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フランドルの四季暦 の商品レビュー

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2017/03/09

ベルギーはフランドル地方。そこに住む作者が季節のあらわれ、うつろいの極めて微細で繊細な様子を汲み取って、1月から順に12ヶ月分、一文一文ぬかりのない珠玉の修辞で描いていた。 それは擬人といった類ではない。そこでは草木は草木として、川は川として、雨風は雨風として生きていた。 例え...

ベルギーはフランドル地方。そこに住む作者が季節のあらわれ、うつろいの極めて微細で繊細な様子を汲み取って、1月から順に12ヶ月分、一文一文ぬかりのない珠玉の修辞で描いていた。 それは擬人といった類ではない。そこでは草木は草木として、川は川として、雨風は雨風として生きていた。 例えば4月、雪解けを迎えて、川の支流は春の兆しをめいっぱい抱えうきうきと本流に向かう。池の中で発芽した睡蓮は、はやく茎を伸ばし水面に顔を出して、きたる5月にみずからの開花を捧げたい。あるいは吝嗇家のキイチゴは、舞う雹のありったけをくすね、人目を忍ぶように葉の裏にこそっと隠しこむ。などなど… その万物の豊かな生の営みを、筆者は余さず汲み取って描写していた。驚くほど細かい。でもメモを取ろうとしたら追いつかないくらい、ほとんどすべての文章が興味深く心に沁み渡った。 ときにはその地方で生活している人々の人生、日常の一景を織り交ぜ描くことで、その季節の色をさらにこちらの心に印象付ける。鮮やかな手腕にため息が尽きなかった。 挿絵も細やかでかわいくて豪華な一冊。

Posted byブクログ