ある男 の商品レビュー
いやぁ、おもしろかった。 短編の時代小説(?)で、とても読みやすかった。時代劇みたいなものってほとんど読まない理由が、日本史苦手だからと、文章がなかなか読みにくいからなとこあるんだけど、これはなぜだかスッと読めた。 どの話も、正義が勝つ!みたいなシンプルな終わり方じゃないのもまた...
いやぁ、おもしろかった。 短編の時代小説(?)で、とても読みやすかった。時代劇みたいなものってほとんど読まない理由が、日本史苦手だからと、文章がなかなか読みにくいからなとこあるんだけど、これはなぜだかスッと読めた。 どの話も、正義が勝つ!みたいなシンプルな終わり方じゃないのもまたいい。 別の同タイトルの本と間違えて借りてしまったのはここだけの話。だけど、間違えてよかった!おかげでこんな面白い本に出会えたのだから!
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実は別の『ある男』と勘違いして購入した本書。著者の他の作品を読了し、読み始めた。南部藩、リストラされた士族、米沢藩、会津藩など幕府側と目された土地や侍たちが被った政治的差別と、明治政府への抵抗と挫折を描く。それぞれの短編の主人公はただ「男」という呼称を与えられ、御一新後の混乱期を...
実は別の『ある男』と勘違いして購入した本書。著者の他の作品を読了し、読み始めた。南部藩、リストラされた士族、米沢藩、会津藩など幕府側と目された土地や侍たちが被った政治的差別と、明治政府への抵抗と挫折を描く。それぞれの短編の主人公はただ「男」という呼称を与えられ、御一新後の混乱期を、時に疑問を感じながら、時に憤り、希望を潰えされながら懸命に生き抜く姿に惹き込まれた。
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幕末から明治にかけて、御一新後を生きていた”男”たちの生き様を描いた7つの物語。 盛岡は尾去沢銅山の金工、飛騨は高山県の地役人、東京警視庁の警察官、会津で私塾を開く元京都見廻組の男、岡山の農村の隠れた俊才・・・。作中で彼らに名前は与えられず、ただ”男”と表記されることで、これらが...
幕末から明治にかけて、御一新後を生きていた”男”たちの生き様を描いた7つの物語。 盛岡は尾去沢銅山の金工、飛騨は高山県の地役人、東京警視庁の警察官、会津で私塾を開く元京都見廻組の男、岡山の農村の隠れた俊才・・・。作中で彼らに名前は与えられず、ただ”男”と表記されることで、これらが特別な一個人の物語ではなく、当時の日本のどこにでもいた者たちの人生であることが感じられる。 維新後の明確なビジョンを持たず、ただ幕府を倒すことだけを目標に維新を果たした者たちが、新政府となった後に行っていることが、結局は旧幕府が行っていたことと何ら変わらないじゃないかということに気が付いた庶民の虚しさ。それは入れ子の箱のように、箱を開けたら小さい箱が出てくるだけという治世者の代り映えのなさ。 官吏は上司の顔色を見ることだけに腐心し、金持ちは自分の利益を減らさないことだけを考える。結局割を食うのは小作農、山方、金工、職人といった持たざる者たち。地方は中央に利用され、疲弊し続ける。それでも誠実に目の前の田畑を耕し、銅山を掘り、自らの仕事の矜持を失わない庶民たち。なんだ、いつの世も変わらないじゃないか・・・。 庶民を描かせたらぴか一の木内さん、幕末の志士たちを描いた「火影に咲く」とはまた違う味のある作品でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
再読。江戸から明治へ移ってまもなくの頃、7人の男の短編集。「男」とだけ書かれ名はない。どの人も何かを成し遂げるでもなく、大どんでん返しがあるわけでもない。時代の変わり目に、一歩引いた場所から他人の浅慮を笑っていても、時代の波は傍観者など許すはずもなく、あっと気づいたときには飲み込まれている。飲み込まれたことに気がついていれば、まだマシか。真摯な理想と、盲目的で傲慢な思い上がり、両方が丁度よく気持ち悪い感じで(笑)混ざっていて、でもそれが大多数の人間って気もする。読み終わりに心ざわつかせたい人にオススメ。
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御一新、ゆっくりと激しく日本が変わった時。先を見る者、取り残される者、呆然とやり過ごす者。そんな中の「ある男」。男に名前はない。でも考え、憤り、体を燃やし確かに生きていた。偽札作りを持ちかけられ、自分の腕を試すために試行錯誤する男。この男が燃やしたもの、それは男の矜持だ。男は名誉...
御一新、ゆっくりと激しく日本が変わった時。先を見る者、取り残される者、呆然とやり過ごす者。そんな中の「ある男」。男に名前はない。でも考え、憤り、体を燃やし確かに生きていた。偽札作りを持ちかけられ、自分の腕を試すために試行錯誤する男。この男が燃やしたもの、それは男の矜持だ。男は名誉のため、偽札作りに命をかけのめり込む。もう誰も求めていないのに。そこから、ひゅんと場面が変わり若かりしころの男と弟と母の話。急激に訪れたまろやかなあたたかさにくらくらし、えも言われぬ懐かしさがこみ上げてくる。これが木内昇の物語だ。
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明治初期。 もはや時代に合わなくなり、世界情勢にもついて行けなくなった徳川幕府は倒され、明治新政府が誕生した。 しかし、「壊すところまでしか考えていなかった」…新政府は、迷走する。 混迷の時代を生きる人々の短編集。 各短編の主人公には、名が記されていない。 「男」として語られる...
明治初期。 もはや時代に合わなくなり、世界情勢にもついて行けなくなった徳川幕府は倒され、明治新政府が誕生した。 しかし、「壊すところまでしか考えていなかった」…新政府は、迷走する。 混迷の時代を生きる人々の短編集。 各短編の主人公には、名が記されていない。 「男」として語られるのみである。 脇役は皆名前があるのに… そして、各短編の結末は、何かがスッキリ解決して終わるものはない。 こうやって、必死にもがいていた「男」がいました、というスタンスだからだ。 どれも、丹念にコツコツと、鑿で石を彫るようにして形になったような作品ばかりである。 『蝉』 『喰違坂』 『一両札』 『女の面』 『猿芝居』 『道理』 『フレーヘードル』
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男たちの人間くささが、いい 時代の大きな転換期に直面し 不器用だったりやり方が間違えていたりしつつも 一生懸命、それぞれの信念にまっすぐに ときに迷い惑いながらも 生きた男たち
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重厚な歴史短編小説集です。 明治初頭、幕府を倒しながらも旧弊に陥ったり、権力を笠に着るような政府・県令達と、維新で生活が楽になるという期待を裏切られた農民庶民達。この作品の特徴であり目新しさは、両者に挟まれた名も無き中間層に焦点を当てた事でしょう。 全ての短編で、それぞれ異なる主...
重厚な歴史短編小説集です。 明治初頭、幕府を倒しながらも旧弊に陥ったり、権力を笠に着るような政府・県令達と、維新で生活が楽になるという期待を裏切られた農民庶民達。この作品の特徴であり目新しさは、両者に挟まれた名も無き中間層に焦点を当てた事でしょう。 全ての短編で、それぞれ異なる主人公が「男」と称され、それがタイトルの「ある男」になったのでしょう、歴史背景がしっかり描かれ、庶民の姿も鮮やかなしっかりした歴史小説で、木内さんの力量を感じます。しかし。。。 どうも上にも下にもいい顔をしようとし、結局は追い詰められていくというタイプの主人公が多く、どうもお話しとしてはのめり込めないのです。 私にとっては「良い小説だが、あまり好きになれない物語」でした。
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