父親への成敗もあり、官能的にも心地良い「おしおき」の完了を告げる結末は上手い纏め方だったと思う。デビュー作と思えば官能描写も及第点と言えよう。むしろ展開が面白くて官能描写の淫猥さが少々割を喰ったところもあるだろうか。
DSK
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