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木のヨーロッパ 建築とまち歩きの事典 の商品レビュー

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2022/06/01

ヨーロッパの建築は石造、ばかりではない。 ヨーロッパの石造建築は、城郭や寺院、支配層の邸宅といった上層文化であり、農村の家などは木造だった。いまも残っている。「古い家のない町は、思い出のない人間と同じである」というヨーロッパの諺が、それらを大事にする気概を表している。 本...

ヨーロッパの建築は石造、ばかりではない。 ヨーロッパの石造建築は、城郭や寺院、支配層の邸宅といった上層文化であり、農村の家などは木造だった。いまも残っている。「古い家のない町は、思い出のない人間と同じである」というヨーロッパの諺が、それらを大事にする気概を表している。 本書はヨーロッパの木造建築を楽しむために、さまざまな提案を投げかけてくれる。 「旅の準備編」として、木造建築の分布、気候、植生、土地利用の形態、民族、宗教、といった情報をヨーロッパ全土にマッピングして見せてくれる。これだけでかなり楽しい。 そしていよいよ上陸。例えばイギリスの旅は、大陸側の生活文化が最初に伝わったドーバー海峡から始めて、なんていう具合に旅程も組んでくれる。イギリスにだって茅葺きの木造建築がある。日本の茅葺きはもう保護対象のような状態になっているが、それ以上に実際に利用されているようだ。 著名な建築と違って、こういうものを探すのは難しい。だからこんな道標があることは素晴らしい。建築の資料としてももちろんだが、知らぬ土地の、名もなき人たちの生活が想像できて気持ちが踊るし、なにより行ってみたくなる。以前、著者によるブルガリアツアーの案内を知り、結局行かなかった。本書によると「ヨーロッパ木造建築の次なる旅を企てるとき、ここから始めなければ、という気にさせる国」がブルガリアなのだそうだ。つまり、そのツアーが、それだったのだろう。うわあ残念。 日本はヨーロッパからいろいろなものを短絡的に受容してきたが、基層文化である「木のヨーロッパ」を完全に見過ごしてきた、と著者は指摘する。日本では古い建物は次々に消し去られていく。そこに何らかの矜持はあるのか。 ヨーロッパに学ぶことはまだあると改めて思った。

Posted byブクログ