ネアンデルタール人は私たちと交配した の商品レビュー
最近,古代人類のDNAの研究が熱い。 長い間,古代人のDNA解析は,細胞内に大量にあるミトコンドリアに関するものに限られてきた。その成果でさえ,欧州の母系祖先として7人のミトコンドリアイブが同定されたり,日本人の母系祖先が様々なルートで日本列島に流入してきたことが推察されたりする...
最近,古代人類のDNAの研究が熱い。 長い間,古代人のDNA解析は,細胞内に大量にあるミトコンドリアに関するものに限られてきた。その成果でさえ,欧州の母系祖先として7人のミトコンドリアイブが同定されたり,日本人の母系祖先が様々なルートで日本列島に流入してきたことが推察されたりするなど,とても知的刺激に溢れていたのだが,一方で,ミトコンドリアDNAからは,我々サピエンスとネアンデルタール人とが交配した証拠は見つからなかった。古代の核のDNAについては,映画ジュラシックパークの後,琥珀の中や化石の中から何万年どころか何千万年も前のDNAを抽出して塩基配列が分かったという論文が,雨後の竹の子のように世界中から何本も出たが,後になってどれもみな間違いであることが判明した。そのような喧噪の中,本書の著者ペーボ教授は,世間から距離を取り,「ズルをせず」,極めて地道に古代の核のDNAの抽出に取り組んだ結果,試行錯誤の苦労の末の大逆転として,ついに4万年前のネアンデルタール人のDNAの解析に成功したのである。驚くべきことに,ネアンデルタール人のDNAは非アフリカ人を除くサピエンスすべてに数パーセント共有されており,アフリカを出たサピエンスが中東でネアンデルタール人の遺伝子を取り込んで世界中に広がっていったことが分かった。 この回想録では,そうした科学上の成果だけでなく,研究者としての野心や他の研究者との論文発表を巡る駆け引き,さらには自身がバイセクシュアルであることやノーベル賞受賞者である父親の愛人生活などの私生活までが赤裸々に書かれていて,下手な小説を読むよりはるかに面白い。 また,本書の最後には,著者がネアンデルタール人の次に取り組んだユーラシアのデニソワ人に関する研究の初期の成果が紹介されている。デニソワ人はネアンデルタール人に近縁な別の人類で,やはりネアンデルタール人やアジアのサピエンスと交配していたことを明らかにしたのだが,本書の刊行後の最近の研究では,チベット高地人の高地順応遺伝子は,突然変異と淘汰の結果ではなく,デニソワ人から取り込んだものだと判明したほか,しかし,デニソワ人のゲノムはネアンデルタール人のゲノムよりもサピエンスのゲノムとの違いが大きいことから,デニソワ人と交配した未知のホモ属がいる可能性があるなど,当分は古代人類のゲノム解析から目が離せそうにない。 mak 図書館蔵書なし
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ネアンデルタール人のDNAを幾多の困難を乗り越えて解読した著者の自叙伝。タイトルから想像してた内容とはちょっと違っていた。 初めから1/3くらいはちょっと退屈だったし、遺伝子工学、DNA等の専門知識がないと理解できないところが多い。しかし、次々と出てくる課題をチームで知恵を絞っ...
ネアンデルタール人のDNAを幾多の困難を乗り越えて解読した著者の自叙伝。タイトルから想像してた内容とはちょっと違っていた。 初めから1/3くらいはちょっと退屈だったし、遺伝子工学、DNA等の専門知識がないと理解できないところが多い。しかし、次々と出てくる課題をチームで知恵を絞って、ズルをせず地道に正直に研究を進めていく過程は読み応えがあり、最後に花開くところはわくわくして、全体としてはおもしろかった。 けっきょく我々のDNAの数%はネアンデルタール人に由来していることをつきとめて、それがタイトルになっている。
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ネットで見かけて。 9割ぐらいの部分はわかっていない。 ネアンデルタール人と現生人類が交配した、結論付けるまでのDNA解析の進歩や研究の過程が描かれている。 かなり噛み砕いて書いてあるのはわかるが、 それでももう少し面白い部分を増やしてくれないと、難しくて読んで理解する気になら...
