空の拳(下) の商品レビュー
角田光代さんのボクシング小説『空の拳』(2012年単行本刊)、文庫化で分冊された下巻です。 上巻以上に試合場面が増え、描写にも質的な変化が見て取れます。試合をするボクサー、観戦する側の観る目も経験を積んで成長し、意図的な濃密さを感じました。 選手の描写で、肩胛骨と筋肉がそ...
角田光代さんのボクシング小説『空の拳』(2012年単行本刊)、文庫化で分冊された下巻です。 上巻以上に試合場面が増え、描写にも質的な変化が見て取れます。試合をするボクサー、観戦する側の観る目も経験を積んで成長し、意図的な濃密さを感じました。 選手の描写で、肩胛骨と筋肉がそれぞれの意思で踊るように動くとか、観衆の様子で、土砂降りのような歓声だとか、空也目線の状況分析と選手心理の読みが深化している‥? 記者として追うボクサーが複数いて、試合描写が焦点化されないのはある程度当然かもしれません。物語がどう収束していくのかなと思いながら、長い試合場面に神経がやや疲れました(笑)。 でも、ハングリーさやストイックさを感じさせず、優しく爽やかで、希望をもてるような読後感だと思いました。 シンプルで人を魅了するボクシングを、それに打ち込む若者たちを、見事に鮮やかに描いている小説でした。 巻末の沢木耕太郎さんとの特別対談も、とても興味深く読みました。 本書の続編にあたる『拳の先』、さらにエッセイ『ボクシング日和』、さらに×2 沢木耕太郎さんの『一瞬の夏』も、機会を見つけて読んでみたいと思いました。
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やっぱりボクシング小説はおもしろい!リングの上の熱い気迫が、ビシビシ伝わってきます。殴り合うという単純明快なスポーツの先にある、ボクサーたちの苦悩や興奮が、リアルに感じられました。大満足です。
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ビッグマウスを批判されながらも、順調にステップアップするタイガー立花。ボクシング雑誌編集者の空也にも、人生の転換期が訪れる。ボクシングに魅了される男たちの姿を描く青春スポーツ小説。 まさに角田光代版『一瞬の夏』。巻末の沢木耕太郎氏との対談は必読ものである。カシアス内藤がガンと闘い...
ビッグマウスを批判されながらも、順調にステップアップするタイガー立花。ボクシング雑誌編集者の空也にも、人生の転換期が訪れる。ボクシングに魅了される男たちの姿を描く青春スポーツ小説。 まさに角田光代版『一瞬の夏』。巻末の沢木耕太郎氏との対談は必読ものである。カシアス内藤がガンと闘い、そして彼の息子がボクシングを始めるとは。『一生の夏』とは言い当て妙だ。
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文芸作品を担当したくて出版社に就職したもののボクシング雑誌に配属された空也は自らジムの練習生にとなり取材対象に接するようになる。ボクシング素人の空也の目線からの描写がリアルに感じられるスポーツ小説。試合を生で見たくなる。
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格闘技は苦手だけど角田さんだから読んでみた。なんだろ、後半、試合の場面は引き込まれたけど、全体的にはいまいち盛り上がらなかった。感情移入できる人がいなかったからか。角田さんの作風とスピードのあるスポーツが合わないのか。
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角田好きかつボクシングファンなので楽しみに読んだ。が、期待が大きすぎたか「ふつう」だった。物語もまだつづきがありそうな感じだし、すっきりした感じがしない。もう少し深い人物描写があったほうが良かったと思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルと主人公の名前からよくある主人公がひょんなことから始めたボクシングで活躍するという漫画的な話かと思われたが、そうではない。どうしてこういう主人公で物語を描いたのかという点は最後の対談でよくわかる。
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物語自体は2000年代初めくらいの設定。でも端々に現在にも通じることが書いてある。 みんな正義をふりかざしているけど、いじめっ子みたいだ、とか。 本質とは関係のないことで叩かれる。しかも叩く側の人間は、そのことで大して実害を被っているわけではない、のに。 いーっちゃおいっちゃお、...
物語自体は2000年代初めくらいの設定。でも端々に現在にも通じることが書いてある。 みんな正義をふりかざしているけど、いじめっ子みたいだ、とか。 本質とは関係のないことで叩かれる。しかも叩く側の人間は、そのことで大して実害を被っているわけではない、のに。 いーっちゃおいっちゃお、せーんせーにいっちゃーおー 子ども時代によくあるこれと同じようなメンタリティなのか。 ボクシングに興味を持てたわけではないけれど、そういうことを考えさせられたよ。
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何者でもない男達…いいなぁ。 すごく強くなりたい、というシンプルさが羨ましい。 ラストもいいとこで終わる。 孤独で地味で苦しい日々を立花や坂本や中神や空也は知ってるからそれぞれボクシングとの向き合い方が違うけど確実に得たものを糧にそれぞれの生き方していくのが想像できてボクシングに...
何者でもない男達…いいなぁ。 すごく強くなりたい、というシンプルさが羨ましい。 ラストもいいとこで終わる。 孤独で地味で苦しい日々を立花や坂本や中神や空也は知ってるからそれぞれボクシングとの向き合い方が違うけど確実に得たものを糧にそれぞれの生き方していくのが想像できてボクシングに取り込まれた彼らがかっこいいと思いました。
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会社の都合により、専門誌の編集者としての道は永遠ではない。ボクサーとしての道は、誰が行先を決めるのだろう。ジム、トレーナー、ファン……最終的には自分なのかなやっぱり。
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