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フランス二〇世紀詩と俳句 の商品レビュー

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2016/03/10

フランスにおいて日本の和歌、そして俳諧・俳句がどのように受け止められていたか、19世紀終わりの美術分野のジャポニズムに続き、20世紀初めは文学でのジャポニズム。その中心にいたポール=ルイ・クーシューが俳句を深く理解し、フランスに紹介していたことは感謝に尽きない。著者はクーシューの...

フランスにおいて日本の和歌、そして俳諧・俳句がどのように受け止められていたか、19世紀終わりの美術分野のジャポニズムに続き、20世紀初めは文学でのジャポニズム。その中心にいたポール=ルイ・クーシューが俳句を深く理解し、フランスに紹介していたことは感謝に尽きない。著者はクーシューの甥との交流を通し、深い理解を得ていく。芭蕉よりも蕪村や其角がフランスでは好まれる理由が、クーシューの言葉でよく分る。「蕪村の基調は悲惨な者たちへの真摯な愛である。芭蕉ほど深いものでも、絶妙でも、哲学的でもないが、純粋に絵画的であり、おそらくより多様で、時にはひたすら人間的である」。また別の人は「芭蕉は聖人で、其角は人間だった」  更に「俳句は日本をまるごと映し出している詩の雫」と形容し、広大な自然、廃墟となった城砦、孤愁をたたえた墳墓、夕闇の海辺、・・・その「何気ない旅のメモ」(P187)との表現も深淵だ。また、日本人が月や雪を愛でるのは「甘美な哀愁」「微妙な交感」「繊細な感動」「束の間の胸を衝く感覚」「しばしば過ぎ去っていく時間のその刹那の印象が見られる。生命の短さに敏感な日本人は、一瞬の記憶をもとどめようとする」とは凄い言葉である。(P187,8)  日本の芸術がシンメトリーを排除し、未完の数字、3、5、7を用いることが西洋と対照的とのビュルティの指摘に見るように、「非対称性」が日本の美術と文学を共通して説明するキーワードのようだ!

Posted byブクログ