知能のパラドックス の商品レビュー
目新しい事実ばかりで面白かったが、初めのサバンナ原則を知ってしまえば後半は大体予想がつく。 偏差値のような知能とは違う「一般知能」が本書での知能だと述べられていたが、本書は概説だけだったので今後は「一般知能」についてより調べてみたいと思った
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カナザワ先生あいかわらずおもしろいなあ。いくつかほんとに問題の中心を突いてるんじゃないかというところがある。
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進化心理学の立場から、1つの説を提示している本です。進化心理学の本全般に言えることですが、これは自明であると書かれていることに対して、疑問に感じることが多くありますが、提示している説は興味深く、面白く読めるテーマが多いため、楽しく読めるでしょう。科学の本全般に言えることですが、面白く読める本は、だいたい信憑性に欠く傾向があると思います。「サバンナの原則:人間の脳は祖先の環境に存在しなかったものをよく理解できず、対応できない。」そのため、ポルノ写真とは性行為できないが、だまされて興奮してしまう。「一般知能は例外的な問題に対処するために生まれた、そのため一般知能、IQが高い人は昔からない新しいことに対して、優れていて、新しいことを好む傾向がある」という仮説を提示し、それに合った事柄をいくつか提示している。政治として保守主義は昔からあり、リベラルは新しい。だから、IQが高い人はリベラルが多い。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。僕には新しい視点を教えてくれる点でよかった。素直に本を読める人には面白い脳科学エンターテインメント本です。
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前半こそ興味深く読めたが、何でも「サバンナーIQ仮説」に絡め取って解釈しようとする後半には食傷。それに一応著者は否定しているが、結論はやっぱり「自然主義の誤謬」に陥ってないか?興味深い点も多いが全般的に「トンデモ」の香りを感じ取ってしまい楽しめず。
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進化心理学の立場から知能について書かれた本。 我々のあらゆる行動についてもっともらしい説明を与えてくれる進化心理学って一見すると正しいように思えるけれど、「まぁ、そうも言えるかも、、、」程度であることが多い。本書もツッコミどころは満載だが、小ネタとして面白い話もいくつかある。 知能の話になるとタブラ・ラサ派からの批判が多く、たとえば人間は皆、平等なのだからある集団の知能が低い、という主張はおかしいなどと言われる。IQテスト自体に文化的な差があり、それが反映されているだけだという主張がなされる。さらには知能が高い・低いと言うことすら嫌がる人たちがおり、運動知能や対人関係知能などといった多重知能というものをでっちあげて誰もが何らかの優れた知能を有しているという主張もある。 著者はこのような立場は間違っている、血圧が高い・低いということに文化的な差があるとは言わないのに、なぜ知能の話になるとそんなことを言うのかと問いかける(そりゃ、知能の高い・低いは社会経済的なステータスと相関してるから皆、過剰に反応するんだと思うが、、、) 著者は進化心理学的な理解をするためにサバンナ原則という理論を唱えている。すなわち、人間の脳の進化は現代社会にマッチしていない。たとえば、高解像度で見た他人は実際にすぐそばにいる、という状況が進化過程の大部分であったので、テレビドラマで俳優を見た時もそれが実物であるというふうに感じて感情移入してしまうのが普通だという。 ポルノを見て興奮するのもそれが生身の女性であるとどこかで錯覚している部分があるのだという。 そして知能とは、サバンナ原則に従わずに社会生活を営むための能力だという。 だから知能の高い人ほとよく運動する(サバンナで暮らしていた頃は意識せずとも運動できていた。運動のための運動が必要な現代社会に適応するためには知能が高くないと行けない)し、酒(せいぜい数千年の歴史しかない)・タバコ(数百年)・ドラッグ(数十年)のように進化的に新しい刺激に手を出すのも知能が高い人だし、クラシック音楽(人の声という古い楽器を使わない、進化的に新しい音楽)、少子、夜型などのライフスタイルもIQの高い人により多く見られる。 読後の感想としては、雑談としては面白いが、信憑性はほぼ皆無のように思った。統計学的な補正は十分に施しているとはいうものの、例えばラップやゴスペル好きよりもクラシックの方がIQが高いそうだが、これはIQよりも周辺環境の影響が大きい(教育程度の低い地域に多い)と解釈すべきだろう。他にも隠れた交絡因子がありそうな例や統計的に有意ではあっても効果はごく小さい例が多い。 ・知能は8割方は遺伝によって決まる。子供時代に劣悪な環境下にあって知能が低くなることはあっても、教育などによってもって生まれたものを凌駕するほどに知能が上昇することはない。現代社会は環境も比較的平等になっており、より一層遺伝の影響が強く現れるようになっている。 ・一般に、ある形質の遺伝率とその適応度(生存と繁殖にとっての重要性)は反比例する。適応度の高い形質は全ての個体が最終的にそれを備えるために差が出ない。知能は繁殖にとって比較的重要で「ない」たえに個体差が出ることを許される。そのため遺伝による差が出やすい。 パーソナリテイに関わる形質のほどんとは50対0対50の法則がある。50%が遺伝で共有環境(家庭内での子育ての様子など)の影響は0%、家庭外での出来事などの非共有環境が50%である。知能はこの法則の数少ない例外で、遺伝の影響が80%になる。
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知能が高い人の傾向について示した興味深い内容であるが、サバンナIQ相互作用説という仮説に立って統計的に分析をする上で、読み切れていないからかもしれないが少し無理がある気がした。ただ、進化心理学という新しい領域は非常に面白いと感じた。
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人類は160万年前から1万年前まで、ほぼ同じ環境で暮らしていた。 つまり、群れを作り協力し子孫を残すのが当たり前で、今日と同じ日が明日も続いていた訳だ。 ITの世界のドッグイヤーと呼ばれる進化の速さもさることながら、今の世の中の状況は人類にとって「異常事態」であり「不自然」...
