検証「イスラム国」人質事件 の商品レビュー
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検証 「イスラム国」人質事件 単行本 – 2015/6/27 日本政府の対応は果たしてよりマシなものだったのかどうか・・・ 2015年12月21日記述 イスラム国(IS)による後藤健二氏、湯川遥菜氏殺害事件に関する 朝日新聞の連載を元に更に加筆した本。 2015年の頭にこういった事件があった。 厳密にはまだ1年経過していない。 ちょうど年末で年を振り返る番組も多い。 しかしこのイスラム国人質事件を報じている番組は残念ながら極めて少ない。 自分も断片的な報道で知っている程度だった。 背景や分析までしている時間は無かった。 だから本書は貴重だ。 本事件は湯川遥菜氏の経緯、言動が意味不明な点も多かった。 その事もマイナスの影響を与えていると思う。 また後藤健二氏の母である石堂 順子氏の言動も理解しがたいものが多く、その辺りもこの事件の理解が世の中に浸透しない遠因になっているように思う。 その意味不明な点があることは踏まえてそれ以外にこの時間の経緯や有識者による検証委員会の報告は適切かどうか考えるのに本書は最適だろう。 後藤健二氏の妻がイスラム国とかなり重要な交渉をしていた事は知らなかった。 日本政府が非公式にでも身代金を払う考えがあればかなり違う結果になったかもしれない。 特に後藤氏はできれば助けだしたいと思える人物であったと思う。 本書でも紹介されているが、事件後の有識者による報告書には違和感が残る。 これだけ知らばそう思うしかない事件なのだ。 有識者会議は色々な場面で登場する時代だ。 しかし正確な事を言えば単なる御用学者か何かの集まりでしかない。 本書ではジハーディジョンの経歴も追っていて勉強になる。
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【由来】 ・多分、図書館の岩波アラート 【期待したもの】 ・朝日だけど岩波って辺りに信憑性の高さを感じたのだが。 【要約】 ・ 【ノート】 ・当時イスラム国人質事件に関わった国内外の朝日新聞の記者達が当時の記録や、その後の取材活動をまとめ上げたもの。総じて、官邸の対応につ...
【由来】 ・多分、図書館の岩波アラート 【期待したもの】 ・朝日だけど岩波って辺りに信憑性の高さを感じたのだが。 【要約】 ・ 【ノート】 ・当時イスラム国人質事件に関わった国内外の朝日新聞の記者達が当時の記録や、その後の取材活動をまとめ上げたもの。総じて、官邸の対応については直接的な批判を避け、事実をして淡々と語らしめるという体裁を取っている。 ・事件後に政府は有識者による事件お検証を行ったが、お手盛り感が強い。 ・後藤さんと湯川さんがISに囚えられていることを知っていながら安倍首相が中東において挑発的と取られても仕方がない言い回しを不不用意にした。 ・ISとの交渉に、ブラック感アリとは言え、パイプが強いトルコを頼らずにヨルダンを頼った。 ・ISとの直接交渉は後藤さんの奥さんだけが行い、日本政府は一切関与しなかった。奥さんは、後藤さんが入っていた紛争地域に赴くジャーナリスト用の結構高い保険(1日10万程度で、掛け捨て)を使って、これも後藤さんが築き上げた人脈から、オーストラリアのコンサルタントに依頼して、ISとの交渉を行っていた。 ・なお、ISから後藤さんの奥さんに宛てた最初のメールは迷惑メール扱いで気づかれなかったという。 【目次】 第1章 湯川さんの拘束 第2章 後藤さんのシリア入り 第3章 妻へのメール 第4章 中東の悪夢 第5章 翻弄 第6章 渦中のヨルダン 第7章 連鎖する死 第8章 幕引き
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始まりは2014年8月の湯川遥菜さんの拘束事件だった。続いて フリージャーナリストの後藤健二さんがイスラム国に拘束された。 年が明けて2015年1月、日本国首相・安倍晋三の中東訪問中に イスラム国は拘束した二人の日本の身代金を要求する動画を 公開した。 多くの人が成...
