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戦後労働史からみた賃金 の商品レビュー

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2018/10/24

労働や賃金の専門家(文化功労者)による、賃金に関する一考察。「能力給」を批判し、査定つき定期昇給といった「年功序列」を推奨している。精緻な研究・分析により、きわめて学術的な説得力ある内容となっている。言っていることは単純であり、わかりやすかった。 「高賃金国の生きゆく道は、英な...

労働や賃金の専門家(文化功労者)による、賃金に関する一考察。「能力給」を批判し、査定つき定期昇給といった「年功序列」を推奨している。精緻な研究・分析により、きわめて学術的な説得力ある内容となっている。言っていることは単純であり、わかりやすかった。 「高賃金国の生きゆく道は、英などの西欧や米など先行国を見定めれば、明白である。他国の地で製造業に限らず、宅配、コンビになど様々な産業で事業を行い、その地の人を雇用し、納得して働いてもらう。そこから得た収益の日本への還流こそ肝要である」pv 「複雑な社会現象を解明する王道は、他と比較することである」p4 「ホワイトカラーには定期昇給が日本以外にも多くの先進国にあり、その昇給額は査定によっている。肝心なのは、そうした方式を戦後日本企業がブルーカラーにも適用したことだ。世界にさきがけて実施したのである」p68 「一見くりかえしにみえる職務のなかで「ふだんと違った作業」、そうじて上手と下手の差を、職務評価の専門家たちがはたしてどれほどよく把握できるか。標準化を念頭におけばおくほど、むつかしくなろう。それにくらべ、その職場をあづかる管理職、職長なり課長たちのほうが、はるかに痛切にわかるだろう。こうした面倒な作業部分の判定評価は、その仕事をよく知る人の「主観的」な評価、判定以外、いったいなにがありえようか。つまり、職務評価の有無は頼りになる区分ではない、と考えざるをえない」p112 「高度な仕事は標準化できない」p113 「職務を明確にし標準化しなければ、としばしば主張される。いまもなお研究者からも主張される。それゆえ、まさに単一賃金の職務給が理想となろう。それならば、肝心の「問題」や「変化」への対応という、効率を左右する作業を見逃す。見逃すだけならばともかく、それを抹殺する。それでは競争力の核心を殺すことになる」p114 「同一年齢勤続層をとっても格差は、成果給以前に比べ成果給をいれても拡大していない、それどころか格差は減っている」p152 「目標管理制度を実施したら、各人が低い目標を設定するようになった。この傾向はどこの国の企業でも当然に起こることであろう。目標の設定は上司と話し合って決めることになっている。だが、各人が精一杯の目標を掲げたか、あるいはその実務能力に比べやや低めに設定したか、それを上司がすべて見抜けるわけではない。それこそ世界共通の経済学でいう「情報の非対称性」の典型例ではないか」p161 「(目標管理制度を導入すると)より致命的なのは、「隙間業務」をこなす人がいなくなる。職場内で誰かがこなさねばならない業務で、だれの目標にもならない業務が当然にでてくる。それをだれもこなさない」p162 「業績や仕事ぶりはなかなか数量にはあらわせない。そうであれば、数量にたよれず、仕事をよく知る上司が主観的に評価するほかあるまい」p163 「上司の査定では恣意性が残る。それはやむをえない。あとは、いかにそれを少なくするか、その方策であろう」p167 「(公開こそ恣意性を防ぐと言うが、米では公開したことにより)査定をつける上司は訴訟を恐れ、査定の差が小さくなったようだ。米のすばらしい分析のすべてが、日本よりはるかに差をつけないことを示している」p167 「定期昇給の廃止は続いており、成果主義はおさまっていない。短期すぎる視野のおそれ、そのあやうさが懸念される」p171 「輸出ではなく、海外直接投資の増大、そこからの還流が将来の日本の経済を支えるのである。それこそ国際的にみて高賃金国の生きる途である」p179 「上限下限を明記した範囲給のなかで、昇格しなくとも査定つきの定期昇給で、個人差はありながらサラリーは上がっていく。すくなくとも下がらない。おなじ仕事についていても、しだいに技能が向上するよう促すのである」p180

Posted byブクログ