人類は160万年前から1万年前まで、ほぼ同じ環境で暮らしていた。 つまり、群れを作り協力し子孫を残すのが当たり前で、今日と同じ日が明日も続いていた訳だ。 ITの世界のドッグイヤーと呼ばれる進化の速さもさることながら、今の世の中の状況は人類にとって「異常事態」であり「不自然」な状況だ。 そして、この本の中で書かれる知能の高い人は、なぜ「不自然」なことをするか、の不自然も同じ意味である。 知能が高い人が、普通の人が考えずに出来る友達や恋人を作ること、子供を産むことが出来ないのはそもそもの知能が高いと言う異常さゆえなのだと酷く納得できたんだけど、だけど、まぁしょうがないよね生まれつきなんだもの、と思ってしまう。
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「知能のパラドックス」サトシ・カナザワ著 久しぶりに一気に読めた本。 目次に気になる項目が多かったので楽しみにしていたが、良くも悪くもバリバリの研究者の本という感じで、グラフを示して何が何%増えたとか減ったみたいな記述ばかりで、それもはっきり証明出来ている話と、要因がわからない話が混在しているのがちょっと読みにくくはある。逆に言えば、内容は濃いといえば濃いが、結論は非常にあっさりしている。 まず、冒頭で、この本のある種の非倫理的な部分へのエクスキューズがあるのだが、「科学にとって真実以外はどうでもいい」と言い切ったり、「社会問題の解決に関心があればの話だが(私にはない)」と言ったりと、かなり科学原理主義としての立場を明確にしている。 この本を通底するテーマは、人類が進化の過程上、比較的新しく必要になったタスクに対応する能力の事を「知能(一般知能)」と呼び、知能が高い人は、そうした時として人間としてはどうでもいいことに関してのスペックが高いという話になる。 ・知能が高い人ほど、リベラルな政治思想(親族以外の人達の生活も心配する)、無神論者になりやすい。 ・知能の高い男性(女性は違う)ほど、「性的排他性」の価値観を重んじる一方で、知能の高い男性ほど不倫をし易い ・朝方人間より夜型人間の方が知能が高い ・異性愛者よりも同性愛者の方が知能が高い ・知能が高い人ほど、クラシックのような楽器演奏だけの音楽を好む ・知能の高い人ほど、お酒を良く飲み、たばこを吸い、ドラッグを使用する ・知能の高い女性ほど(男性は違う)、子供を産む数が少なく、子供のいない人生を選ぶ ・知能の高い人ほど、コーヒーを嗜み、菜食主義者が多い その他、面白いファクトとして、知能はX染色体でしか遺伝しないので、男性は娘を通じてしか自分の知能を残せないし、おなじことだが男性は母方の知能しか遺伝しない(Herrnstein and Murraay 1994. pp.307-309)。 筆者のメッセージとして、知能が高い人は繁殖率が低い事になるので、進化上不利で人生の敗者だと結論している。 先進工業国の発展段階で、平均知能が上昇したという現象を「リン-フリン効果」と言うが、栄養状態の改善がその主因と考えられている。 現在の先進国は、栄養状態は飽和しており、むしろ肥満や成人病など悪化しているとさえ言える。 こうなると、知能が高い人は子を少なく産み、知能が低い人程たくさんの子供を産むので、平均知能は低下していく。既に、一部の先進国で、平均知能が低下する兆候が現れ始めているという。
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