自衛隊のリアル の商品レビュー
集団的自衛権の議論から忘れられている自衛隊の現場について、防大出身の記者が取材をもとに書いた本。自衛隊は、普通の軍隊になろうとする動きと、皆に愛されたいという思いの二つがあると書かれており、今までなかった視点を読者に提供している。 確かに、存在自体が違憲であると言われると、組織に...
集団的自衛権の議論から忘れられている自衛隊の現場について、防大出身の記者が取材をもとに書いた本。自衛隊は、普通の軍隊になろうとする動きと、皆に愛されたいという思いの二つがあると書かれており、今までなかった視点を読者に提供している。 確かに、存在自体が違憲であると言われると、組織に属する者としては非常に辛い。しかし、安全保障環境の変化もあり、変革を迫られ、その動きに対応しつつ、必要な組織であるとの自覚が芽生えながら、存在そのものに、憲法上、?が付けられていることへの後ろめたさも感じられた。 自衛隊がどう考えているか、あるいはどのような問題に直面しているかについて、集団的自衛権の議論から外されがちになってしまっている中、本書は、この観点について述べられている貴重な本である。ぜひ一読することをオススメしたい。
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自衛隊が、リアルな死を自覚し内在させていく過程を描く前半部と、まだ実際にはそれを経験していないからこそ身につけているだろう優しさを描く後半部が、前後逆にしてあったほうが読みやすかったかなと思うが、どうだろうか。 自衛隊の「優しさ」こそが世界に貢献できる軍隊を作るという未来は、リア...
自衛隊が、リアルな死を自覚し内在させていく過程を描く前半部と、まだ実際にはそれを経験していないからこそ身につけているだろう優しさを描く後半部が、前後逆にしてあったほうが読みやすかったかなと思うが、どうだろうか。 自衛隊の「優しさ」こそが世界に貢献できる軍隊を作るという未来は、リアリティがある。けれど、その優しさのせいで、自衛隊自身は他国の軍隊よりもずっと傷つきやすい存在になってしまいそうな気もする。経済的徴兵制は、既にある現実だと田舎に住んでいれば感じるし、そのような人達が『ロングウォーク』や『帰還兵はなぜ自殺するのか』で描かれるような辛さを抱えてしまうのはやりきれない。
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大先輩に勧められて読んだ本。 国民の目に触れないところで、 自衛隊がどう考えてきたか、 社会の変化を感じ、自らをどうしてきたか。 平時においては「要らない」と言われ、 災害があれば「出るのが遅い」「何やってるんだ」とも言われ、 それでも国のため、人のために自らを磨く人々。 ...
大先輩に勧められて読んだ本。 国民の目に触れないところで、 自衛隊がどう考えてきたか、 社会の変化を感じ、自らをどうしてきたか。 平時においては「要らない」と言われ、 災害があれば「出るのが遅い」「何やってるんだ」とも言われ、 それでも国のため、人のために自らを磨く人々。 彼らの一面を垣間見られただけでも、 この本を読んでよかったと思う。
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安保法案が国会を通過し、安倍首相は否定しているが、自衛隊がこれまで以上に危険な目にあうことは目に見えている。自衛隊員が亡くなったとき、どう弔うのかがこれから本当につきつけられるであろう。瀧野さんは防衛大を出て、新聞記者になった人である。であるから、自衛隊が日々なにを訓練しているか...
