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昭和陸軍全史(3) の商品レビュー

4.4

10件のお客様レビュー

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2020/03/26

満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争と、様々な覇権争いが見られた。宇垣一成と一夕会、皇道派と永田鉄山、永田亡き後の石原莞爾と武藤章、武藤章と田中新一。内部抗争を繰り返し、積極派がさらなる積極派に駆逐されていく。方針が破綻をきたし、限界を超えた時に収集をつけられるものが誰もおらず、...

満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争と、様々な覇権争いが見られた。宇垣一成と一夕会、皇道派と永田鉄山、永田亡き後の石原莞爾と武藤章、武藤章と田中新一。内部抗争を繰り返し、積極派がさらなる積極派に駆逐されていく。方針が破綻をきたし、限界を超えた時に収集をつけられるものが誰もおらず、破滅する。元老がいなくなり、政党政治も崩壊に追い込まれる。後継首班が決まらずに組織が複雑化し、利害関係も重なり、意思決定機構が構築できない。帝国は統制派が破壊したのだ。そして自ら自滅した。

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2018/04/03

全三冊!長かった。 昭和の世界対戦を、陸軍の視点から解剖する本。 とにかく情報量が多くて読むのけっこう大変でした(*_*)けど、読んで本当に良かった!!陸軍内の派閥争いが戦争をどのように助長させたのか。また、参謀本部と陸軍省との政治的対立とかも、興味深い。 どうして、日本は、勝ち...

全三冊!長かった。 昭和の世界対戦を、陸軍の視点から解剖する本。 とにかく情報量が多くて読むのけっこう大変でした(*_*)けど、読んで本当に良かった!!陸軍内の派閥争いが戦争をどのように助長させたのか。また、参謀本部と陸軍省との政治的対立とかも、興味深い。 どうして、日本は、勝ち目のない戦争へと突入したのか。WW2における日本の目的は、イギリスをアジア圏から追い出す(植民地支配を止めさせる)ためだった、とか、 アメリカVS日本 は本当は是が非でも回避したかったけど、日独伊、三国協定とロシアが絡んだ複雑な経緯によって、仕方なくそうなってしまった、、とか ちょっと感想がうまくまとまらないんですが(すみません)、昭和の戦争史を学びたい方は絶対に読んだ方がいい!と思います。

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2016/03/06

日米開戦に至るまでの軌跡のひとつとして、 陸軍内部でどのような議論が行われたのかが、 克明に描かれている。 とりわけ、大きなポイントとして、 武藤章軍務局長と田中新一作戦部長との意見対立の存在を、 著者は指摘しているが、いずれも日米開戦回避では一致していたのだ。 明らかにズル...

日米開戦に至るまでの軌跡のひとつとして、 陸軍内部でどのような議論が行われたのかが、 克明に描かれている。 とりわけ、大きなポイントとして、 武藤章軍務局長と田中新一作戦部長との意見対立の存在を、 著者は指摘しているが、いずれも日米開戦回避では一致していたのだ。 明らかにズルズルと戦争へ引き込まれていっており、 誰しもが止めねばと思いつつも止められない・・・ 誰かが責任を持つ覚悟で止められればと思わずにはいられない。

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2016/01/09

自分の言動の細部から、表向きの(派手な、勇ましい)それとは異なる複雑なニュアンスを、以心伝心で読み取って欲しい。でも相手の言動はそのまま受け取るのが当たり前。すべての関係者がこういう風に動けば、破綻するのも当然という気がする。とはいえ、建前と本音を都合良く使い分けて乗り切ろう、や...

自分の言動の細部から、表向きの(派手な、勇ましい)それとは異なる複雑なニュアンスを、以心伝心で読み取って欲しい。でも相手の言動はそのまま受け取るのが当たり前。すべての関係者がこういう風に動けば、破綻するのも当然という気がする。とはいえ、建前と本音を都合良く使い分けて乗り切ろう、やり過ごそうとするのは誰にでも覚えがあるはずで、その意味でまったくひとごとではない。

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2015/11/24

 叙述の重複が多く、時間的な前後関係がわかりにくくて読みにくい。前2著に比べ、より個別の(本書では武藤章と田中新一の)戦略思想の解析に偏り、当該時期の政治構造やその中での陸軍の位置の変容が見えにくい。

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2015/11/23

現代日本に昭和陸軍性悪説というようなものが定着したのは、司馬遼太郎のような作家の影響なのだろうか。 昭和陸軍全史と銘打たれているが、三冊の新書を通して描かれるのは昭和陸軍の高級幕僚史である。石原莞爾と永田鉄山が理論的支柱となり立ち上げた一夕会が、やがて陸軍省と参謀本部を牛耳り、...

