ドクター・スリープ(下) の商品レビュー
あの『シャイニング』を初めて読んだ当時のことは、よく覚えている。 20代の半ば、読み終えた直後に出張があり、1人ビジネスホテルに宿泊することに。人気のない廊下ですでにドキドキ、部屋ではバスルームの扉を開けるのが本気で怖かった。自分でも笑っちゃうけれど、20年以上経った今でも、家族...
あの『シャイニング』を初めて読んだ当時のことは、よく覚えている。 20代の半ば、読み終えた直後に出張があり、1人ビジネスホテルに宿泊することに。人気のない廊下ですでにドキドキ、部屋ではバスルームの扉を開けるのが本気で怖かった。自分でも笑っちゃうけれど、20年以上経った今でも、家族旅行のときでさえホテルのバスタブを覗くのがちょっと怖い。ほとんどトラウマ状態だ。 で、その続編ということで、それはもうわくわくしつつも覚悟を決めて読みにかかった。 あのときの少年は、父親と同じ癇癪もちでアルコール依存症に。そこが軸になってじわじわ追い詰められる展開かと思いきや、超人の少女が悪い怪物をやっつける話だった。中年になった主人公は、かつてハローランが導いてくれたように、少女をサポートする役目だ。 確かにおもしろくて上下巻を一気に読んだのだけれど、そこにはあの『シャイニング』の続編だからという期待感が大きく作用していたからだろう。 閉鎖的な逃げ場のないホテル内で繰り広げられる密度の濃いゴシックホラーと比べ、時間も空間も登場人物も広がったかがやき対決の本作は、やはり大味に感じた。 あとがきで、キングがキューブリックの映画を気に入らなかったことを初めて知った。作者としては原作を変えられたことが許せなかったのだろうけれど、あれはあれで映画として十分おもしろかったと思う。
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前半にくらべ、後半はさらーっと進んでいった。物語が佳境に入り目まぐるしく展開する…ってのも、あると思うけれど、ホラー感は薄れてファンタジーの要素が強くなった感じ。ただ、キングのなかでも「リーシーの物語」が大好きな私は、こういった感覚はまた嬉しい驚き。 最後の章のおだやかな美しさ、...
前半にくらべ、後半はさらーっと進んでいった。物語が佳境に入り目まぐるしく展開する…ってのも、あると思うけれど、ホラー感は薄れてファンタジーの要素が強くなった感じ。ただ、キングのなかでも「リーシーの物語」が大好きな私は、こういった感覚はまた嬉しい驚き。 最後の章のおだやかな美しさ、「血が血を呼んでいるだけだ」のフレーズ。心にズシンときた。
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なんだか悲壮感すら感じさせる「真結族」との対決が迫る。 とはいっても昔のキングよりはねちっこい描写も少なく、軽快に物語は進んでいきます。そこはちょっと物足りないような・・・ 最強の「かがやき」を身に着けているアブラは本当に力の使い方を間違えないのでしょうか?この後「キャリー」に...
なんだか悲壮感すら感じさせる「真結族」との対決が迫る。 とはいっても昔のキングよりはねちっこい描写も少なく、軽快に物語は進んでいきます。そこはちょっと物足りないような・・・ 最強の「かがやき」を身に着けているアブラは本当に力の使い方を間違えないのでしょうか?この後「キャリー」につながるような気がしてなりません。
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スティーヴン・キングの名作「シャイニング」から36年。 「シャイニング(輝き)」とは、ここでないどこか、ここにいない誰かと通じ、念でそれらを動かすことのできる特別な能力。 かつて、真冬のホテル「オーバールック」の惨劇を生き延びた少年ダニー・トランスは、父親ジャック・トランスと...
スティーヴン・キングの名作「シャイニング」から36年。 「シャイニング(輝き)」とは、ここでないどこか、ここにいない誰かと通じ、念でそれらを動かすことのできる特別な能力。 かつて、真冬のホテル「オーバールック」の惨劇を生き延びた少年ダニー・トランスは、父親ジャック・トランスと同じアルコール依存と癇癪に悩む中年男性ダンになっていた。 だがダンの「輝き」は生き続けており、ホスピスで死に行く人々を安らかに送る「ドクタースリープ」と呼ばれていた。。。 キングは「シャイニング」を書いた者と本作を書いた者は別人、と言うが、確かに続編でありながら趣がかなり異なる。 「シャイニング」は亡霊や怨霊が跋扈するゴシックな香りのするホラーであったが、本作は、リアルに存在する魔物、人外種族「真結族(True Knot)」のローズ、そして12歳の少女アブラというすばぬけた超能力者が登場し、そこにダンを加えた主要人物3人の戦いを描くジェットコースターサスペンス(←訳者による)になっている。 従って「シャイニング」の重厚な恐怖を味わいたい向きには少々物足りない。だがこれはジャック・トランスではなく、ダン・トランスの物語。ダンはダンであって、36年前のジャックではない。さらにアブラという存在を得て、危うい「輝き」の系譜の継続に期待を持たせる。 キューブリックの映画「シャイニング」は、観る方としては十分に恐ろしく楽しめるものであったが、ジャック・ニコルソンの演出や「輝き」の取り上げ方の薄さでキングが大いに不満を持っていたことは有名だ。 結局、キング自身が脚本を書いてテレビドラマ化され、ごく普通の父親、夫である男性が徐々に狂って行く様が、実に切なく描かれていた。 本作も当然、映像化が検討されていると思うが、ダン、ローズ、アブラの戦いは多くが「頭の中」で行われる。なかなか複雑だ。どんな映像で表現されるのか。なおさら観たくなる。
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スティーブン・キングの名作「シャイニング」の続編。 前作において、オーバールック・ホテルのおぞましい悪霊に取り憑かれた父親から逃れた母と少年。母は既に亡くなり、少年は成長したが、父親と同じアルコール依存症に陥り、荒んだ流浪の生活を送っていた。 その暮らしを改めるため、彼はたどり着...
