描かれた日清戦争 久保田米僊『日清戦闘画報』 影印・翻刻版 の商品レビュー
43頁:絵以補之……画以助之。訓読み「絵を以てこれを補う……絵を以てこれを助く」。 ・復文のことを考えると,「絵以」と「以絵」の違いがわからなくなるので「絵以てこれを補う……画以てこれを助く」の方がいいのだろう。 48頁:書此以与焉。訓読み「之を書きて以て焉(これ)に与う」。 1...
43頁:絵以補之……画以助之。訓読み「絵を以てこれを補う……絵を以てこれを助く」。 ・復文のことを考えると,「絵以」と「以絵」の違いがわからなくなるので「絵以てこれを補う……画以てこれを助く」の方がいいのだろう。 48頁:書此以与焉。訓読み「之を書きて以て焉(これ)に与う」。 121頁:天将霊腕付僲伯。訓読み「天将に霊腕を僲伯に付し」。 ・「将」字を「まさに……せんとす」と読んでいないのは不審。「天 霊腕を将(もっ)て僲(=僊・仙)伯に付し」(天はすばらしい腕前を久保田米僊画伯に付与し【て】)ではないか。 第四句「写書貔貅斃豚兵」。訓読み「貔貅の豚兵を斃すを写き出せり」。ここも翻字と訓読が一致していない。 「書」「出」は草書では判別しがたい。これは,七言絶句なので,第三句(転句)と第四句(結句)の冒頭の二字の平仄を「●●」「○○」とする必要がある。転句が「天(下平)将(下平)」なので,結句は仄韻(上声/去声/入声)が基本である。すると「書」字は(上平)なので,平仄が合わなくなる。したがって,書いてあるのは「出」字(入声)だと思われる。 天(下平)将(下平)霊腕付僲伯 写(上声)書(上平)/出(入声)貔貅斃豚兵 この七言絶句の第四句の主語は第三句につづいて「天」で「貔貅の豚兵を斃すを写(うつ)し出(い)ださしむ/写出せしむ」(【天が久保田米僊に】勇猛な戦士が豚兵をたおすところを描かせた)。 232頁:今之画師。訓読み「今の画将の」。 346頁:斯(こ)の兵有りて而して斯の画の好(よ)き有り。/因って戦功は無窮に伝わらん。 ・字数から考えると, 皇国之兵洵忠勇(皇国の兵は洵【まこと】に忠勇) 米翁之画極精工(米翁の画は極めて精工) 有斯兵而有斯画 好因戦功伝無窮 のはず。「斯の兵有りて斯の画有り」で,「有斯兵」と「有斯画」が対になっている。 「好」は下文に属すと思う。とすると,「因」は「同」字ではないかと思う。「好く戦功を同じくして/同(とも)にして無窮に伝えん」。
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