ネットで見かけて。 9割ぐらいの部分はわかっていない。 ネアンデルタール人と現生人類が交配した、結論付けるまでのDNA解析の進歩や研究の過程が描かれている。 かなり噛み砕いて書いてあるのはわかるが、 それでももう少し面白い部分を増やしてくれないと、難しくて読んで理解する気にならない。 古代の標本からDNAを抽出するために、こっそりオーブンで子牛のレバーのミイラ作りをして、ラボの人々に臭いとばれてしまった話とか、著者の結婚に至る話とか、毎年自分はネアンデルタール人じゃないかと思うという手紙が届く話とか。 ネアンデルタール人から現生人類へDNAが流れ込んだ、つまり二つの集団が出会った時ネアンデルタール人の方が優勢な集団だったという説明の際に、ネアンデルタール人は結果として滅亡したので優勢とは思えないかもしれないが、という断り書きがあった。 いやいや、骨格標本をみたら、どうみてもがっちりとした体形のネアンデルタール人の方が優勢でしょ。 比較して貧弱な体形の現生人類が生き残ったのは、様々な偶然が積み重なった結果なのだと思う。 現生人類がネアンデルタール人と遭遇した時、ネアンデルタール人はすでにアフリカの外で20万年以上暮らしていたため、アフリカには存在しないヨーロッパ特有の病気に対抗できるDNAを有し、それを受け継いだ現生人類は生き延びやすくなったのではないか、と書かれていたが、そういう幸運をつかんできただけではないのかと。
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半分は自叙伝ということで、著者の生き方、-30年に及ぶ研究人生の挫折や困難と名誉の獲得など-、に興味あればよく読めばいい。私は、ネアンデルタール人とホモサピエンスが交配したという事象とその科学的根拠、また交配の結果何がもたらされたかが知りたかった。 女性にしか伝えられず、約1.6万のヌクレオチドからなるmtDNAではなく、性別に関係なく子孫に伝わり、30億以上のヌクレオチドからなる核DNAに科学的証拠を求め、パイロシーケンス法によって核DNAの塩基配列を解析できたことで、ネアンデルタール人とホモサピエンスが交配したことが証明された。結果として何がもたらされたかまでは書いていなかった(と思う)が、そこは自分で考えようと思う。これ以上は情報量が多すぎて記憶できないので、割愛。
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ネアンデルタール人に全く興味が無いというか交雑してようがしてまいがどうだっていいじゃないか、というような人には退屈極まりない本です。 しかし人の影響で汚染されていない純粋なDNAを採取するための偏執的な取り組みと検証システム構築については頭が下がるというか、想像するだに吐き気がす...
ネアンデルタール人に全く興味が無いというか交雑してようがしてまいがどうだっていいじゃないか、というような人には退屈極まりない本です。 しかし人の影響で汚染されていない純粋なDNAを採取するための偏執的な取り組みと検証システム構築については頭が下がるというか、想像するだに吐き気がする。
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2016年のベスト。 運とテクノロジーと人と根気を使ってネアンデルタール人のゲノムを読み取った生物学者の道のりと半生を記す。まず著者がバイセクシュアルでノーベル賞受賞者の婚外子だという話もさらりと出てくるところが面白いが、何より色んな人と関わり合い、試料を探し出し、最新の技術を使...
2016年のベスト。 運とテクノロジーと人と根気を使ってネアンデルタール人のゲノムを読み取った生物学者の道のりと半生を記す。まず著者がバイセクシュアルでノーベル賞受賞者の婚外子だという話もさらりと出てくるところが面白いが、何より色んな人と関わり合い、試料を探し出し、最新の技術を使い、分析して、既存の概念に挑みネアンデルタール人のゲノムを読み出すことに成功するその学者冥利につきる半生を追体験できるのが痛快である。
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著者スヴァンテ・ペーボはスウェーデン人の分子古生物学者。彼とその仲間たちはネアンデルタール人のゲノムを明らかにし、私たち現生人類のゲノムの中に、ネアンデルタール人の遺伝子が入っていることを突き止めたのである。 彼が新たな研究分野を確立するために組織を一から作り上げていく苦闘も描...
著者スヴァンテ・ペーボはスウェーデン人の分子古生物学者。彼とその仲間たちはネアンデルタール人のゲノムを明らかにし、私たち現生人類のゲノムの中に、ネアンデルタール人の遺伝子が入っていることを突き止めたのである。 彼が新たな研究分野を確立するために組織を一から作り上げていく苦闘も描かれている。加えて、同性愛者であった著者が同僚研究者の妻に恋をしてしまい略奪してしまう話もあったりと、もはや単なるサイエンス本ではない。情熱あふれる著者の一代記である。
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「ジュラシックパーク」が上映された頃は、何千万年前の化石から恐竜のDNAが採取されたことが話題になったが、DNAは極めて変質、分解しやすく、恐竜のものの採取は不可能というのが最近の常識らしい。 当時「採取」されたのは、混入した他の(もしかすると採取した研究者本人の)DNAだったの...