現代日本に昭和陸軍性悪説というようなものが定着したのは、司馬遼太郎のような作家の影響なのだろうか。 昭和陸軍全史と銘打たれているが、三冊の新書を通して描かれるのは昭和陸軍の高級幕僚史である。石原莞爾と永田鉄山が理論的支柱となり立ち上げた一夕会が、やがて陸軍省と参謀本部を牛耳り、さらなる権力闘争を経て武藤章と田中新一に引き継がれる。この第三巻で描かれるのは、太平洋戦争に至るまでの彼らの暗闘である。 戦略眼と行動力を兼ね備えた彼らは、確かに当時の日本で突出した影響力を放っていた。しかし、この巻で描かれる様は、どこか空しい。それはおそらく、日本が最後のターニングポイントをまわってしまい、対米戦が不可避になっていたからだろう。 1940年にドイツがフランスを屈服させ、西欧諸国の東南アジア植民地攻略というプランが一気に現実味を増す。昭和の初めに石原や永田が思い描いたのは、中国大陸の資源を囲い込んで世界大戦に備える姿だったが、東南アジアには石油があり、自立自衛の経済圏を本当に実現することができる。しかし最後まで立ちはだかるのはアメリカ。英米不可分論、可分論と高級幕僚たちは議論を闘わせるが、大東亜共栄圏という言葉の魅力に引き寄せられ、何とかなるのではないか、という思いが立ち込めてくる。 武藤は対米交渉に望みを捨てず、田中は独伊提携継続か英米に付くべきか自問する。彼らはただ単に好戦的に戦争への道を進んだのではない。しかし、1941年6月、ヒトラーが独ソ戦に踏み切ってからはもはや選択の余地はなくなったように見える。その後南部仏印進駐を機にアメリカが石油全面禁輸に踏み切ったのも、きっかけを探していたようにしか見えない。 何の準備もなく臨んだ日中戦争が泥沼化したのとは対照的に、太平洋戦争の緒戦では陸軍も極めて短期間のうちに、成功裏に東南アジアを攻略する。しかし、やがて武藤と田中は陸軍中央を追われる。最後に権力を握ったのは東条で、彼は昭和戦前最長の政権を維持するが、その政権が終わった時点では、陸軍に思考力は残っていなかった。この時代の歴史を振り返って残念に思うとしたら、昭和17年以降の幕僚達から大胆な発想力が失われ、ただ単に戦死者を積み重ねていったことかもしれない。

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2015/09/12

新書なのにやたらと分厚い(400ページ超)のと、読書をサボり気味になっていたのが重なり、読み終えるのに1ヵ月以上かかってしまいましたがどうにか読了。 読み応えありました。 本書は全3巻からなる『昭和陸軍全史』の最終巻であり、ヨーロッパにおいて第二次世界大戦が開始されてから太平洋...

