上山春平著作集(第6巻) の商品レビュー
単著『深層文化論序説』(1976年、講談社学術文庫)、『天皇制の深層』(朝日選書、1985年)のほか、著者が編集を担当した『照葉樹林文化―日本文化の深層』(1968年、中公新書)に収録されている著者の論考とシンポジウムが収録されています。さらに『続・照葉樹林文化―東アジア文化の源...
単著『深層文化論序説』(1976年、講談社学術文庫)、『天皇制の深層』(朝日選書、1985年)のほか、著者が編集を担当した『照葉樹林文化―日本文化の深層』(1968年、中公新書)に収録されている著者の論考とシンポジウムが収録されています。さらに『続・照葉樹林文化―東アジア文化の源流』(1976年、中公新書)、『稲作文化―照葉樹林文化の展開』(1985年、中公新書)のなかから、著者の論文も収められています。 ユーラシア大陸を西から東へと進んでいった「工業革命」と、東から西へと進んでいった「農業革命」の影響を受けて歴史的に変容してきた日本文化のさらなる根底に、根栽農耕文化がおこなわれていた時代から引き継がれた文化的基層が存在していると著者は考えます。『照葉樹林文化』では、生態学者の吉良竜夫や植物学の中尾佐助らとのシンポジウムを通じて、その考えを補強しようとしています。さらに『続・照葉樹林文化』では、ユーラシア大陸の西における「肥沃な三日月地帯」と相応する、「東亜半月弧」と呼ばれる地帯にその起源が求められ、広い文明史的な観点から日本文化の深層に流れているものにせまろうと試みられています。 なお著者は、日本における信仰のありかたにかんしても、深層文化からの影響を見いだすことができないかという問題関心をいだいており、『照葉樹林文化』では文化人類学者の岩田慶治との対話からなんらかの手がかりを見いだそうとしていますが、この点についてはあまり議論が深められていません。文化の深層をさぐるという著者の課題が、通時的な観点と共時的な観点をどのようなしかたで統合するものなのか、充分に明確な規定がなされていないことに、その原因があったように感じます。
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