プラットフォーム の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「服従」がベストセラーとなっているミシェル・ウェルベックの長編2作目。彼の作品は初めて読む。現代のフランス(を中心とした西欧社会)において、彼の視点はただただ人間の欲望というものの発露の仕方に向けられているようだ。露悪的ともいえる文体で、「普通の」人間の中にある欲望、殊に性欲についての描写がしつこくまとわりつくようで、濃密である。どこかで開高健が「作家の善し悪しは食事とセックスをきちんと書けるかどうかでわかる」というようなことを書いていたが、この作品では(フランスが舞台でありながら!)食事の描写はわりあいさらりとしていて、その分すべての技巧やレトリックをセックスとそれにまつわる哲学に費やされているようで、その徹底ぶりには執念すら感じさせる。 主人公はパリに住む公務員。ぱっとしない独身の中年男だ。仕事にも恋愛にも熱意はなく、特に趣味と言えるものもなく、日々をただ淡々と過ごしていて、セックスに関してははそうしたサービスを利用してすませている。 父親の遺産を相続した彼は、タイへのツアーに参加してある女性と出会い、人生が大きく変わっていく…。 …と書くとずいぶん陳腐なストーリーのようだが、まったく退屈させることなく読ませてしまうのはさすがの筆力。帰国して彼女と再会した彼は、彼女の仕事である旅行産業に大きな一石を投じることになり、すべてが思いのままに進んでいくが、やがてくる破滅に彼は気づくはずもなく…。 現代社会の欲望とセックス。異文化との衝突と暴力。それらが交錯する瞬間こそが、現代という時代を象徴していることを書きたかったのだろうか。 それが予言していたかのように、今まさにフランスを舞台にそうした悲劇が繰り広げられているのには驚かされる。
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「地図と領土」でゴンクール賞を受賞したウェルベックの初期の作品。 「地図と領土」が本当は読みたかったけど、手元に「プラットフォーム」があったので、まずこれを消化してからと思ったら。。。 主人公はつまらない40歳独身公務員で、父親が他殺された後、遺産でタイにツアー旅行に出かけ、少...
「地図と領土」でゴンクール賞を受賞したウェルベックの初期の作品。 「地図と領土」が本当は読みたかったけど、手元に「プラットフォーム」があったので、まずこれを消化してからと思ったら。。。 主人公はつまらない40歳独身公務員で、父親が他殺された後、遺産でタイにツアー旅行に出かけ、少女買春しまくる。そのツアーで出会った28歳の才色兼備の高収入キャリアウーマンと恋に落ちる。彼女は賢くて優しくて素直でセクシーで非の打ち所なし。。。 と、ここまで読んで放り出した。 後半はイスラム原理主義への批判などが書かれているようだが、女性がことごとく人間ではなく「女性器」としてのみ主人公の目線から描かれることに辟易するし、その「女性器」全てが主人公に対して優しくて献身的であり、「んなわけねーだろ」としか思えない。
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旅行会社に勤めている?ウエルベック『プラットフォーム』だね。え、なにそれ。という新しい出会いのスタイルを提案する本として私の中では記憶されたこの書籍は、ウエルベック特有の高度に発展した資本主義社会への呪詛に溢れていて、悪意という意味では最も楽しめました。
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『服従』が話題のミシェル・ウエルベックが2001年に発表した長編小説。かなりの問題作ということで、本国では多くの議論を巻き起こしたらしい。そういえば『服従』も議論の的になってるようで、割と過激な題材を扱うことが多い作家なのだろうか。 本作も『過激な題材』だけども、人間が多かれ少な...
『服従』が話題のミシェル・ウエルベックが2001年に発表した長編小説。かなりの問題作ということで、本国では多くの議論を巻き起こしたらしい。そういえば『服従』も議論の的になってるようで、割と過激な題材を扱うことが多い作家なのだろうか。 本作も『過激な題材』だけども、人間が多かれ少なかれ持っている暗黒面を戯画化して描いている故に、良くも悪くも話題になるのでは……という印象。
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