石油とマネーの新・世界覇権図 の商品レビュー
石油が経済と政治にどのような影響を与えているか、わかりやすく解説している本です。 オバマ政権時代に書かれたもので、トランプ政権に代わってから中東政策がだいぶ変わりましたが、そんな今読んでも十分に役立ちます。
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2016/05/20:読了 ためになった。 この人の本は、定点観測になりそう。 また読んでみたい。
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7世紀にアラブ人が支配したウマイヤ朝は異教徒に重税を課したため、征服されたペルシア人はイスラム教に改宗したが、反体制派のシーア派を選んだ。改宗した非アラブ系のマワーリーは重税を強要されたため、シーア派による反政府運動によってウマイヤ朝は倒されてアッバース朝が成立した。 イギリス...
7世紀にアラブ人が支配したウマイヤ朝は異教徒に重税を課したため、征服されたペルシア人はイスラム教に改宗したが、反体制派のシーア派を選んだ。改宗した非アラブ系のマワーリーは重税を強要されたため、シーア派による反政府運動によってウマイヤ朝は倒されてアッバース朝が成立した。 イギリスから独立したエジプトでは、軍部が王政を打倒し、1956年に第2代大統領に就任したナセルは、汎アラブ主義を提唱し、アラブ人が国境を越えて連帯することを訴えてイスラエルと対立した。イスラエルと隣接する他の国々でも、中東戦争が繰り返されたことによって軍が肥大化して権力を握り、ナセルを真似て独裁的な手法を用いるようになった。 アメリカでは、原油の生産量のうち60%をシェールオイルが占めている。原油価格が1バレル60ドルを上回ると、採算のとれるシェールオイルの油井が多くなるため、価格上昇を抑えることになる。シェールオイルの採算基準は、数年後に40ドル程度まで下がる可能性がある。 イランの天然ガス確認埋蔵量は世界1位だが、国内には液化天然ガス(LNG)施設がなく、パイプラインもトルコとコーカサス地方にしか通じていない。パイプラインやLNG施設が建設されれば、供給量が大幅に増えることが予想される。 イラク戦争後のマリキ政権では、多数を占めるシーア派が優遇されて登用された。軍や警察に就職することが難しくなったスンニ派の若者たちは、反体制派組織に参加するようになり、スンニ派過激派によるテロが増えることになった。 アメリカでは、価格が安くなった天然ガスを用いる火力発電所の建設が進められている。コストで対抗できない原発の計画は白紙撤回されたため、技術を維持するために海外マーケットに期待している。原子力企業は、GEが日立と統合、ウェスティングハウスが東芝の傘下、三菱重工がフランスのアレバと提携しているほかは、ロシアのロスアトム、中国のCNNC、韓国の斗山重工業のみ。 2012年に発表された第3次アーミテージ・ナイレポートでは、専守防衛を解消してアメリカの防衛戦略により強く関与することや、アジア太平洋地域の安全保障におけるアメリカの役割を補完することを求めており、具体例として、尖閣諸島や南シナ海における共同監視活動、ホルムズ海峡が封鎖された場合の機雷除去、他国部隊の護衛を可能にするための法的権限の拡大をあげている。
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昨年(2015)の夏頃に中原氏によって書かれた本で、石油エネルギーの解説を中心に、世界経済について解説されています。結論としては、米国の復活の好影響を日本も享受できることになると書かれていますが、果たしてその通りになるのでしょうか。 シェールガス・オイルを取り巻く状況は目まぐる...