「ジュラシックパーク」が上映された頃は、何千万年前の化石から恐竜のDNAが採取されたことが話題になったが、DNAは極めて変質、分解しやすく、恐竜のものの採取は不可能というのが最近の常識らしい。 当時「採取」されたのは、混入した他の(もしかすると採取した研究者本人の)DNAだったのだろう。 本書には、こういった「汚染」を除去しながら、前人が試みなかったミイラや化石からのDNA取得とゲノム情報解析を著者(とそのグループ)が、数多の困難を乗り越えていかに実現したかの、30年にわたる苦闘の歴史が記されている。 それだけでも感嘆するに余りあるのだが、本書には著者の性的嗜好というかジェンダー傾向も隠さず書かれていて、ゲイを自覚しパートナーもいた著者が、既婚女性との恋愛の末結婚し、子供も授かったのだという。 その明け広げ度合いというか、認知され度合いにも感嘆するのである。
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これこそが、わたしが25年にわたって夢見てきた成果だった。数十年にわたって議論されてきた、人類の起源にまつわる重大な謎を解く証拠を、わたしたちは手にしたのだ。そしてその答えは予想外のものだった。現代人のゲノムの情報のすべてがアフリカの祖先に遡るわけではないと、それは語り、わたしの師であるアラン・ウィルソンが主な提唱者である厳格な出アフリカ説を否定したのである。それはまた、わたしが真実と信じていたことも否定した。ネアンデルタール人は完全に絶滅したわけではない。彼らのDNAは現代の人々の中に生きているのだ。 (中略)わたしたちが発見した結果では、ネアンデルタール人はヨーロッパ人だけでなく、中国やパプアニューギニアの人々にもDNAを伝えていた。なぜこんなことが起きたのだろう?わたしは考えが定まらないまま、机上の整理を始めた。最初はゆっくりとだったが、次第に勢いづき、古いプロジェクトのがらくたを次々に捨てていった。机上にたまっていた埃が宙に舞う。新しい章の始まりだ。机をきれいにしなければ。(pp.264-5) マイクは、この他者の注意を何かに向けようとする衝動を、発達段階の初期に現れる認知特性のひとつで、人間に固有のものだとしている。それは、心理学者が「心の理論」とよぶ、他者が自分とは異なる心(認識・知覚など)を持つことを理解し始めた兆候である。に逃げんが巨大で複雑な社会を誕生させたのは、社会活動、他者の操作、政治的駆け引き、団結といったことに秀でていたからだが、そうした能力が、人の立場、政治的駆け引き、団結といった興味を操作できるというこの特性から生まれたことは、想像に難くない。マイクのグループが突き止めたこの特性は、現生人類が、類人猿や、ネアンデルタール人などの絶滅した他の人類と異なる道をたどる根本的な要因になったものだと、わたしは考えている。(p.286)
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我々の中にネアンデルタール人のDNAが残っいる・・その事実については、まあだからどうした、というくらいの感想しかないのであるが、その事実を明らかにする過程がスリリングである。というか、真の科学者というのはここまで「科学」に対して誠実であることができるのだということに感動した。。...
我々の中にネアンデルタール人のDNAが残っいる・・その事実については、まあだからどうした、というくらいの感想しかないのであるが、その事実を明らかにする過程がスリリングである。というか、真の科学者というのはここまで「科学」に対して誠実であることができるのだということに感動した。。 掘り出された古代のDNAにはすでに現代の微生物や人のDNAが混入している。それらから目的のDNAだけを取り出し、増幅する。だが、目的のDNAだと思ったものがやはり混入した現代人のDNAだったりする。様々な設備や装置や仕組みを自ら開発し、2重3重のチェックを自らに課し、そしてたぶん科学ではもっとも重要なことの一つ「再現性」に徹底的に拘っていく。そうして、長い長い道のりを経て真実を明らかにするのである。 その間に、ライバルたちは数万年どころか恐竜のDNAまで解析したと、サイエンスやネイチャーなどの有名な雑誌に発表していく。しかしそれらはすべて、科学的には不誠実な態度で、再現性もなく、実際に間違っていた。メジャーな科学雑誌もまた、実は「科学」に忠実というよりも商業主義的なのである。正しい道を歩んているという自覚と自信があっても、それはそれは苦しいものだったに違いない(と、著者も言っている)。 読んでいる間じゅう、STAP細胞を巡る「捏造の科学者」(文藝春秋)を思い出していた。小保方さんや笠井さんが、スヴァンテ・ペーポほどに「科学」に対して誠実に向き合い、つまり「再現性」に謙虚に向き合う勇気があったなら、そしてスヴァンテ・ペーポがすでに喝破していたように著名な科学雑誌が極めて商業主義的であることを理解していたなら、あの事件は起こらなかったに違いないと。
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