新書なのにやたらと分厚い(400ページ超)のと、読書をサボり気味になっていたのが重なり、読み終えるのに1ヵ月以上かかってしまいましたがどうにか読了。 読み応えありました。 本書は全3巻からなる『昭和陸軍全史』の最終巻であり、ヨーロッパにおいて第二次世界大戦が開始されてから太平洋戦争に至るまでの陸軍内部の動きを、主に陸軍省軍務局長だった武藤章と、参謀本部作戦部長を務めた田中新一にスポットを当て、検討しています。 当時の陸軍を主導していたのはこの2人であり、田中は対米戦の開始を最も強硬に主張していました。 逆に武藤は国力の差から対米戦の回避を主張し、田中と激しく対立。 結局は紆余曲折を経て田中の主張通り、太平洋戦争開戦に至ります。 また、彼らは一応、従来の説とは異なり「何をもって戦争終結とするか」という構想も考えてはいました。 しかし、その前提となる条件が崩れ、武藤や田中も東條英機との対立で陸軍中央を追われ、後任の軍人たちは情勢の変化に対応した新たな戦争終結のための方策を見出すことができないまま、数々の悲劇を生み出すこととなりました。 そして、武藤は戦犯として訴追され絞首刑、田中は罪に問われることなく、寿命を全うしました。 武藤自身も南進そのものには反対していなかったため、一概に擁護はできませんが、ある種の不条理さを感じます。 この他、太平洋戦争は南方確保のためにイギリスを打ち倒す必要のあった日本と、安全保障上、イギリスの崩壊を防ぐ必要のあったアメリカとの戦いであり、すなわち「イギリスをめぐる戦争であった」という説も興味深く感じます。

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2015/08/29

「3」は太平洋戦争の開戦から終戦まで。 これを陸軍省の武藤軍務局長、参謀本部田中作戦部長2人の戦略構想を中心に検証する。 当然、誰もがアメリカと戦って勝てるとは考えていなかった。ならなぜ? どうしてもっと早くに講和できなかったのか? いろんな説がある。どれもが一面の正解なんだと思...

「3」は太平洋戦争の開戦から終戦まで。 これを陸軍省の武藤軍務局長、参謀本部田中作戦部長2人の戦略構想を中心に検証する。 当然、誰もがアメリカと戦って勝てるとは考えていなかった。ならなぜ? どうしてもっと早くに講和できなかったのか? いろんな説がある。どれもが一面の正解なんだと思う。 ただ国家としての意思を決定するシステムは常に検証されていい。それは現代でも変わらない。 帝国憲法下では、政府も軍も並列に配置されていて意見をまとめる存在がなかった。そこに陸軍が付けいる隙があった。では日本国憲法は大丈夫なんだろうか?

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2015/07/26

「昭和初期、満洲事変を契機に、陸軍は、それまで国際的な平和協調外交を進め国内的にも比較的安定していた政党政治を打倒した。その推進力は、陸軍中央の中堅幕僚グループ「一夕会」であり、彼らが、いわゆる昭和陸軍の中央を形成することとなる。  その昭和陸軍が、どのように日中戦争そして対米開...

「昭和初期、満洲事変を契機に、陸軍は、それまで国際的な平和協調外交を進め国内的にも比較的安定していた政党政治を打倒した。その推進力は、陸軍中央の中堅幕僚グループ「一夕会」であり、彼らが、いわゆる昭和陸軍の中央を形成することとなる。  その昭和陸軍が、どのように日中戦争そして対米開戦・太平洋戦争へと進んでいったのか。その間の陸軍をリードした、永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一らは、どのような政略構想をもっており、それが実際にどのような役割を果たしたのか。筆者の主要な関心はその点にある。」(410ページ)  長大な昭和陸軍史全3巻を読み終えて、筆者の問題関心である昭和陸軍中枢の「政略構想」については、よく理解できたと思う。一般に思われているように当時の陸軍が、何の構想も持たずに無謀な戦争に突入していったとの「常識」は覆される。とくに欧州大戦勃発から太平洋戦争突入までを中心に描かれる第3巻は、武藤、田中の政略構想の違いに力点が置かれ、その綿密な叙述がキーになっている。その意味で東條英機は独自の構想を持たない人物として脇に置かれているように思う(それが正しいかどうか私には判断しかねるが、川田氏の書きようではそのように読める)。  日米開戦以後の日本陸軍は、武藤が更迭され、田中が更迭され、そして最後には東條もいなくなり、「聖戦完遂」の名の下に多く内外の犠牲を生み出していったのである。  今一度、3巻全体を振り返って読み直すと新たな発見があるかもしれない。

Posted byブクログ

2015/07/20

全3巻におよぶ、精緻な調査と思考に貫かれた著作。 その最終巻です。 如何に考えたのか、如何に行動したのか。 その論理は何に基づいているのか。 盲目的な礼賛でもなく、拒絶的な断罪でもない。 「あの」論争の対象に目を向けるとき、考える土台を提供してくれる本だと思います。

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