〈日本哲学〉入門講義 の商品レビュー
2014年におこなわれた著者の講義をまとめた本で、西田幾多郎の『善の研究』と和辻哲郎の『人間の学としての倫理学』を、それぞれ三回に渡って解説しています。日本の独創的な哲学者、倫理学者とされる二人の著書を、とくに学説史的な解説をおこないながら読み解いているところに、本書の特徴がある...
2014年におこなわれた著者の講義をまとめた本で、西田幾多郎の『善の研究』と和辻哲郎の『人間の学としての倫理学』を、それぞれ三回に渡って解説しています。日本の独創的な哲学者、倫理学者とされる二人の著書を、とくに学説史的な解説をおこないながら読み解いているところに、本書の特徴があるように思います。 和辻の『人間の学としての倫理学』が、アリストテレスやカント、ヘーゲル、マルクス、ハイデガーらの思想をかなりていねいにフォローしながら、和辻自身の提唱する「間柄」の倫理学への布石を打っていることは知っていましたが、本書では西田の『善の研究』に関しても、プラグマティズムとの関わりや西洋倫理思想に対する西田の純粋経験論の立場がていねいに説明されています。もちろん和辻についても、ヘルマン・コーエンなどのマイナーな思想家の学説を紹介しながら、テクストをじっさいに読み解いています。 日本の哲学については、西田であれば禅との関係、和辻であれば戦時中の滅私奉公的な共同体主義の線でわかりやすくまとめることもできそうですが、著者はそのようなやり方は採用せず、じっさいのテクストをていねいに読み解いていくという方法で解説をおこなっています。ややの骨太の入門講義という印象です。
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