現代造形の哲学 の商品レビュー
20世紀以降の現代アートやデザインが投げかけている問題について、主として美学的な観点から考察をおこなっている本です。 まず、現代アートの黎明としての抽象絵画とシュルレアリスムがとりあげられ、かつての芸術の理念であった「自然の再生」という発想に対する批判の契機を見いだすことができ...
20世紀以降の現代アートやデザインが投げかけている問題について、主として美学的な観点から考察をおこなっている本です。 まず、現代アートの黎明としての抽象絵画とシュルレアリスムがとりあげられ、かつての芸術の理念であった「自然の再生」という発想に対する批判の契機を見いだすことができると論じられています。しかしその一方で、著者はハンス・アルプの「われわれは自然をコピイしたいとは思わない。われわれは再生産したいとは思わない。正に生産したいのである」という言葉を引用し、現代アートが従来とはちがった意味で実在への回帰を果たそうとしていることに注目しています。 こうした現代アートにおける実在への新たな志向と同様の発想が、現代のデザインのありかたにおいても見られるのではないかと著者は主張します。一方では、機械的生産体制がわれわれの生活を機能という観点から一元的に組織していくことを認めながらも、他方でデザインという観点からわれわれの生活空間の美的編成に可能性を見ようとしています。 具体的なデザインのありかたに触れられることはすくないのですが、美学的な観点から基本的な問題を掘り下げた論考として、おもしろく読みました。
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