木を食べる の商品レビュー
著者は、物理学者。ノースカロライナ州立大学終身教授 (Tenured Professor) 、応用物理学会フェロー・終身会員という物理畑の研究者だ。半導体の研究が専門。 『古代日本の超技術』『生物の超技術』を書いている。 とにかく、さまざまなことに疑問を持つ。縄文時代の技術、倒れ...
著者は、物理学者。ノースカロライナ州立大学終身教授 (Tenured Professor) 、応用物理学会フェロー・終身会員という物理畑の研究者だ。半導体の研究が専門。 『古代日本の超技術』『生物の超技術』を書いている。 とにかく、さまざまなことに疑問を持つ。縄文時代の技術、倒れない五重塔、朽ちない鉄など古代人の智慧と技術に目をみはる。法隆寺には、樹齢2000年と言われるヒノキが使われている。 そして、1000年以上生きる「木」をリスペクトする。木は地上最大、最長寿の生き物である。 なぜ、120mを超える木が水を吸い上げるのか? 根が水を押し上げる「根圧力」、「毛細管現象説」、気孔からの蒸散が水を引き上げる「蒸散説」などがあるが「蒸散によって吸水力が生じ、根から葉に至る水柱が、この吸水力と水分子同士の凝集力によって引き上げられる」というモデルが最も魅力的という。 なぜ、植物は知能が発達しなかったのか? 植物類は、生産者。動物類は消費者である。 植物は、無機物から有機物を合成することであり、同時に物理的な太陽エネルギーを化学的エネルギーに変換することである。 著者は、田村隆一の詩を挙げる。 「木は黙っているから好きだ。 木は歩いたり走ったりしないから好きだ。 木は愛とか正義とかわめかないから好きだ。 ほんとうにそうか。ほんとうにそうなのか。」 なぜ、木の葉っぱは緑なのか? 緑に見えるのは、緑を反射していることである。光の強さで言えばいちばん有利なのに、その緑を捨てて、エネルギーの小さな赤色系とエネルギーの大きな青色系を2段階に分けて使っているのか? 葉緑素の太陽光の利用の仕方は、人間の工学的センスである「効率」から考えればおかしい。 受容体は1段階の方がいいのに、そして緑を捨てているのか? 木は紅葉、黄葉、落葉をなぜするのか? 落葉は自分自身を守るための周到な智慧に基づく越冬機能である。 著者は、天竜杉のカンナクズやオガクズを見て、あまりにも美しく食べれないか?と思う。 木は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンは5:3:2となっていて、炭素化合物だ。 食物繊維は、ヒトの消化酵素により消化されない。食物に含まれている難消化性成分の総称。それが大腸内の腸内細菌がセルラーゼを持っていて短鎖脂肪酸、酪酸、プロピオン酸となって吸収される。 食物繊維の望ましい摂取量は、1日あたり成人男性で19グラム以上、成人女性で17グラム以上。 実際日本人は、木であるタラノメ、アブラナ、ウドなどを食材として食べている。それに竹であるタケノコを食べている。木を食べるのも不思議ではない。 そこで、オガクズをさらに細かくして、スーパーウッドパウダーを作る。用途に応じて数度煮沸し、滅菌、灰汁出しを行う。できたスーパーウッドパウダーを、ソーセージ、ハンバーグ、パン、ドーナツ、うどん、パスタ、各種菓子、香辛料などに混ぜるのである。2014年11月に講演で発表。 日本の文化は「木の文化、木の文明」。古事記、日本書紀に記載されている樹木の種類は、53種、27科40属に及ぶ。木の多様性の中に日本人はいた。日本神話のスサノオミコトが八岐大蛇を退治した。八岐大蛇には、背中には木々が生い茂っていた。古事記では、カズラ、ヒノキ、スギがしげり、日本書紀には、マツ、カシワがしげる。スサノオミコトは、八岐大蛇を退治した後、スギ、ヒノキ、クスノキ、マキを植林している。スサノオミコトはスギとクスノキは舟材に、ヒノキは宮殿造営用に、マキは棺桶材に使うよう示唆した。 著者は最初にグラハムベルの胸像の台座に刻まれた言葉を紹介した。 「たまには踏み固められた道から離れ、森の中へ入り込んでみよ。きっと、いままでに見たことがない何かを見つけられるはずだ」
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木を食べることについて科学的に考えられている。 食物繊維としての活用で、パウダー化して摂取することを想定。
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静岡理工科大学の教授でもともと半導体の研究をやっていた人の本です。 杉の抗菌効果について書いてあり、かんな屑と一緒にしておくとカビないとのこと。 本のメインはどう食べるかってことは全体の割合としては少なく、「木」って凄い!というのがメインですね。 食べることに関しては、粉末に...