始まりは2014年8月の湯川遥菜さんの拘束事件だった。続いて フリージャーナリストの後藤健二さんがイスラム国に拘束された。 年が明けて2015年1月、日本国首相・安倍晋三の中東訪問中に イスラム国は拘束した二人の日本の身代金を要求する動画を 公開した。 多くの人が成り行きを見守った事件は、ふたりの殺害という最悪の 結果で幕を閉じた。 本書は朝日新聞に掲載された検証記事に加筆して書籍化した作品 なのだが、「検証」と冠した割には中途半端と言うか、腰が引けている 感じなんだよな。 吉田調書とか慰安婦報道とか、いろいろと立て続けにあったから かしらね。朝日新聞の名を失念するほどに、甘々だよ。 湯川さんがシリアへ渡航するところから、事件後の有識者による 検証委員会の報告まで。時系列で追うにはいいんだけどね。 記者による検証部分が「政府も頑張っていたんですよ」みたいな トーンになっているのを補う為か。対テロ・資金洗浄問題コンサル タントのロレッタ・ナポリオーニ氏と現代イスラム研究センター 理事長の宮田律氏のインタビューを通して政府批判をしている。 ちょっとずるいかな。 この事件を振り返る為に本書を読んだのだが、思うに日本政府は 端からふたりを助ける気なんてなかったんだと思う。だって、外務省 は後藤さんに対して「渡航をあきらめるよう説得したが、聞き入れて もらえなかった」と強調しているのだもの。 それに事件が明らかになった時と、ふたりの殺害後の安倍の勇ましい が中身空っぽの声明。あらゆる可能性を探っていたと言うのであれば、 イスラム国にパイプのあった中田考氏や常岡浩介氏がいたでは ないか。 そもそも湯川さんが拘束された時点でイスラム国だと分かっていた はずなのに、動画が公開されるまでふたりを拘束した組織が分からな かったって言い訳はなんだ? ヨルダンに現地対策本部を置いたのは、ヨルダン情報部がアメリカの CIAと緊密な関係があるからだろう。過去の人質解放の実績を考慮 したら、頼るべきはヨルダンではなくトルコであったはずだ。 「いろいろやってるんですよ」とポーズを見せただけで、実質、なんの 情報も得られていなかったのだろうな。まぁ、「どんな情報収集活動 をしてきたのか」と政府に問うても、「それは特定秘密です」って逃げる んだろうけれど。 もし、テロ組織といわれる集団に拘束されたのが企業の海外駐在員 や外交官だったら、違った結果になったんじゃないのかね?安倍晋三。 日本政府に見殺しにされた、湯川さんと後藤さんのご冥福を祈る。
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湯川さんと後藤さんの事件を検証する本。後から振り返ってみると少なくともリシャウィとの交換を要求してきたところら辺からイスラーム国側に交渉するつもりはなかったのかなと思う。当事者たる能力を持たなかった日本だけど、中東回ってからの安倍首相の会見なんかは不用意だったのかも知れない。
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2015年1-2月に表面化した「イスラム国」(IS)による日本人人質殺害事件の事実経過を検証した書。1月20日の身代金要求の映像公開前から、後藤健二の妻とISのメールによる交渉を関知していながら、「テロリストとは交渉しない」という建前に教条的に拘束されて何もしなかったこと、中東...
2015年1-2月に表面化した「イスラム国」(IS)による日本人人質殺害事件の事実経過を検証した書。1月20日の身代金要求の映像公開前から、後藤健二の妻とISのメールによる交渉を関知していながら、「テロリストとは交渉しない」という建前に教条的に拘束されて何もしなかったこと、中東諸国歴訪で不用意にIS対策と明示して資金拠出したこと、有志連合の対IS空爆に参加して捕虜交換交渉の難題を抱えるヨルダンに依存したことなど、安倍政権の失態を明確に暴いている。政府関係者や人質関係者のガードが固い中で、できるだけ綿密な取材を行っており、現時点でこの事件の経緯を知る上で最適な本であろう。イタリアのテロ対策コンサルタントのロレッタ・ナポリオーニとイスラム現代政治研究者の宮田律のインタビューも非常に有益である。
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