スティーブン・キングの名作「シャイニング」の続編。 前作において、オーバールック・ホテルのおぞましい悪霊に取り憑かれた父親から逃れた母と少年。母は既に亡くなり、少年は成長したが、父親と同じアルコール依存症に陥り、荒んだ流浪の生活を送っていた。 その暮らしを改めるため、彼はたどり着いた町でホスピスとして働き始め、その「かがやき(シャインニング)」の能力で死期を迎えた人に安らぎを与え始めた。 そんな時、唐突に彼よりもずっと強い「かがやき」を持つ人物からのメッセージが届き始める。そして、それは彼に助けを求めるメッセージに変わった。 再び、あのおぞましいものが活動を始めているようだった… シャインニングは小説と映画は全く別物(キングはキューブリックの作った映画を全否定している)ですが、僕はどちらも好きです。 そして、キングのファンでもあるので、シャインニングの続編は相変わらずのキング節炸裂といった感じで、大変楽しめました。
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いよいよ恐るべき「真結族」との対決が佳境に入ります。いまいち強いのか弱いのかよくわからないけれど(苦笑)、恐るべき存在であるのは確か。張り巡らされる罠の攻防にはらはらどきどきさせられっぱなし。 ダンとアブラの意外な繋がり、ダンの用いる思いがけない手段、そして舞台はあの因縁のオーバ...
いよいよ恐るべき「真結族」との対決が佳境に入ります。いまいち強いのか弱いのかよくわからないけれど(苦笑)、恐るべき存在であるのは確か。張り巡らされる罠の攻防にはらはらどきどきさせられっぱなし。 ダンとアブラの意外な繋がり、ダンの用いる思いがけない手段、そして舞台はあの因縁のオーバールックへ。とんでもない盛り上がりを見せる下巻、一気読み間違いなしです。 ジェットコースター的展開でぐいぐい引っ張られて、時にはくすりと笑わされ、時にはほろりとさせられたり。大満足の一作。そして厄介ではあるけれど、ダンとアブラの持つあの能力はやはり「かがやき」と称するのが一番ふさわしいように思えました。
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お客さんの最後の1人まで満足させてやりますよ!というキングの心意気が実に気持ちのいいエンタメ。 出てくるキャラやエピソードに何度声を上げたことか! ぜひ『シャイニング』を読んでから手に取ってほしい。
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持て余す超能力、姿を消す子どもたち、トウモロコシ畑の惨劇、現代を生きる吸血鬼、絶対に帰りたくない場所への帰還、夢の中でのリアルな戦い、などなどキングお得意のお膳立てが揃ってます。 最近のキングは長過ぎ、ノリ過ぎ、とお嘆きのスリラー好きの諸兄におすすめです。
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最後まで楽しく読むことが出来ました。終盤、「シャイニング」読んでたら絶対に嬉しくなる演出が。怖いだけじゃなくて胸が一杯になる小説でした
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
死は誕生に一歩もひけをとらない奇跡だ。 36年ぶりに刊行された、名作シャイニングの続編。面白いに決まってるー! 学生時代にガクブルしながら読んだ前作。Itのピエロ張りにトラウマになったのは、実は生垣動物だったりする・・・∩(´;ヮ;`)∩コワイコワイ けなげでかわいかったダニー君はアル中の放浪者になっていて、ハロルドもママも故人。シャイニングは、彼を幸福にも不幸にもしなかった。だけど、ダニーの人生の分岐点で、それは確かにきっかけになった。 スピード感のあるサスペンス、向こう見ずなアビーのキュートさ、わかり易く悪役の真結族、という使い古したネタをそろえつつ、ダニーとその過去を絶妙にからめて飽きさせないキングの筆致、さすがです。 そして個人的ハイライトは、最後にダニーがルーフ・オブ・ザ・ワールドで見る光景。シャイニングがただのパニックホラーでないのは、幼いダニーが父親を心から愛している部分だと思う。本能で息子を愛する母親より、ダメで弱い父親を慕うダニーの無垢さが、恐怖も悲しみも超えて胸に迫るのだ。この記憶が、キャンプ場でのラストシーンをきらめかせる。 あと、ダニーが金庫から出した亡霊の使い方が秀逸でした。コンチェッタも凄いけど、まさかホレスをこう使うとは・・・!そしてダニーとアビーのつながりにびっくり。これ、若いキングなら書かなかったよねきっと。 てことで、生垣動物にビビりつつ、シャイニング再読しようかなー・・・
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