ミラノの太陽、シチリアの月 の商品レビュー
どこかもの寂しい気持ちになるけれど、生きる希望も感じさせてくれる話。イタリアの美しい海、田舎の風景、どんよりとした冬の景色などが詳細な描写から伝わってくる。
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『ジーノの家』で日本エッセイストクラブ賞と講談社エッセイ賞をダブル受賞(2011年)した内田洋子による、同書に次ぐエッセイ集。私は『ジーノの家』で一遍に著者のファンになったが、蔵書の収納スペースの悩みから他の作品の文庫化を首を長くして待っており、本作品集(2012年発表)が今般や...
『ジーノの家』で日本エッセイストクラブ賞と講談社エッセイ賞をダブル受賞(2011年)した内田洋子による、同書に次ぐエッセイ集。私は『ジーノの家』で一遍に著者のファンになったが、蔵書の収納スペースの悩みから他の作品の文庫化を首を長くして待っており、本作品集(2012年発表)が今般やっと文庫化され、すぐに手に取った。 本書のコンセプトは、『ジーノの家』と同様、内田氏が出会った市井に生きる普通のイタリア人が送る人生の一断片である。にもかかわらず、各篇はあまりにもドラマティックで強烈な印象を残す。それはなぜなのだろうか。。。 いくらイタリアが、ルネサンスの芸術、プッチーニのオペラ、フェラーリの車、アルマーニのファッションを生んだ国であっても、自分の周囲の人々の生活や人生がそうそうドラマティックなものばかりであるはずはない。と考えながら本書を読むと、内田氏がこうした作品を生み出せるのは、類稀なフットワーク、人への興味、誠実さ、感受性、柔軟性、忍耐強さ等々を持っているからなのだと気付く。 内田氏がイタリアで住んだ家は、本書を見るだけでも、「ミラノで買った箱」の偶々バールで話をした大学教授と共同家主となったミラノの家、「鉄道員オズワルド」のリグリア州の海辺のオズワルド一家が住む駅舎の見える高台の家、「六階の足音」の様々な住人の住む六階建ての共同住宅、「ブルーノが見た夢」のリグリア海を見下すアパート、「鏡の中のナポリ」の大学時代に居候をしたナポリ有数の名家の邸宅。。。である。そうした様々な環境に身を置きつつ、関わる人々と築いた信頼をベースにしてこそ書き得たものが本書なのである。 かつて、山口瞳が沢木耕太郎を「エッセイを小説のように書く」と言ったが、それは内田氏にも当てはまると言えよう。 他の作品集も早く文庫化して欲しいものである。 (2015年10月了)
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