安保法案が国会を通過し、安倍首相は否定しているが、自衛隊がこれまで以上に危険な目にあうことは目に見えている。自衛隊員が亡くなったとき、どう弔うのかがこれから本当につきつけられるであろう。瀧野さんは防衛大を出て、新聞記者になった人である。であるから、自衛隊が日々なにを訓練しているかを知っているし、また知人を通してその情報をつかむことも有利な立場にある。その瀧野さんに言わせれば、自衛隊の戦後の歴史は、憲法違反という、いわば継子のような扱いの中でいかにして国民に理解してもらおうと努力してきた歴史であるし、一方で実践を経験しない軍隊としていかにしてリアルな実践体験をしてきたかの歴史であるという。実は、自衛隊は戦後少なくとも二度、戦死者を出しかねない経験をしている。その一つは能登半島沖で北朝鮮籍とおぼしき不審船を追跡し、臨検をする一歩手前まで行ったときである。その時隊員たちは防弾チョッキさえなく、ある者は週刊漫画を腹に巻いて向かおうとしたという。幸か不幸か、その不審船は一旦停止したあと、再び動き出し、国境線を越えてしまったが、もし、実際に臨検を行っていたらどうなっていたかわからなかったという。その前に沈んだ不審船からは大量の武器が見つかったそうだから。また、もう一度はイラクのサマアに復興支援に行っていたときには、少なくとも二度、危うく爆死しかねない危険に見舞われていた。それが一人の死者も出さなかったのは僥倖というしかないと言う。復興支援に行った際、一つ開けずのコンテナがあったが、それはなんと棺桶が入れられていたという。安倍さんや政府は本気でこうしたことを考えているのだろうか。
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安保法案をめぐり、もちろん憲法は国の理念を表明するとてもとても大事なものであることは言うまでもないけれど、違憲かどうかということがクローズアップされたが、論点はそれだけでいいのだろうか…そんなことを漠然と思っていた。そもそも安全保障って何なんだろう。現政権だって、戦争をしたいわけ...
安保法案をめぐり、もちろん憲法は国の理念を表明するとてもとても大事なものであることは言うまでもないけれど、違憲かどうかということがクローズアップされたが、論点はそれだけでいいのだろうか…そんなことを漠然と思っていた。そもそも安全保障って何なんだろう。現政権だって、戦争をしたいわけではないだろう。でも、世界の情勢分析が甘いというか浅いというか…きちんと総括した上での結論ではないような気がしている。だからこそ、今でも「自衛隊」というものをどう捉えていいものか、正直よくわからない。だから、今、自衛隊はどういう状況に置かれているのか、自衛隊員の関係者はどんなことを考えているのかを少しでも知りたいとこの本を手にとった。 知らないところで、究極の選択を迫られるような緊迫した判断を迫られていること、実際に派遣されて直面した危機、そして葛藤。知らない事実がいろいろあることがわかった。だからと言って、それに対応する法整備を行うべきというふうにはまだ思えない。むしろ、こんなにグレーなことがたくさんあって、それが知られていない現状で進んでいくことのほうが怖いと思った。 知らないことばかりだったけれど、でも、なんだかよくわからない読後感。筆者は何を主張したいのか、いまいちよくわからなかった。自衛隊が抱える様々な矛盾や葛藤をまずは知ってほしいということなのかな。
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防大卒の記者による自衛隊の抱える思いを伝える本。 自衛隊が何故不遇の扱いを受けているのか。そこで働いている人達はどう思っているのか。著者は自衛隊が不審船の事案や、イラクのサモアの事案を取り上げて、それまでは悪く言えばごっこ遊びだった自衛隊が、死に直面して、それに対応していこうとし...
防大卒の記者による自衛隊の抱える思いを伝える本。 自衛隊が何故不遇の扱いを受けているのか。そこで働いている人達はどう思っているのか。著者は自衛隊が不審船の事案や、イラクのサモアの事案を取り上げて、それまでは悪く言えばごっこ遊びだった自衛隊が、死に直面して、それに対応していこうとしている現状を紹介している。 自衛隊は吉田茂が創設した警察予備隊の時代から違憲状態とされていて、現在もその状態は続いている。なので自衛隊はまず国民に愛される事を願って行動しているらしい。 安倍晋三の安保関連法案の全てが自衛隊の願いかと言うとそんなことはないらしいことが滲み出ているが、本書の主眼はそこではない。法案について言う前に、口数の少ない自衛隊の思いを知るべきだと。 全ての日本国民にオススメです。
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自衛隊員はこの状況をどう捉え、何に苦悩しているのか。戦後の自衛隊はいかに変化してきたのか。防大卒の記者が、その半生をかけて自衛隊の歴史的な存在意義と現在の危機を描き尽くす。
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