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安全という幻想 の商品レビュー

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2022/09/05

当時「薬害AIDS」問題として大きく取り上げられていた問題の当事者の回顧録的な一冊。死期を悟ったタイミングで書かれた本であり、裁判記録等を振り返り、事実を伝えたいという思いが滲んでいる。個人的には、情報も知識もない中で、著者を一方的に擁護する立場は取れないが、それでも当時のマスコ...

当時「薬害AIDS」問題として大きく取り上げられていた問題の当事者の回顧録的な一冊。死期を悟ったタイミングで書かれた本であり、裁判記録等を振り返り、事実を伝えたいという思いが滲んでいる。個人的には、情報も知識もない中で、著者を一方的に擁護する立場は取れないが、それでも当時のマスコミや政府(特に厚生大臣や総理を歴任した菅直人氏)の一方的な決めつけや、生贄を差し出すような言動には辟易する。ビジネスの世界でよく日本人は個人で責任を取ろうとしない民族と言われるが、何か起こった時に組織ではなく個人に責任を負わせ、腹を切らせて幕引きを図るのは昔からの悪き伝統なのだろうか。それにしても、当時問題となった製剤は、別の患者にとっては死を免れるほとんど唯一の解決策だったものであり、そのメリットとリスクを正しく評価し判断することは誰にできただろうか。今コロナ禍でも同じような判断を迫られていることもあるし、医療に限らず今度もこういったことが起こるだろう。マスコミや政府、企業、エセ科学者の言説に惑わされないようにしたいものだ。

Posted byブクログ

2022/05/21

1985年帝京大学の外来担当医が手首関節の出血で来院した血友病患者へ非加熱濃縮製剤を投与したことが原因で患者がエイズで死亡した 帝京大学の第一内科長の安部医師は業務上過失致死で起訴された 5年に及ぶ裁判で無罪となった ・当時の血友病患者にとっては福音とされていた製剤がHIV感染...

1985年帝京大学の外来担当医が手首関節の出血で来院した血友病患者へ非加熱濃縮製剤を投与したことが原因で患者がエイズで死亡した 帝京大学の第一内科長の安部医師は業務上過失致死で起訴された 5年に及ぶ裁判で無罪となった ・当時の血友病患者にとっては福音とされていた製剤がHIV感染を引き起こした ・真実がわからない、また不確実な中で現場では進めざるを得ない医療がある ・そんな中、真実を追求するのではなく、個人に責任を転換する形で和解とされた ・ジャーナリズムの人権を無視した個人攻撃、犯人探しが正義となった どうすれば良かったのか 自分の中では答えがない 真実を追求するシステム作りが必要か

Posted byブクログ

2021/04/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 東大医学部卒の著者が厚労省生物製剤課長を務めた1982−84年、まさに米国から血液製剤によってHIV/AIDSがもたらされた。  未知の病原体に対する科学者の見解、非加熱製剤投与者や同性愛者に発生する免疫不全と死、血友病患者への非加熱製剤の投与の是非などに絡む関係者の様子が詳細に綴られ、渦中において不確定的な知見しか持ち得ない状況の中での意思決定の難しさを切々と語っている。  本書は2015年に刊行され、著書は国民や政治家、ジャーナリストのポピュリズムへの傾倒について警鐘を鳴らしているが、図らずも、この数年で世界にポリュリズム政党の躍進を見ている。  著者は本書の刊行後数ヶ月で逝去された。

Posted byブクログ