静岡理工科大学の教授でもともと半導体の研究をやっていた人の本です。 杉の抗菌効果について書いてあり、かんな屑と一緒にしておくとカビないとのこと。 本のメインはどう食べるかってことは全体の割合としては少なく、「木」って凄い!というのがメインですね。 食べることに関しては、粉末にして灰汁抜きし、粉末を利用するもの(パン・うどんなど)と混ぜれば普通に食えるそうだ。 パンなら、50%までいれても問題ないとのこと。 簡単で金のかからない加工方法が見つかれば流行るのではないかと思う。 https://seisenudoku.seesaa.net/article/472425850.html
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どストレートなタイトルにやられた。 半導体の世界にいた著者がなぜ自然科学系の著作を持つようになったのか、というまえがきから。てっきり林業にどっぷりの人が書いたかと思ったので意外であった。 しかし、本文に入っても、なかなか木は食べられない。半分過ぎたぐらいでようやく「木は食...
どストレートなタイトルにやられた。 半導体の世界にいた著者がなぜ自然科学系の著作を持つようになったのか、というまえがきから。てっきり林業にどっぷりの人が書いたかと思ったので意外であった。 しかし、本文に入っても、なかなか木は食べられない。半分過ぎたぐらいでようやく「木は食べられる」という章が始まる。しかし、そこでも木の組成が長く語られて、なかなか食べ始めない。僕も木の情報はそこそこ知っているつもりなので、1章から2章の途中までは、今更そんなこと言われてもなあ、という内容である。 加速するのは3章からだ。美味しそうだ、と直感したカンナ屑に、お醤油をまぶしてご飯にかけてみたら…とても食べられなかった、と。 食べられる、というのは食べても害がない、というレベルであり、美味しく頂くことはできなかったのだ。しかしここで終わっては面白くない。あちこちの料理家に断られた末に、意外な出会いで木を食べる道筋が開いていく。 食べても美味しくなかった木をパウダー状にして、小麦などと混ぜる、という計画を練る。そのパウダーを使った食品、食べて美味しいか、という質問には「違和感はない」という答えで、なんともはや、という感じではあるが、捨てられるものを売れるようにする、というのは今の林業にとっては重要なことだろう。燃料と食料の綱引きはトウモロコシなどですでに起こっているが、まさか杉や檜でも起こるのだろうか。 日本の立木価格はかなり下落していて、100年育てたような木も、重量あたりでいけば大根より安い、と聞いたことがある(しかも、吉野材)。となると、加工次第では十分価格競争力のある食べ物になる、かもしれないが、あんまり食べたくないなあ。でも知人が最近杉をお茶にして飲んでいるという。本書にもそういうシーンがあった。僕はまだ木を飲んだり食べたりした経験がないが(タケノコや木の芽は食べてるが)、いずれそういう機会が来そうな気がする。日本は森林国であり、かつ放置林が相当にあるから、この木がみんな食えたら食の安全保障など怖くないぞ! なんちって。ただこういうことに補助金が大量投入されるようになると、正しさがねじ曲がっていくから要注意だ。
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