戦中と戦後の間 の商品レビュー
みすず書房 丸山真男 「 戦中と戦後の間 」 1936年から1957年の論稿集 明治国家建設や日清日露戦争下の政治体制から 戦後を振り返る内容は 興味深い。再読したい論稿は *明治国家の思想(征韓論含む) *ファシズム各論 *戦争責任論の盲点など 最後に「どうやら予定の枚...
みすず書房 丸山真男 「 戦中と戦後の間 」 1936年から1957年の論稿集 明治国家建設や日清日露戦争下の政治体制から 戦後を振り返る内容は 興味深い。再読したい論稿は *明治国家の思想(征韓論含む) *ファシズム各論 *戦争責任論の盲点など 最後に「どうやら予定の枚数にこぎつけた様です。S君、こんなものでも雑誌に載りますか。採否は一切おまかせします」と書かれたエッセイ、若い人へのメッセージ、EHノーマンへの追悼文、結核療養の話など政治学以外の文章も面白い オルダスハックスレーと内村鑑三の非戦論は 読んでみたい ☆オルダスハックスレー 「目的と手段」 目的は決して手段を神聖にしない〜自由社会のため独裁を容認するコミュニズム、戦争をなくすための戦争、デモクラシーのための戦争という考えは、すべて自己矛盾であり、現実的には支配者の弁護に堕する ☆内村鑑三と非戦の論理 内村鑑三 「世界の平和は如何にして来るか」 戦争は他の何かをもたらすことがあろうと平和だけはもたらさない、戦争が戦争を止めた例は一つもない、戦争は戦争を生む〜軍備は平和を保障しない、戦争を保証する ☆明治国家の思想 明治国家は、尊王攘夷論(国権論)と公議政体論(民権論)の二つの要素の対立の統一 尊王論は 政治力を中央に集中する原理(政治的頂点への集中) 対外的に国権拡張(国権論)となって発展していく 公議政体論は 政治的拡大の原理(政治的底辺への拡大) 自由民権へと発展し、憲法制定に至る 征韓論の目的 *旧武士階級の失業救済 *不平等条約打破のための国威発揚 *ヨーロッパの東亜進出を食い止める *ヨーロッパ帝国主義の小型の模倣 *国外に問題を起こして、それを契機に国内改造をやる 国際関係は弱肉強食の世の中であり、万国公法は強い国が 弱い国を恐嚇する手段にすぎない ☆ファシズム いずれの国も、市民社会の存続を犠牲として民主化を進めるか、立憲機構を破壊して市民社会を救い出すかのジレンマに押しつめられ、ファシズム独裁が成立する ファシズムは、中間層の運動として出発して、独占資本の極度に合理化された寡頭支配形態に落ち着く歴史的な宿命を担っている ファシズム国家観の出発点は、常に民族ないしは国民である〜ナチスは民族の純粋性を主張し、イタリアファシズムは種族的な混合を容認する ファシズムは、自由民主政から民族主義と帝国主義をそっくり借りてきて、人道主義をはぎとり、真裸のまま全世界にふりまわした ファシズム的抑圧の特質 *反対勢力の圧服が目的化した組織が絶対化される *バラバラな個人をマスに再組織する〜人間を等質的なマスに解体し、マスで作られた社会組織をセメント のように固める 「自由は異端・異質を排除することであり、同質者の間だけで自由が認められる」 ☆戦争責任論の盲点 少なくとも中国の生命、財産、文化の破壊に対して国民は共同責任を免れない 日本はドイツのように政治的民主主義の地盤の上にファシズムが権力が握ったのではないから、一般国民の政治的責任はそれだけ軽いが、ファシズム支配に黙従した道徳的責任まで解除されない
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