100%月世界少年 の商品レビュー
アメリカの作家「スティーヴン・タニー」の長篇SF作品『100%月世界少年(原題:One Hundred Percent Lunar Boy)』を読みました。 ここのところ、SF作品が続いています。 -----story------------- 「あなたの眼が見たい。わたしは傷...
アメリカの作家「スティーヴン・タニー」の長篇SF作品『100%月世界少年(原題:One Hundred Percent Lunar Boy)』を読みました。 ここのところ、SF作品が続いています。 -----story------------- 「あなたの眼が見たい。わたしは傷ついたりしないわ」地球から来た少女にせがまれ、月世界生まれの彼はゴーグルを外した。 これは犯罪行為だった──地球に存在しない、表現しようのない色の眼を直視した者は錯乱するからだ。 官憲の手が迫るなか、彼は疑問を抱く。 なぜこんな制約を受けるのか。 語られぬ真実を暴くため、彼は仲間たちと、月の裏側にある史上最大の紙の本の図書館を目指す。 訳者あとがき=「茂木健」 ----------------------- 2010年(平成22年)に発表された著者の長篇第2作で、初のSF作品です、、、 本作が発表されたのはデビュー作発表から18年後とのこと… 画家、シンガーソングライター、ロックミュージシャンとしても活動しているようなので寡作の作家のようですね。 現在から約二千年後、人工大気で覆われた月の表面には都市が数多く建設され、超高層アパートが林立していた… 新たなエネルギー資源であるウルザタリジンの採掘と運搬の他にこれといった産業が育たなかった月の都市は徐々に荒廃し、約二百年前から月で生まれる子どもたちの中に先天性の奇妙な障害をもつ子が現れ始めた、、、 完全月世界凶眼症と呼ばれるその先天異常は、外観的には第四の原色に染まった瞳として発現していた… 赤、青、緑の三原色とは全く異なった、この色を見た人間は、一時的な精神異常に陥り、激しい幻覚に襲われ、底なしの無力感にとらわれた挙句、心に大きなダメージを負ってしまうのだった。 そのため、すべての凶眼症者は、その瞳で他者を傷つけることがないよう特製ゴーグルの着用を一生涯義務付けられ、月以外への天体、特に地球への渡航を厳重に禁じられていた… そして、この障害をもつ子どもたちは、一般社会から100%月世界少年/少女と呼ばれていた、、、 ところが凶眼症者には、極めて特殊な能力も備わっており、月世界政府は百年近くにわたってその事実を巧みに隠蔽しつつ、狡猾な手段を使って凶眼症者たちから自由を奪い、彼らの力を最大限に利用していた… 100%月世界少年の高校生「ヒエロニムス・レクサフィン」は、地球から来た美しい少女「スズメの上に落ちてゆく窓」にせがまれるままゴーグルを外し、自分の瞳を見せるという大罪を犯してしまい、警察から追われる身となってしまう。 「ヒエロニムス」は、「ドギュマンヘッド・シュメット警部」の執拗な捜査から逃げ回るうちに歴代政府の悪行を知ることになる… 自らの身を護り、真実を暴くため、幼なじみで高校のトッパー(優等生)・クラスの仲間であり100%月世界少女の「スリュー・メムリング」や、高校のルービー(低能)・クラスの仲間である「クレレン」や「ブリューゲル」等と行動をともにする……。 SFとファンタジー、青春ドラマ(ラブコメ)、ディストピアの要素がバランス良く詰まった作品でした… 月で生まれた新人類――直視したものは発狂すると言われる、第四の原色の瞳を持つ人間という設定がなかなか魅力的で、序盤からこの世界観にどっぷり浸かって読み進めました、、、 「シュメット警部」の捜索をかわしつつ、隠蔽された過去の歴史を徐々に明らかにしていく終盤の展開は面白くて一気読みでした… あとがきに、著者が続篇の執筆にとりかかているという情報が記されていたので、続篇が刊行されれば、是非、読んでみたいですね。
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丁寧に話が進んでいて心地好かった。 その分後半の畳み掛けがおしかったかな、ゆっくり読みたかった。 含みを持たせた終わり方が、希望ともその逆とも取れて良い。 幸せになってくれると良いな。 人名に<スズメの上に落ちていく窓>ってすごい発想。 そんな時代が来たら、何にしようかものすご...
丁寧に話が進んでいて心地好かった。 その分後半の畳み掛けがおしかったかな、ゆっくり読みたかった。 含みを持たせた終わり方が、希望ともその逆とも取れて良い。 幸せになってくれると良いな。 人名に<スズメの上に落ちていく窓>ってすごい発想。 そんな時代が来たら、何にしようかものすごく悩む。 ヒエロニムスとスリューのコンビが好き。 ゴーグルはスチームパンクなイメージ。
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暫く前に購入して積んで置いた本。スルスルと一気読み。割とシリアスな話のはずが妙にコミカルな感じのナレーションで進むので軽快に読み進めるけど…でもよくよく考えるとそんな軽い感じで良いのか、お前と後で突っ込みたくはなる。 この世に実在しないとされている第4の原色をその目に宿す月人の...
