ルポ過労社会 八時間労働は岩盤規制か の商品レビュー
■ホワイトカラー・エグゼンプションで想定されている年収要件の1075万円以上の給与取得者は2012年の民間給与実態統計調査によると国内で焼く172万人おり,全体の3.8%にとどまる。 ■第一次安倍政権時代ホワイトカラー・エクゼンプションの導入を要望していた経団連は,管理職の一歩手...
■ホワイトカラー・エグゼンプションで想定されている年収要件の1075万円以上の給与取得者は2012年の民間給与実態統計調査によると国内で焼く172万人おり,全体の3.8%にとどまる。 ■第一次安倍政権時代ホワイトカラー・エクゼンプションの導入を要望していた経団連は,管理職の一歩手前の年収400万円以上の労働者を対象に求めていた。 ■年収や職種といった具体的な要件を決めるのに国会の審議は必要ない。そのため,いったん決まった要件を変更するのもハードルが低い。「小さく産んで大きく育てよう」という本音をむき出しにする経済界に労働界は警戒を深めている。 ■低賃金でいつ首を切られるかわからない不安定な立場の非正規雇用の拡大は正社員にもしわ寄せが及んだ。正社員が少なくなったことで一人一人の業務量は増えますます長時間労働を強いられるようになった。 ■労働経済白書によると「卸売業・小売業・飲食店」では,1987年から2007年の間に正規雇用が53万人減少,逆に非正規雇用は354万人も増加した。 ■厚労省が警告する「過労死ライン」の月80時間以上の残業を認める協定を結んだとしても企業に罰則はない。労使の力関係で残業時間は青天井になりうる。今の日本では「残業は例外」という意識はほとんどない。 ■過労死ラインは睡眠時間から逆算している。法律で定めた一日の労働時間は8時間。食事や入浴などの生活に一日6時間費やすとして,一日の残り時間は10時間となる。月に20日間働くと仮定する。月に100時間つまり一日5時間の残業を続けると,5時間しか眠れない。5時間睡眠では疫学的に脳や心臓に負担が大きいという見解だ。厚労省から委嘱された専門医らが議論し2001年に「月80時間を超える残業」を労災認定の基準とみなした。
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2015年4月、「残業代ゼロ法案」が閣議決定され、国会に提出された。この残業代ゼロ制度とは、年収1715万円以上で高度知識を有する専門職に就く人たちを対象に、残業すれば割り増し賃金を払うという労働時間の規制を一部撤廃するというものだった。またこの案には、裁量労働制の適用拡大も盛り...
2015年4月、「残業代ゼロ法案」が閣議決定され、国会に提出された。この残業代ゼロ制度とは、年収1715万円以上で高度知識を有する専門職に就く人たちを対象に、残業すれば割り増し賃金を払うという労働時間の規制を一部撤廃するというものだった。またこの案には、裁量労働制の適用拡大も盛り込まれていた。 これをきっかけに著者は筆をとり、労働規制の緩和を検証するとともに、今の日本の労働現場の実態をリポートする、というのが本書の目的である。 2016年12月現在、おそらくこの法案は継続審議になっている模様。 本来、法律では1日に働ける時間を8時間までと定めており、それ以上働けば違法となる。例外として、経営者と労働者が合意して36協定を結べば、合意した上限時間内なら残業させることができる。 本書では、 残業代ゼロ制度の法案作成の過程に関するリポート 労働規制緩和が本当に必要かの検証 企業の36協定に見る、残業時間上限の実態 裁量労働制適用拡大や固定残業代の悪用など、労働環境の悪化の実態 労働基準監督官の実態 長時間労働脱却に向けた動き といった流れで展開されている。 日本の労働生産性は先進国の中でも低い位置にある。残業時間の上限規制撤廃によって成果に応じた自由な働き方ができ、早く帰宅することも可能になってワークライフバランスが進む、というのが国や経済界の主張であるが、むしろ逆である、というのが著者の考えだ。 私も同じ考えだ。むしろ、どうして残業時間の上限を撤廃しただけで労働生産性が上がって早く帰れるのであろうか。日々の業務の無駄を見直し、定められた時間内でなるべく終わらせようとしないと結局は残業時間が増えていってしまうのではないだろうか。 また、企業上層部がこういった長時間労働に対してどういった考えを持っているのか気になる。いわゆるブラック企業に対する風当たりが強くなった今日でも、過労死による死者は後を絶たない。過労死の労災認定がニュースになると、長時間労働を肯定するような意見が年配の方からあがってきて驚いたりもする。
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労働者サイドの立場に立ち、長時間労働の現状や問題点を描き、警鐘を鳴らす。 「労働者」といっても正規・非正規の差があるので一枚岩ではないとは思うのだけど、しっかり労働者の立場に立ち、あえて労使のコントラストを描いているのは、著者の正義感故だとは思います。
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東京新聞社会部による過労死過剰労働の現状と残業ゼロ法案成立の背景を、労働監督行政の実態を織り込みつつ、警鐘を鳴らす。 超絶ホワイト企業の社員としては他の労働者の皆様に申し訳なくなる。
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著者の真摯な姿勢がよく伝わってくる好著。読み進むごとにどうしようもない現実を突きつけられるが、過労死した家族を持つ人の同じ犠牲者を出すまいという懸命の努力が綴られる。 最後に言及される、正規か非正規かという二分法ではない限定正社員という現実的な解が示される。 間違いなく労働力不足...
著者の真摯な姿勢がよく伝わってくる好著。読み進むごとにどうしようもない現実を突きつけられるが、過労死した家族を持つ人の同じ犠牲者を出すまいという懸命の努力が綴られる。 最後に言及される、正規か非正規かという二分法ではない限定正社員という現実的な解が示される。 間違いなく労働力不足の社会になる中で、ワークライフバランスを可能にするひとつの魅力的な方法だと思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
サブロクって良く聞くけど、思ったより36協定って大事なんだね。 社員が過労死してブラック企業とは良く聞く話だよね。ワタミとか。 厚労省が認定する過労死基準は月80時間だという。 しかし36協定に制限値は無い。月200時間を36協定で決めている企業もある。 しかも、36協定を結ぶはずの代表者は会社が決めていたり、社内労働組合も会社との慣れ合いだったり。 そんな現在の労働環境は明らかにおかしいでしょう。そんな実態のルポ。 別に自分には関係ないし~今はだいたい定時退社だし~(現在の俺)という人も関係ない話ではない。 労働環境も部署ごとに違うわけだし、異動でとんでもなく忙しいところに飛ばされる可能性も無くは無いでしょう。 だいたい、個人の力に頼りきってる労働条件というのはおかしいと思うのだ。 日本の労働は属人的、海外は属職的と言われる。 最初の雇用契約なんか、日本の場合だとほっとんど見ない知らないでしょ。 社員にさせれば何でもさせることができる。 そういうローカルルール意識は、このグローバル社会にそもそも通じないと思うのだが。
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