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地平線の彼方から の商品レビュー

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2016/01/16

ドキュメンタリー写真家・野町和嘉の40余年のキャリアの代表作から最新作までの96点の写真に、28篇のエッセイを加えた作品。野町氏は土門拳賞、芸術選奨新人賞、紫綬褒章(2009年)などを受賞している。 私は、たまたま本屋で本書を手に取るまで、不覚にも野町氏を知らなかったが、その写真...

ドキュメンタリー写真家・野町和嘉の40余年のキャリアの代表作から最新作までの96点の写真に、28篇のエッセイを加えた作品。野町氏は土門拳賞、芸術選奨新人賞、紫綬褒章(2009年)などを受賞している。 私は、たまたま本屋で本書を手に取るまで、不覚にも野町氏を知らなかったが、その写真のクオリティの高さ・美しさに驚いた。 野町氏のカバーする場所は、アフリカの乾燥地帯、アラビア半島、チベット、アンデス、ガンジス川等で、テーマは、そこに生きる人々の豊饒な民族文化と多様な宗教である。 本書には、サハラ砂漠とそこで何百年に亘って変わらぬ生活を送る民族とキャラバン、エチオピアの高原に残る原始キリスト教の世界、16億ムスリムの中心メッカの百万人による夜を徹したライラトル・カドルの礼拝、平均標高4,500mの高地チベットの聖域巡礼、ガンジス川のインド最大の沐浴祭クンブ・メーラ、標高5,000mの谷あいの教会で行われるアンデス最大の巡礼コイユリーテ等の、息を呑むような数々の写真が収められている。中でも、異教徒禁断の地メッカ(とメディナ)の作品は、野町氏の高い技術を信頼し「写真集を作りたいので撮影を依頼したい」という見知らぬムスリムからの要請に基づき、自らムスリムに改宗して撮影した、希少かつ驚くべきスケールの作品である。 エッセイは、写真の背景を淡々と綴っており、写真の理解を助けるものとなっている。 野町氏の作品に手軽に触れられる、ベスト作品集とも言える素晴らしい一冊である。 (2015年8月了)

Posted byブクログ