暫く前に購入して積んで置いた本。スルスルと一気読み。割とシリアスな話のはずが妙にコミカルな感じのナレーションで進むので軽快に読み進めるけど…でもよくよく考えるとそんな軽い感じで良いのか、お前と後で突っ込みたくはなる。 この世に実在しないとされている第4の原色をその目に宿す月人のお話、というと物凄いファンタジーな感じですが実際は彼らと彼らを抑圧する壊れた世界のお話、と言った方が良いような。目に見えないから実在しないというのは感じ取れないから人間には存在しないと同義語なのかもしれない、なんて思いました。 そして彼らの抱えた問題はちょっと冒険してすべてがハッピーエンドで終わらない辺りが良かったです。でもシリーズ化するのはどうなのかなぁ。というわけで続編を読むかどうかは謎な所。クレレンが月の未来を肩に背負って歩き出した、というラストが素敵なので。 というのも。学校の描写が長いのと月世界の治安が悪すぎてちょっと辟易する。学校側もそんなにまで暴力的な生徒たちを野放しにしておいていいのだろうか、なんて疑問を持ちました。わからないもの、理解できないものを脅威に思い排除したいって気持ちはわからなくはないけど刑事さん?はちょっと…どうなんだろう。同族嫌悪だかなんだか知りませんがちょっとこれは無いな、という展開も多かったので。
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とても面白かったです。地球には存在しない「第四の原色」を、わたしも見てみたくなりました。たとえ錯乱しようとも、惹きつけられてやみません。月を舞台にした、青春ものとも感じられました。「100%月世界人」たちの虐げられる様は、辛い描写でした。でも、「100%月世界少年」って素敵な響き...
とても面白かったです。地球には存在しない「第四の原色」を、わたしも見てみたくなりました。たとえ錯乱しようとも、惹きつけられてやみません。月を舞台にした、青春ものとも感じられました。「100%月世界人」たちの虐げられる様は、辛い描写でした。でも、「100%月世界少年」って素敵な響きです。ヒエロニムスと母親のラスト、良かったな。続きがありそうなので気になりました。
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テラフォーム化された月で生活する人々の中に 稀に生まれる、第4の原色を瞳に宿した 「100%月世界人」 彼らのその、言葉では表現することのできない色をした目を見つめてしまうと通常の人間は 正常な状態を保つことができなくなってしまうため、 彼らはその目を隠すゴーグルの着用を義務付け...
テラフォーム化された月で生活する人々の中に 稀に生まれる、第4の原色を瞳に宿した 「100%月世界人」 彼らのその、言葉では表現することのできない色をした目を見つめてしまうと通常の人間は 正常な状態を保つことができなくなってしまうため、 彼らはその目を隠すゴーグルの着用を義務付けられている 物語は、そんな100%月世界人の1人である少年が、地球から観光に来た1人の少女と出会い ゴーグルを外してしまったことで大きく動き始めるのだった *** 設定や、舞台 なにより月の裏にある図書館というワードにひかれて読んでみた 各々のキャラクタも個性的でとても良かったし ラストも納得のできるおさまりで読後感も良かった ただ、月世界人が見つめ合ったときの現象が 要するになんなのかよくわからなかった 魔法みたいな力が発揮されたのだろうか…? ハチドリがおかしくなって変色する道理がわからぬ 映画化するというはなしだけど、一番の肝である第4の原色はどうやって表現するんだろうか… まさか7色に発光するだけ、とか…?
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
丁寧に描かれたり描写されたり設定されたりしているところとそうでないところのギャップが激しい。。。 なぜ、月に住む人たちの名前は割と平凡なのに地球の少女の名前が「スズメの上に落ちていく窓」なのよとか、ヒエロニムスが地球の少女と恋に落ちる理由とか、シュメット警部が地球の少女に懐かしい気持ちをいだくのか、とか、月の裏側の図書館へ頑張って行ったのに、なんでみんな踊ってるんだよとか、おじさんの不倫の話とかでてくるんだよとか、最後の朗読シーンはどこへ向かうんだよとか、気になって仕方ない。 続編ありきなわけ?
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遠未来の月面都市を舞台にしたSF小説。これが著者の第2長編になるそうだ。 一部の階層が虐げられるディストピアは数多のSF小説の設定に見られるが、そこに『見ると錯乱する第4の原色をした瞳』という設定を持って来たのは面白い。この設定は画家やミュージシャンとしても活動していた経歴が影響...
遠未来の月面都市を舞台にしたSF小説。これが著者の第2長編になるそうだ。 一部の階層が虐げられるディストピアは数多のSF小説の設定に見られるが、そこに『見ると錯乱する第4の原色をした瞳』という設定を持って来たのは面白い。この設定は画家やミュージシャンとしても活動していた経歴が影響しているのだろうか(ただ、著者には申し訳ないことに、咄嗟に思いついたのがSHARPの「クアトロン」とSONYの「WhiteMagic」だった……4原色って言われると液晶パネルだよなぁw)。 構成や登場人物の造形は海外ジュブナイル的な印象が強く、続編を強く意識したラストになっている。しかし巻末の解説では『続編執筆中』のようだ……続編の邦訳が出ない、なんてオチにならないことを祈ろう……。
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