昨年(2015)の夏頃に中原氏によって書かれた本で、石油エネルギーの解説を中心に、世界経済について解説されています。結論としては、米国の復活の好影響を日本も享受できることになると書かれていますが、果たしてその通りになるのでしょうか。 シェールガス・オイルを取り巻く状況は目まぐるしく変わっています。この本ではその部分についても紹介されていて興味深かったです。今後の展開が楽しみですね。 以下は気になったポイントです。 ・石油メジャーは、2013年4月時点で、シェールオイルよりもシェールガスの開発に重きを置いていた。先行してシェールガスの開発を行っていた独立系採掘企業の多くが、メジャーとの競争を避けて、より利益が大きいシェールオイルに開発をシフトしていった(p19) ・シェール革命によって化石燃料の寿命はは少なくとも400-500年伸びたとされ、ピークオイル論は明確に否定された(p24) ・アジア、欧州向けの輸出拠点として、メリーランド州・ルイジアナ州・テキサス州に4つの液化天然ガス製造基地が建設中、2016-19年にかけて順次、稼働を開始する(p30) ・アメリカは、シェール資源の採掘技術の進歩により、2011年には石油の輸入比率は消費量の53%、天然ガスは8%、2012年には、石油:47%、ガス:6%と、急速に減少している(p33) ・ダウ・ケミカル、シェブロンフィリップス、エクソンモービルが、石油の代わりにシェールガスを使って、エチレンを生産するための大規模な化学コンビナートを建設中、2017-18年にかけて稼働開始。石油化学からガス化学への大転換が進行中(p35) ・アメリカのシェール革命は、資源大国といった国々を没落させることになる(p37) ・食料価格の地価には、原油価格下落の影響に加え、商品先物市場における投機マネーの縮小が大きくかかわっている(p40) ・中東における最大の対立軸は、サウジアラビアを中心とした、スンニ派諸国と、シーア派の大国、イラン(古代ペルシア帝国の末裔)との確執である(p51) ・イラン高原に住む古代のペルシア人、すなわち現在のイラン人と、イラク(メソポタミア文明)やサウジアラビアなど砂漠の地の大河流域に住むアラブ人たちとは、中東の覇権を争ってきた(p58) ・2010年に入ると、イランでの油田ガス田の開発から撤退する例が相次いだ、日本の国際石油開発帝国石油も一例(p83) ・世界の原油確認埋蔵量のトップは、ついにベネズエラ、となった。この10年間で3倍以上にも増え、世界一位とされてきたサウジアラビア(2983億バレルvs2670億バレル)を追い抜いた、採掘技術と精油技術(重質油、超重質油)の進歩により実現した(p93) ・アメリカでは原油の全生産量のうち、すでにシェールオイルが在来型油田をしのいで60%を占めるまでになっている(p97) ・シェール業界の大部分は、それまで実績のなかったベンチャーや中小企業で、既存の石油業界から見れば新参者(p100) ・2010年にエクソンモービルが410億ドルでシェールガス大手のXTOエナジーを買収した後、天然ガス価格が急落して、巨額の損失を蒙った例もある(p124) ・スタンダード石油は、1911年にアメリカ最高裁が分割を命じて、34社に分割された(p126) ・これからのエネルギー価格の長期的な低迷によって、先進国はインフレは過去の遺物となる。日本、北米、欧州の先進国では、10年以内にインフレ率ゼロが ・アメリカの狙いは、TPPと、もうひとつの広域経済協定である、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)と合体させて、世界のGDPの半分以上を占める巨大な経済圏をつくり、知的財産権などの制度づくりでアメリカが主導権を握ること(p180) ・中国でシェールガス産出ができない理由として、1)技術蓄積がない、2)ガスが存在する地層の深さがかなり深い、そして水平堀りができない(p190) ・17世紀の欧州では、キリスト教の信者たちが、カトリックとプロテスタントに分裂して戦争していた、三十年戦争。実際には、スペインの支配を逃れようとするオランダなど、民族独立の戦いという側面がある。一方では、ハプスブルク家とそれを阻止する、フランス諸国との国家間の戦争というい側面もあった(p252) 2016年1月1日作成
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1.アメリカとイランの和解で世界情勢は、大きく変わる 2.イランの制裁解除は、シエール革命並みのインパクト 3.原油価格が安くなると資源価格、農作物の価格が安く なる 4.先進国は、インフレ率が0に経済成長は加速するが 途上国、新興国は成長が見込めなくなる
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中国とアメリカと中東の国際関係と経済について、わかりやすく解説している。 イスラム教のシーア派とスンニ派との関係については、紀元前からの歴史を紐解いて教えてくれる。 語り口もクールでニュートラル。
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